・インタビューしちゃいました!! 2017-04-28 10:54

ミュージカル『ビューティフル』 平原綾香 インタビュー

DSC06004

弱さも歌にしていいと気づいてから
音楽の捉え方が変わりました

“(You Make Me Feel Like) A Natural Woman”など世界的ヒット曲を数多く世に送り出してきたシンガー・ソングライター、キャロル・キングの半生を描いたミュージカル『ビューティフル』。ブロードウェイだけでなく、全米ツアーや英国ロンドン公演など、各地で大好評を得た作品がついに日本でも上演される。キャロル役に挑むのは、4/26にアルバム「LOVE 2」をリリースし、シンガーとして活躍を続けている平原綾香。今回で2度目となるミュージカルへの挑戦を前に、その胸中を語ってもらった。 

――今回、ミュージカルへの挑戦は2回目となります。約3年ぶりに女優としてステージに立つわけですが、もともとミュージカルはお好きなんですか?
実はデビューのきっかけもミュージカルだったので、特別な想いはあります。あと、三谷幸喜さんの『オケピ!』のオケピットで、父(サックスプレーヤーの平原まこと)がサックスを吹いていたのですが、その『オケピ!』を観て本当に感激して、歌やセリフを覚えてしまうほど大好きになったんです。なので、ミュージカルは昔から大好きです。

――普段はシンガーとしてステージに立っているわけですが、前回、『ラブ・ネバー・ダイ』で実際にミュージカルを経験して何か印象は変りましたか?
全然違いましたね。「♪愛は死なず」のナンバーでは客席を向いて歌うので歌いやすかったんですけど、他のナンバーを歌うときは客席を見ないで役に向かって、でも客席も意識しなくてはいけなくて。なかなか慣れなかったですが、すごく修行になりました。あと、細かい演技をしても、客席からは見えないんですよね。だから演技が大きな動きになるんだなとわかりました。かといって、大きく動けば良いというものでもない。ただ視線を変えるだけでも、意思を持って顔を動かさないと見過ごされてしまう。そういった部分は、『ラブ・ネバー・ダイ』で共演した市村正親さんや鹿賀丈史さん、ダブルキャストだった濱田めぐみさんからたくさん教わりました。 

――意思を持って動く、というのはなかなか難しいことですよね。
鳳蘭さんと客席から市村さんの演技を観る機会があったとき、鳳さんが「綾香ちゃん、観てごらんなさい。(市村さんが)あっちを見るときにちゃんと意思があるでしょう? 何もしないけど、存在感があるでしょう? あれが演技なのよ」と教えてくださったんです。だからと言って私ができるようになった訳ではないのですが…。でも貴重な経験をたくさんさせてもらったので、それを今回に活かしたいですね。

 

DSC05864

――今回の役どころは、数々のヒット曲を世に送り出してきたキャロル・キングですが、キャロルにはどのような印象をお持ちですか?
歌手キャロル・キングとしてしか知らなかったので、こんなに苦労したり傷ついたりしていることをはじめて知りました。彼女の笑顔の裏にはこういうつらい思いがあったのだと、最初は衝撃で。でも、そういう中でも人柄が本当に魅力的。歌声にもうまく聴かせようなんていうエゴがない。それが、一番自分の歌を届けられる近道なんだなと思います。歌声も、本当に太い声なんですよ。そういう部分まで、出していけたらいいなと考えています。ちゃんとコピーしたい。彼女への憧れの気持ちもありますから。

――キャロル・キングに共感したり、似ているなと思ったことはありますか?
まずは、歌手であること。本番前にどういう気持ちになるのか、声の調子が悪かったときにどんな気持ちになるのかは、シンガーが一番わかっていることなので、そこは表現できるかなと思います。あとは、結婚とかを考えたときにこうなるのかな、と参考に…参考にしちゃいけないか(笑)。でもなんか、彼女の性格がちょっと似ているところがあって。セリフの中に「私、真面目だから」というのがあるのですが、私も今まで真面目に…変に真面目に生きてきたので。「落書きして」と言われたら、1時間かけて一生懸命落書きしちゃうみたいな…そういう遊びが無い自分と重なる気がしています。なんでこんなに頑張ってしまうのだろう、頑張らなくても良いのに、なんて思った時期もあったんですけど。でも「しょうがないよね、これが私だし」と思えるようになって、劇中にもそういうセリフがあったので、彼女にもそういう時期があったんだなって思って。ちょっと嬉しくなりました。

――キャロル・キングのたくさんの素晴らしい楽曲が『ビューティフル』にはちりばめられています。楽曲の良さについてはどんな風に考えていらっしゃいますか?
“You’ve Got A Friend”なんかはすごく有名ですし、昔、歌詞の内容を母に教えてもらったりもしていたんです。大人になって、”Will You Love Me Tomorrow”などを聞いて、さらにキャロル・キングの良さがわかってくるようになりました。私は今、32歳ですけど、32歳でキャロルを演じられてよかったなと思います。20代の私だったら、そこまで理解できていない。音楽に対する捉え方も、昔の自分とは違う気がしますから。 

――音楽に対する捉え方は、今と昔でどのように変りましたか?
昔は、歌うときには心を正して、真面目に歌わなきゃいけない、みたいなところがどこかありました。でも、いろんな人や歌と出会って、自分の弱さも歌にしていいんだと気づいてから、捉えかた方が変わったように思います。

 

DSC05928

――平原さんはシンガーとしてだけでなく、サックス専攻で音楽大学をご卒業されて、現在も「平原さんちのコンサート」などでも演奏されています。サックスを続けてらっしゃることは、シンガーとしての自分にも活かされていると思いますか?
楽器をやっていなかったら、歌を歌えていなかったと思いますね。それくらい肺活量も、おなかの筋肉も使うので。学生の頃、サックスで吹けないフレーズがあって父に相談したら、「まず楽器を置いて歌だけで歌ってみてごらん。歌えるようになったら吹けるようになるよ」と言われて。実際にフレーズを歌えるようになったら、吹けるようになったんです。どんな楽器でもそうだと思いますが、歌と繋がっているなと感じますね。 

――お父様も演奏家ですし、小さい頃から音楽に触れる生活だったんですか?
小さい頃…私が5歳くらいの頃に、父が安全地帯のサポートメンバーをやっていて、玉置浩二さんの楽屋に行って抱っこしてもらったんです。玉置さんが大好きだったので、嬉しくって、恥ずかしくって(笑)。私はサックスを手にしたのも13歳からで、いわゆる英才教育みたいに小さい頃からやっていたわけではありませんでしたが、自然と音楽が好きになったのはそういう環境だったからかな、とは思います。小さい頃から楽器をやってらっしゃる方は、怒られた記憶があるなどよく聞きますが、私はそんなことは無かったですね。

――記者会見では、皆さん和気藹々としていてとってもいい雰囲気でしたが、2日前に顔合わせをしたばかりと聞いて驚きました。会見の中で「私、このままでいいんだなと思いました」とおっしゃっていましたが、素の自分のまま臨めそうで、お稽古も楽しみですね。 
皆さんサービス精神が旺盛ですよね。やってくださいと言われたことに対して、もっとこっちのほうが良いんじゃない?っていうのを出すときに、同じ気持ちを持てていないとやりすぎ、って言われちゃうことがあるじゃないですか。そういうのが一切、無かったんですよね。中学生の頃に、歌の時間があって、歌だから大きな声で歌っていたら「平原さんの声って大きいよね」って言われたことがあって。一生懸命がかっこ悪いという状況がすごく嫌でした。でも音楽高校に入ったときは、みんな大声で歌っていて「私、このままで良いんだよね」って思えたんです。今回のメンバーに出会って、そのときのことを思い出しました。それぞれが自然体で演じている人たちで、目が離せない感じです。本当に幸せな空間に居させてもらえているので、今回のミュージカルを通して皆さんと友達になりたいと心から思っています。 

――最後に、今回のキャロル・キング役をどのように演じきりたいですか?
訳詞についてはまだ「♪ビューティフル」しか拝見していないんですが、湯川れい子先生の詞が素晴らしくてびっくりしました。スッと入ってきたし、歌詞の意味も伝わってきたし、歌いやすいので他の曲も楽しみです。 そして、キャロル・キングさんは現在、第一線で活躍されている方ですし、英語圏じゃない人がキャロルを演じる難しさもあると感じています。私の精一杯の健闘と、チーム力を、ぜひ皆さんに観ていただきたいです。 

 

取材・文/宮崎新之

 

【プロフィール】
■ヒラハラ アヤカ。2003年に「Jupiter」で歌手デビューし、ミリオンセールスを記録する大ヒットに。2014年に「ラブ・ネバー・ダイ」のヒロイン、クリスティーヌ役でミュージカルに初挑戦。今年4/26には10枚目となるアルバム「LOVE 2」をリリースした。
※5月27日より『平原綾香 CONCERT TOUR 2017〜LOVE 2〜』全20公演スタート。

【公演情報】
ミュージカル『ビューティフル』 TheCaroleKing Musical

脚本:ダグラス・マクグラス
音楽・詞:ジェリー・ゴフィン&キャロル・キング バリー・マン&シンシア・ワイル
演出:マーク・ブルーニ

出演:水樹奈々/平原綾香(Wキャスト) 中川晃教、伊礼彼方、ソニン、武田真治、剣幸 ほか

日程・会場:
2017/7/26(水)~8/26(土) 帝国劇場(東京都)