・インタビューしちゃいました!! 2017-07-18 19:31

ミュージカル『ビューティフル』水樹奈々インタビュー

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キャロルのソウルとともに個性も生かす

それを今は模索しています

 

「A NATURAL WOMAN」「YOU’VE GOT A FRIEND」など数々の大ヒットを飛ばし、世界中で絶大な人気を誇るアメリカのシンガー・ソングライター、キャロル・キング。その知られざる半生を描くミュージカル『ビューティフル』が7月、帝国劇場にて日本で初上演となる。ブロードウェイだけでなく、全米ツアーやロンドン公演を成功させ大好評となった本作の日本版にWキャストで主演を務めるのは、声優・アーティストとして第一線で活躍し続けている水樹奈々。ミュージカル女優初挑戦となる彼女に話を聞いた。

 

――出演が決まったとき、率直にどのように感じられましたか?

 

水樹 びっくりしました! 本当に私でいいんでしょうか!?と思ってしまいました。『ビューティフル』は、ブロードウェイのプレビュー公演を観ていて、その頃はまだ日本に情報がほとんどなかったんです。お正月に母とたまたまニューヨークに旅行に行っていたとき、声優の先輩もニューヨークに来ていて、「すごくいいミュージカルがあるから、絶対に観たほうがいいわよ!」と教えてくださったんです。それで当日券を買って観に行きました。なので、私としては勝手に運命を感じている作品です(笑)。

 

――観劇してみて、キャロル・キングの魅力とはどのようなものだと思いましたか?

 

水樹 あきらめない、そのまっすぐな力と精神力。どんなときでも前向きな、明るい人柄が一番の魅力だと思います。そういう心が根底にあるからこそ、あの素晴らしい名曲が生まれたんだなと、改めて感じました。どんなに辛いことがあったとしても、前を向いて生きていこうという勇気が湧いてくる曲ばかりなんですよね。それまでは“パワフルなスター”というイメージでキャロルのことを見ていました。でも、ミュージカルを通して半生を知ることで、笑顔の裏にはこんな出来事が隠されていたんだと分かると、それぞれの曲の深みが増して、もっと好きになりました。

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――今回は主演として、そんなキャロルの楽曲をミュージカルの中で歌うことになります。ご自身のステージで歌うのとはまた違いますか?

 

水樹 やはり“キャロルとして歌う”ところが、普段のライブとは大きく違うところですね。セリフから自然に歌に入っていくシーンがたくさんありますし、特にこのミュージカルでは誰もが知っているキャロルの代表的な曲ばかりなので…。みなさん、オリジナルのイメージが強くあると思うんです。今回日本語の訳詞になりますが、湯川れい子先生の訳詞は本当に素晴らしくて、原曲のイメージそのままに聴けるように言葉をメロディに落とし込んでくださっているんです。心地良く皆さんに聞いていただけるよう、それをどう歌声に乗せるのか。そこが勝負だと思っています。歌唱指導の先生からは、キャロル・キングのソウルを持って歌いつつ、そこに私の個性も織り交ぜて表現してほしいとアドバイスいただいたので、今はそれを必死に模索しています。モノマネではなく、キャロルの魅力をしっかり伝えられるような歌い方をしたいです。

 

――演技の面ではどのように役作りしていらっしゃいますか?

 

水樹 彼女のすごいところは、どんなときでも芯が通っていて、そこに向かって一直線。本当に真っすぐな人。振付の先生はキャロルご本人に会ったことがあって、それはもう細胞からエネルギーがあふれている、生命力の塊のような方だったそうなんです。でもとても小柄な方だそうで、私と同じくらいの身長しかないとか。なのに、すっごくパワフル! だから、私にもそんな風に演じてほしいと。セリフや立ち振る舞いからそのエネルギッシュさを感じていただけるよう頑張ります!

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――そんなパワフルなキャロルを演じるために、何か心がけているところはありますか?

 

水樹 実は、自分自身と似ているな、と思う部分もたくさんあって。劇中に“独りぼっちで部屋に居るときでもそばに友達が居てくれるような、自分を理解してくれるような存在。それが音楽なんだ”といった意味のセリフがあって。絆を結べる、みんなに寄り添える歌を届けたいんだという気持ちは、自分と共通していると思ったんです。そこにキャロルを紐解いていくヒントがあるような気がして。その想いは大切にしたいですね。自伝を読んだり、ドキュメンタリー番組やコンサートの映像を見たりして、少しずつキャロルを研究しています。

 

――キャロルを研究するために、先日、1泊3日の弾丸ニューヨークツアーを敢行されたそうですね。キャロルがかつて住んでいた家にも行かれたとか。

 

水樹 そうなんです! 自伝を読んでいたら住所が書いてあって、もしかしたらもうなくなっているかも知れないけど行ってみようと思って。それで空港からまっすぐ向かったら、今もあったんです。時代が変わっても、その周辺に流れる空気はきっと変わらないものがあると思って、お家の側を歩いたら今住んでいる方がたまたま家の中から出てこられて。それを見たタクシーの運転手さんが「せっかくだから、キャロルのこと聞きなよ!」なんて言うものだから、ダメ元で突撃インタビューを試みたんです。そしたら、すごく親切な方で、お宅の中まで見せてくださったんです! もちろんリノベーションはされていて、今はシェアハウスになっているんですが、地下にスタジオがあることや、庭にもちょっとしたステージがあることを教えていただき、それを実際に見ることができて、すごく運が良かったんです。

 

――それは本当に貴重な経験ですね! そのほかにもキャロルにゆかりのある場所を訪ねたそうですが…。

 

水樹 舞台のオープニングになっているカーネギーホールに行ったり、所属していた音楽事務所のアルドンミュージックがあったビルに行ったりしました。そのビルは入っても大丈夫なところなんですけど、ほとんど関係者しか入らないので、さも関係者のような顔をしてスッと入っていきました(笑)。自伝には“キュービクル”と書いてあったんですが、小さな部屋がたくさんあって、本やセリフにある通りでした!キャロルが住んでいたブルックリンから1時間ほどかけて移動したんですが、当時この距離を毎日通うのは大変だっただろうなと思いました。きっと子供が心配だったはずとか移動中も彼女の気持ちを考えてしまいましたね。行ったからこそ感じることがたくさんありました。

 

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――実際に暮らしていた街を見ることで、もっとキャロルに寄り添えた感じですね。そしてブロードウェイで「ビューティフル」を観劇されて、バックステージにも行かれたそうですね。

 

水樹 私は、観劇できるだけでも嬉しかったのに、幸運にもキャストのみなさんにお会いすることができて。本来なら私のほうからご挨拶に行くべきなんですが、案内された部屋で待っていたら、キャストの方々が帰り際に順番に会いに来てくださって…。もう本当に嬉しくて。ニック役の方は「僕も初ミュージカルなんだ。だから、気持ちがすごくよくわかるよ。でも、楽しんで!」と声をかけてくださって、バリー・マン役の方も「僕もピアノやギターを弾きながらなんて歌えなかったんだけど、稽古でできるようになるから!」と励ましてくださって。本当にみなさん素晴らしい方々でした。キャロルの母・ジーニー役の方は、ワンちゃんも連れてきてくださいました(笑)。

 

――みなさんとってもフランクなんですね。でもその雰囲気は、先日の製作発表会見を見ていると今回の日本版キャストの方々の雰囲気にも近い気がします。日本での開幕が待ち遠しいですね。

 

水樹 稽古はまだ始まったばかりですけど、すごくいい雰囲気で。みんな個性的な方ばかりだから、こう…宇宙空間にいるみたいで(笑)。だから毎回、刺激的ですね。キャロルの曲をリアルタイムで聴いてきた大人世代の方はもちろん、若い方にも“この曲もキャロル・キングだったんだ!”と誰もが耳にしたことのある名曲揃いのミュージカルです。ミュージカルが初めて、という方にも楽しんでいただける作品になっていますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思います!

 

取材・文/宮崎新之

 

【プロフィール】

水樹奈々

■ミズキ ナナ 1997年に声優としてデビューし、多数の人気アニメ作品に出演。2000年にシングル「想い」でアーティストとしてもデビュー。声優として史上初となるシングル、アルバムともオリコンチャート1位を獲得、NHK紅白歌合戦への出場を果たしている。デビュー20周年のメモリアルイヤーに『ビューティフル』でミュージカル初出演&初主演。

 

【公演情報】

ミュージカル『ビューティフル』

脚本:ダグラス・マクグラス

音楽・詞:ジェリー・ゴフィン & キャロル・キング バリー・マン & シンシア・ワイル

演出:マーク・ブルーニ

翻訳:目黒条 訳詞:湯川れい子

出演:水樹奈々/平原綾香(Wキャスト)

中川晃教、伊礼彼方、ソニン、武田真治、剣幸 ほか

 

日程・会場

2017/7/26(水)~8/26(土) 帝国劇場(東京都)