・インタビューしちゃいました!! 2017-01-10 18:30

結城企画 第2回公演「くるみ割れない人間」インタビュー

dsc02167

OFF・OFFシアターでクラシックバレエが踊りたい
ただそれだけの思いが、始まりでした

俳優の結城洋平による自主公演企画「結城企画」。11月に第1回公演「ブックセンターきけろ」を成功させたばかりの同企画が早くも、第2回公演「くるみ割れない人間」を上演する。今回は、絶海の孤島でなぜかバレエのレッスンに励む4人の男たちと、彼らを見守る1人の女による怒涛のコメディを展開する。そこで、稽古中の主宰・結城洋平と脚本・演出を手掛ける劇団「犬と串」のモラルに、今回の舞台の見どころを聞いてきた。

 

――第一回公演から約2ヵ月で今回の第2回公演となります。かなり短いスパンでの上演になりますが、どのようなきっかけで今回の企画に至ったのでしょうか。

結城 そうですね。第1回が忘れられないうちに、第2回の企画も進めたいなと思っていたので、結構ギュッとしています。今回、最初にやりたいと思ったのが、OFF・OFFシアターでクラシックバレエを踊りたいっていうこと。ただ、それだけの安易なアイデアでした。家でお風呂上りになんとなくそんなポーズをしてみたら、ちょっと面白いかもしれないと……なんの根拠もないんですけど(笑)。おじさんたちが熱量を持って、きれいな動きをしていたら面白いんじゃないかと思って。それで、クラシックバレエを使いつつ、エネルギーのある公演にしたかったので、モラルさんに脚本と演出をお願いしました。以前、舞台を見させてもらったときの印象が強くて。とってもエネルギッシュだったんので、これはモラルさんにお願いしたいな、と。

モラル お話が来てまず、「これは面白い!」と思いましたね。打ち合わせでアイデアが出ても、何だかんだとそれが形になっていく中でやろうとしていたことがそぎ落とされてしまったりすることもあるんですけど、今回に関しては最初に話していたワクワクするような感覚のまま形になっているんじゃないかと思います。

結城 僕からは、最初に「クラシックバレエを踊りたい」という思いだけを丸投げしたので……。最初の打ち合わせに入る前はそれしか言ってないです(笑)。

モラル それに対して僕はとりあえず「くるみ割れない人間」というタイトルだけ返すという(笑)。キャッチーなタイトルがすごく好きで、バレエに纏わることをいろいろ考えていく中で思いつきました。タイトルからコメディだな、とわかるようなものにしたかったので。

 

dsc02018

――まずタイトルが決まって、ストーリーについてはどのように出来上がっていきましたか?

モラル 結城さんからは、打ち合わせの中で男たちの魂が浄化されていくような、そんなお話がいいなということでした。それで話を考えていったときに、1人女性キャストがいたほうがいいなということになって。以降はお互いにアイデアを持ち寄って打ち合わせを繰り返しました。

結城 踊りとは何か?ということをモラルさんが分析してくださって、「言葉じゃなく相手に何かを伝える」という身体表現であるから、逆にしゃべりばっかりで胡散臭い、説得力のない人ばっかり出てきたら面白いんじゃないか、となりまして。そしたら、あとはどんどん決まっていった感じですね。

 

――台本も拝見させていただいたんですが、バレエのところはどこか魔法少女の変身のような解放感がありそうで、どのようになるのか楽しみな気がしました。

モラル 魔法少女ですか…(笑)。キュートにはしたいな、と思ってますけどね。

結城 今日、初めて富川(一人)さんの振付が始まったんですけど、まさに内面を出すような振りになっていましたね。

モラル いやぁ、大変ですけどね(笑)

結城 振付の先生には、「クラシックバレエをちゃんと踊るのは100%無理です、。」って言われているんです。クラシックバレエは本当にしっかりと積み上げてきたものがないと踊れない。でも、要所要所にその形を入れていくことはできると言ってくださっているので、稽古が始まってからは、ずっと体を動かしていてバレエの形も稽古でやっているんですけど……やっぱり難しいですね。

モラル バレエで表現していくという、結城さんがやろうとしていることはすごく野心的なところがある。だから、伝わることは大事なんだけど、伝わりやすい形に落としすぎてしまうと、もったいない感じがするんですよ。そこは、ちょっとギリギリを狙っていきたい。稽古も全然停滞してなくて、むしろ順調なんですけど、やることが多いから順調でもなんとか間に合うかって感じなんです。

結城 今回、台本をかなり早く上げていただいて、この時点でそろっていることが稀。キャスト同士でも「ここ1~2年で1回あるかないかだよね」って話をしているくらい。モラルさんがしっかりここまで上げてくださっていることに、とても誠意を感じています。

 

――稽古の雰囲気はいかがですか?

結城 結構、みなさん手練れの方々ばかりなので、初日の読み合わせのときから共通のリズムや空気感が共有できていた気がします。

モラル それぞれ素敵な、力のある人ばかりなので、ここに落とし込もうって決めてしまったらすぐとは言わなくてもできてしまう。今はお互いが持っている武器をぶつけ合うことを稽古場で楽しんでいる段階ですね。最終的に持っていきたいテンポと違っても、今は“素敵さ”がぶつかり合っているような、ゴツゴツした感じです。

 

――演出の側からみて、キャストの方の印象はいかがですか

モラル 眼(鏡太郎)さんは、やってほしいところをパッとやってくれるんですけど、そこに自分らしさを乗せてくるんですね。眼さんがいれば舞台上は大丈夫だという安心感があります。

結城 第1回公演にも出ていただきましたし、一緒にやっているととっても安心できるんですよ。信頼できる役者さんですね。

モラル 佐藤銀平さんは、持っている力強さと明るさが物凄い。今回の面々は、僕も含めてシャイな人が多い印象なんですけど(笑)、そこに銀平さんが居てくれることで稽古場も作品も強度が増していくんです。富川(一人)さんは……天才ですね。コメディの攻め方が違うんですよ。脚本を書いていて、やってほしいと思ったことにピタリとハマったときの気持ちよさってあるんですけど、富川さんは「あぁ、そういうのあるんだ!」っていう驚きがあるんです。思いつかないようなことをするんですけど、破綻しているわけでもなく。パワーと脱力が両立してるんです。

結城 わかる! 斜めを向いていたはずなんだけど、気づいたら真正面から全力で来てたみたいな感じなんですよ

モラル 未来さんは、すごくきれいな方なんですけど、親しみやすさもあって華がありますね。今回、濃い男4人の中に1人女性で、ダントツで最年少なんですけど、いつも無理せずに自然体。舞台上でも、稽古場でも、数のバランス的に難しい部分があると思うんですけど、男が出せない美しさ強さみたいなものを出してくれています。

結城 こんなにかわいいのに、とっても肝が据わっているんですよ。男のほうがタジタジになってしまうような(笑)

 

dsc02105

――結城さんの印象は?

モラル 団体を背負っている、という責任が舞台の上にも出ていますね。まったく知らないお芝居を見に行っても、この人がカンパニーの大黒柱だなってわかる瞬間ってあるんです。それが芝居に出ていて、ちゃんと我を通す部分と、引く部分をものすごく考えながらやっているので、稽古していても楽しいですね。あと、何でもやってくれます(笑)。これは本番ではやらないかもなー、ということも、どんどんやってくれるので(笑)。

結城 今日の稽古も楽しかったですよね(笑)。もうキャラ大集合というか、妖怪大集合みたいになっちゃってるんですけど、そこからいいところだけ取っていけたらいいですよね。共演の方々も本当に心強い方々ばかりなので、変なふうにはならないな、と。ヘタすると潰されちゃうので(笑)。

 

――最後に、今回の作品の見どころをお聞かせください。

モラル テンポやリズムがすごく大事な作品なので、感情だけでやりすぎると破綻してしまうところがあるんですね。ちゃんとディレクションがないと。そこは大事にしたいところです。でも、せっかくこれだけバックボーンと個性と技術がある方ばかりなので、気を抜くと潰されちゃうのは僕もそうなんです。「キャストはよかったのにね」にならないよう、粘り強く、稽古でどこまで破綻した状態を我慢できるか。そこが自分の中でのテーマかなと思います。本当に山のようにやることがある作品ですが、その一つひとつがお客さんの驚きや笑いにつながる。その一つひとつをしっかりやっていこうと思っているので、ものすごい数の見どころになるはずだと思っています。

結城 今の舞台って、割とどんどん変えていって話自体を再構築しながらやっていくことが多いと思うんです。でも今回は、この出来上がっている本を役者たちがモラルさんとどう作り上げて、積み上げていけるか。それがとことんできる状況にあるので、そこはこだわってしっかりと積み重ねていきたいですね。そうやって積み重ねたものを、お客さんに見せることができる喜びを感じています。その分、しっかりしたコメディになると思うし、観たことを自慢できる作品になると思いますので、ぜひ自慢するために観に来てください!

 

インタビュー・文/宮崎新之

 

【プロフィール】

結城洋平
ユウキ ヨウヘイ 1988年6月25日生まれ。2004年にテレビドラマ「3年B組金八先生」第7シリーズで俳優デビューし、さまざまな映画、ドラマ、CMに出演。2009年よりにAmuse-Prestage Project-unit「ブラックパールが世界を動かす」で初舞台。2010年の劇団プレステージ旗揚げからに参加する。2014年に同劇団を退団し、客演を中心に活躍。舞台 ベッド&メイキングス 野外劇「南の島に雪が降る」(2014年)、「七人くらいの兵士」(2015年)、タカハ劇団「嘘より、甘い」(2016年)などに出演。2016年に自身が中心自主公演となる結城企画を立ち上げ、舞台「ブックセンターきけろ」を上演した。

モラル(犬と串)
1986年2月25日生まれ。2008年に早稲田大学演劇研究会で劇団「犬と串」を立ち上げ、脚本・演出を手掛ける。近年では他劇団への脚本提供やケータイゲームのシナリオ制作に参加。「黄金のコメディフェスティバル2013」では最優秀演出家賞を受賞する。2016年にはモト冬樹主演の舞台、MMJプロデュース「昆虫戦士コンチュウジャー」の脚本・演出を手掛けるなど、精力的な創作活動を行っている。

 

【公演情報】

結城企画 第二回公演『くるみ割れない人間』

日程・会場
2017/1/25(水)~31(火) OFF・OFFシアター
(東京)

★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!