・インタビューしちゃいました!! 2016-05-28 12:00

「母と惑星について、および自転する女たちの記録」 鈴木 杏&田畑智子 対談

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 蓬莱竜太の書き下ろしを栗山民也が演出する「母と惑星について、および自転する女たちの記録」は、実力派女優たちが集う4人芝居。現在のパルコ劇場(建て替えのため8月で一時休館)での、最後の新作公演となる。奔放に生きた母(斉藤由貴)の急死からひと月後、遺された三姉妹(志田未来、鈴木杏、田畑智子)は遺骨を持ったままあてもなく、異国への旅に出る……。初共演という長女役・田畑智子と次女役・鈴木杏の間には早くも、姉妹の空気が漂い始めていた。

 

――お2人とも蓬莱さんの作品は初めてだそうですが、戯曲の印象は?

田畑 姉妹それぞれに違う個性があるので、これが上手く会話の中で繰り広げられて、いいテンポで出せればいいなと思いながら読んでいました。姉妹で漫才をやっているような雰囲気に見えれば面白いんじゃないかと。

鈴木 始まりからトップギアだなって(笑)。それぞれのキャラクターがやはり変わっていて、普通にいそうなんだけどたぶんいないだろうなっていう、生きていくのが大変そうな人たちという印象が強かったです。この人たちはいったいどうなってしまうんだろうと、期待とともに不安がこみ上げるような(笑)。

 

――男性作家が書く女性芝居という点について、何か感じるところはありましたか?

田畑 急に泣き出したり怒り出したりっていう、波とか危うさがあるんですよね。蓬莱さんは女性のそういうところをちゃんとわかって書いていらっしゃるのかなって思いました。

鈴木 私は蓬莱さんの他の作品でも、特に女性の描き方がすごく好きなんです。逆に男性だからこそ、女っていう生物を面白く見てもらえてるのかなって(笑)。なんだか、優しい気がしました。

 

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――演出の栗山さんとも意外にも初めてだそうですね。

田畑 ついていけるかなっていうのがほんとに不安。全く未知のところに踏み込む感覚です。

鈴木 私は朗読劇(「宮沢賢治が伝えること」/2012年)で一度ご一緒したことがあります。作品の背景の説明をすごく丁寧にしてくださって、それがずっと聞いていたいぐらい面白かったんです。栗山さんの作品から感じる優しさや繊細さはご自身の人柄でいらっしゃるんだろうなっていうのを、そのとき強く感じて。だから演劇でご一緒するのが憧れでした。それが実現して楽しみであると同時に、私もついていけるかなっていう不安はあります。

 

――栗山さんは稽古のとき、ご自分で演じて示すことがあるそうで。それが女性キャラクターの場合だととても面白いと、蓬莱さんがおっしゃっていました(笑)。

田畑鈴木 わー!

鈴木 やっていただけるの、うれしいです! 表情とか動きとか、どんな風に居たらいいのかがより掴みやすかもしれないです。それをそのままできるかはさておき、ですけど(笑)。

田畑 そうそう、「あ、ウケてる」とか思うと、それ以上はちょっと出せないって思ったり(笑)。でもこう考えていらっしゃるんだっていうのが伝わってくるので、安心はしますよね。

鈴木 稽古が俄然楽しみになりました(笑)。

 

――ご自分が演じる役については?

田畑 私が演じる長女は、一見しっかりしてそうで一番打たれ弱いというか。で、真ん中の次女が結構自由な感じで、口数は少ないけど三女が一番客観的に物事を見られるタイプ。だから引っ張っているのは実は三女じゃないかなって印象でした。長女はお姉ちゃんとしてしっかりしなきゃと思っている部分があるけど追いついていないから、「あ、崩れちゃった?」みたいなこともあって。そういうお姉ちゃんの危うさが、すごく見えるなと思いました。

鈴木 私がやる次女は“我関せず”って感じの人なのかな(笑)。守ろうとしてくれているお姉ちゃんと、実は全部抱えている妹に挟まれて、「まあ別にやることもないし。2人がやってくれるから」っていう(笑)。だからなにかを振られたときに、すごくいい塩梅で交通整理をする人なのかも、という印象です。

田畑 杏ちゃんは年齢は下だけどしっかり者のイメージだから、私よりお姉さんに見える。私は全然しっかりしてないです(笑)。

 

――3人の娘たちを徹底的に放任しつつ「私には重石が3つ必要なの」と言い放つ母(斉藤)は、なかなか強烈なキャラクターです。戯曲を読んでどんな印象を受けましたか?

田畑 お母さんっていうより“女”っていう感じがしました。

鈴木 お母さんに対する見え方が3人ともバラバラのような。それこそ惑星のように、こっちから見るとこう見えるけどそっちから見ると……っていう、とても多面的な存在のような気がします。

 

――ちなみにご自身は、どんな母娘関係ですか?

田畑 私は自分の母が、ちっちゃい頃から理想なんです。芯が強くて周りの空気が読めて男性を立てるっていう、デキたお母さんだなと娘ながらに思っていて(笑)。だから母の言うことは私の中で絶対だったんですけど、最近はそうじゃない自分がいるのも感じますね。「お母さんの言うことは間違いないと思う。でも私はこう思うんです」っていうのが増えてきたから会話もすごく楽しいし、よりいい距離感で接することができるようになったかなと思っています。

鈴木 私の母親は結構波乱な人生を送っていて、自分で人生を切り開いてきた人なんです。彼女の感情全部を家族が共有するみたいなところがあったから、もっと穏やかなお母さんでいてほしいと思うような時期もあったけど(笑)、大人になるほど母親との関係が楽しめるようになってきたかなと思います。今の自分の年齢のときに母親はどうしてたんだろう?という風に、自分が迷ったときにはやっぱり生き方の参考にしてしまう人だなとも思いますし。

 

 

――そしてこの濃密な母娘、姉妹関係が繰り広げられる女優のみの現場は、どういう雰囲気なのだろうと興味津々なのですが……。

鈴木 火花バチバチみたいな?(笑) でも女優さんってサバサバしている方が多いですし、作品に向かっていこうとか演出家についていこうって各々が必死になっていたら、そういうバチバチとか靴隠すいじめみたいなことは……例えが古典的で全然面白くなくてゴメンナサイ(笑)、そういう余裕なんてないと思うんです。4人しか出てないからそれぞれ台詞がたくさんあるだろうし、蓬莱さんのホンがとても面白いので、みんなでゲラゲラ笑いながら進んでいくのかなって思ってはいるんですけど。

田畑 私はご一緒するのが、皆さん初めてなんです。パワーが圧倒的にあって、熱量がすごいと思っていた方たちばかりなので……。

鈴木 ご自分のこと棚に上げないでください(笑)。私も田畑さんのことはすごく存在感があって、その人物としてそこに生きていらっしゃる方という風にいつも感じていましたよ!

田畑 同じ。杏ちゃんはすごく存在感があって、その場の空気を全部かっさらっていく人だなぁって。

鈴木 私もです。そのままお返しします(笑)。

 

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――お2人には「奇跡の人」のサリバン先生を演じているという共通点があるんですよね。

鈴木 そうなんです!

田畑 だから特に身近に感じるのかもしれないですね。でも杏ちゃんの場合はヘレン(・ケラー)役と両方やっていたから、私の中でそのイメージが強いです。なんというパワーの持ち主だ、と。

 

――お2人の初共演が本当に楽しみです。

田畑 自分に何ができるかわかんないですけど、何か吸収したいって思います。杏ちゃんのパワーをもらって、自分のパワーにするみたいな(笑)。それをどんどん積み重ねていくといい一体感となって、何かすごくいいものが生まれるんじゃないかって思います。

鈴木 そしてお互い志田さんからは、若さとフレッシュさを吸い取りながら(笑)。

 

取材・文/武田吏都

 

【公演情報】

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「母と惑星について、および自転する女たちの記録」

日程:2017/7/7[木]~31[日]
会場:東京・PARCO劇場

★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!