・インタビューしちゃいました!! 2015-10-15 00:00

ナイロン100℃ 43rd SESSION『消失』 ケラリーノ・サンドロヴィッチ インタビュー

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伝説的なシリアス・コメディが
オリジナルキャストで再演!

 

 ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)が率いるナイロン100℃。いまやテレビや映画などでもおなじみの人気俳優を多数抱える劇団としても知られているが、彼らが2004~05年に上演した「消失」は、その精鋭中の精鋭たちプラス客演の八嶋智人という布陣で挑んだ伝説の作品だ。登場人物は“善人”のみ。しかしその善人たちの思いはボタンを掛け違えるように複雑に絡み合い、やがて悲劇を生み出していく――。劇団最高傑作として挙げるファンも多いこの作品が、このたびオリジナルキャストで再演される。

 10年経った今、この作品を再演することについて「以前にTwitterで再演してほしい作品を募ったら、『消失』をかなり多くの方が希望されていて。『こんな暗い芝居をみんな観たいんだ?』って驚いた記憶がありますね」と冗談半分に語るKERA。しかし近未来の地球を舞台としたこの作品での深刻な環境汚染や急激な物価の変動といった閉塞した環境は、2015年の日本の姿ともどこか重なるリアルさがある。

KERA「僕の作品はわりとへヴィな背景を持ったものが多くて。『2番目、或いは3番目』っていう作品は“何か”が起きて廃墟になった街にボランティアの人たちがやって来るっていう話だったんですけど、上演の半年後くらいに東日本大震災が起きたんですよ。当時は絵空事のように思えたことに、現実の世界が近づいてきていて……それがより重く感じるんじゃないかとは思うんです。でもテレビと違って、舞台っていうのはたまたま観るものじゃなくてお客さんが観たくて来てくださるものだから、楽しくってゲラゲラ笑えて……というようなものがあってよい一方で、観たあとに自分たちの生活と照らし合わせて何かを考えるというような作品があってもいいんじゃないかと。それをシリアス一辺倒ではなく、あくまでもコメディ仕立てにした悲劇として見せる。今はそういう作品が少なくなってきてるから、今これを再演するのは意義があることだと思います」

 

 「初演とまったく同じものを作ろうとは思わない」と語るKERA。10年の時を経た今、果たしてこの作品はどのような変化を見せるのだろうか?

KERA「役者も10歳年とってますからね。とても純粋な人たちばかりの話なので、若い人が演じるよりも年を重ねた人が演じるほうが、より切実な、取り返しのつかない感じが増すんじゃないかと。あと僕は再演のときにはできるだけ同じキャストを集めようとするんですけれども、それは初演を復元しようとしているわけではなくて。“初演とは何か別なアプローチを”と考えると、同じキャストだからこそその違いが際立ってくるんですよ。それが再演の面白さですよね」

 

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 この初演との感触の違いは「役者たちが何をやるか次第な部分も大きい」という。今回も劇団内外の人気者たちが集うが、初演時の稽古場や上演期間中のことを少し振り返ってもらった。

KERA「うちの劇団員は本当にマイペースで、初演のころは、ちょうど三宅が(劇団)新感線の作品に出はじめた時期だったんで、僕の前でやたらリラックスしてる三宅に『お前、いのうえひでのりさんの前でこういう態度とれるの?』って怒った覚えがありますね(笑)。あと大倉演じるチャズの主観で語るナレーション的なセリフがあったりするんですけど、大倉はひとり語りがとても苦手だったんですよ。会話はすごく自然なのに、お客さんのほうを向いた瞬間、どうしていいか分かんなくなるらしくて……今回はみんなきっとうまくなってるんだろうけど、役者もちょっとくらい苦手なことがないとつまんないですからね、稽古が(笑)」

 

 初演を観ているファンにとっても新たに楽しめるポイントが多くなりそうな2015年版「消失」。近年の「時効警察」や「怪奇恋愛作戦」といった映像作品で劇団に興味を持ったというビギナーには、こんなメッセージが。

KERA「テレビや映画でナンセンス路線ばかりをやっているので、この『消失』はちょっとびっくりされるかもしれませんけど……これだけの、ある意味人生観が変わってしまうような衝撃的な作品って、今はテレビで放送するのはたぶん難しいと思うんですよ。上演時間も3時間近くありますけど、生で役者たちが演じるドラマに万全の態勢で向き合っていただくことがひとつの強烈な体験になるんじゃないかと思います」

 

インタビュー・文/古知屋ジュン
Photo/品田裕美
構成/月刊ローソンチケット編集部 10月15日号より転載

 

【プロフィール】

■ケラリーノ・サンドロヴィッチ ’63年、東京都出身。’93年にナイロン100℃を旗揚げ。外部作品の作・演出や映画監督としても活躍するほか、有頂天/ケラ&ザ・シンセサイザーズでの音楽活動も精力的に展開している。

 

【公演情報】

ナイロン100℃ 43rd SESSION『消失』

日程・会場:2015/12/5[土]~12/27[日] 東京・下北沢 本多劇場

 

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