・インタビューしちゃいました!! 2016-05-27 19:21

ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」 児玉明子&伊藤優衣&君沢ユウキ インタビュー

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©岸本斉史 スコット/集英社 ©ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」製作委員会2016

 ’99年より週刊『少年ジャンプ』で連載され、今や世界中で親しまれている大人気コミック&アニメ『NARUTO-ナルト-』。里一番の忍を目指すうずまきナルトが個性豊かな仲間たちと共に成長していく原作の世界観を、プロジェクションマッピングなどの映像演出、トランポリンを使ったアクロバット、エアリアル(空中演技)といったアクションでより立体的に表現したのが、昨年上演された『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』だ。昨年、国内4都市に加えてマカオ、マレーシア、シンガポールでも上演され各地の観客の度肝を抜いたこの作品が、さらにパワーアップして帰って来る!

 再演への期待が日に日に高まる中、物語の主役となるうずまきナルト(松岡広大)、うちはサスケ(佐藤流司)を、同じチーム“第七班”の仲間として支える春野サクラ役の伊藤優衣、はたけカカシ役の君沢ユウキ、そして演出・脚本を手がける児玉明子に、作品への思いを語ってもらった。

 

――初演は海外公演を含めて非常に評価の高かった作品ですが、キャストのお二人の再演が決まったときの率直な感想は…?

君沢 また初演のときのメンバーと一緒にやれるというのがまず嬉しくて。『NARUTO』ってお客さんだけじゃなく、演じている僕たちや関係者の方々までみんなに愛された作品だったんですよ。ですから再演が決まったのは感慨深いですね。

伊藤 『NARUTO』は、自分の役者人生にすごく大きくかかわった作品だって実感していて。なぜかというと、終わったあとの余韻が半端じゃなかったんですよ…公演数も多かったですし、感じたこともたくさんありましたし、何よりみんなで体当たりで臨んだ作品だったので。それにまた関わらせて頂けることもそうですし、自分を高めていける予感もするので、すごく楽しみにしてます。

 

――初演では映像や役者さんたちのハードなアクションなど、予想もつかないような演出もたくさんあったんですが、稽古期間を振り返ってみていかがですか?

児玉 “これまで誰も観たことのないもの”というのがコンセプトだったので、いろいろ変わった要素を取り入れるべくトライしていったんですが、それがなかなか難しくて。役者やスタッフに動いてもらってから「すみません」っていうようなこともありましたし。もちろん芝居する部分にも力を入れてもらわなくてはいけなかったですし、時間との戦いもありましたから、もうとにかく必死でしたね。

伊藤 役者も、本当にみんな必死だったんですよ(笑)。

君沢 『NARUTO』で大変じゃなかった人は、たぶんいなかったんじゃないかな? 今思い出すと、児玉さんの力の入れ方が半端じゃなかったんですよ。最初はミュージカル寄りにするのかアクション系なのか、誰も『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』のゴールがわかんないところからスタートしたわけじゃないですか。周囲や原作ファンの方々の期待もありますし、これを具現化して、さらにみんなに納得してもらうっていう作業をもしお前がやれって言われたら、無理ですもん(笑)。あと本番に入ってから見せ方で工夫されてる部分だとかいろいろ気付いたことも多くて、言葉のわからない海外のお客さんたちにも面白く思ってもらえたっていうのは、演出の力がすごく大きかったんだなって。

 

――君沢さん、伊藤さんとも近年は舞台出演も多くて、さまざまな演出家の方と組んできたと思うんですが、児玉さんの演出方法についてはどう受け止めていましたか?

君沢 ここまでいろんな映像演出だったりの仕掛けを使う演出家さんとの仕事は、僕は初めてなんですよ。でも何より児玉さんと組んでみて一番すごいと思ったのは“NARUTO愛”ですね。大人チームでお酒を飲んだときに、「この作品をもっともっと良くしたいから…」ってつぶやいて、そのままつぶれたこともあったりして(笑)。

伊藤 抱えてるものがもう相当あったんじゃないかと。私は演出を付けていただいて一番印象に残っているのは、最初に「サクラちゃんらしい熱量が足りない」って言われたこと。そこで改めて春野サクラという人物のいろんなことに対する熱を見直してみたりして、それがサクラのキャラクターをより深く知るきっかけになったというか。元気で若いキャラだから、キャピキャピ感も出さないと…。

君沢 いや、十分若いから(笑)。でも普段は結構、落ち着いてるもんね?

伊藤 サクラがキャピキャピしてないと、カカシ先生のどっしり感やサスケくんのクールさなんかが引き立たなくなっちゃうんですよね。だからその言葉で喝を入れてもらった感じでした。

 

――行動を共にするシーンの多い第七班ですが、舞台裏ではどんな感じだったんですか?

君沢 楽屋では僕が一番うるさいですね(笑)、みんなが大好きなんで。他のみんなは、役に少し近い感じもあったかな。あ、でも広大はおとなしいというか、“Mr.まじめ”でしたね。

伊藤 でも好奇心旺盛だったり、一人でわーってはしゃぐときなんかはナルトっぽかったですよね?(笑)

君沢 そういうときだけ、実年齢の10代っぽかったけどね。自分があの歳の頃にあんな風にできたかっていうと無理だから、広大のことは尊敬してますし。彼は『NARUTO』をやってる間にしっかりしてきて、できないことがあっても最初から他人に頼らず、まずは自分で頑張ってみようとするんですね。稽古をやりながら、どんどん前向きな、原作のナルトっぽくなっていった。僕らもみんな稽古でいろいろ失敗しながら役に近づいていった、みたいなところはありました。

伊藤 広大くんは稽古の最初の頃は、責任感と緊張感に押しつぶされちゃいそうな感じだったのに、本番に入ったら“背中の大きさ”が全然違ったんですよ。パワーがみなぎるようなおっきな背中に、いつの間にかなってましたね。

君沢 あと、広大と流司は役柄だけじゃなく、いい意味で切磋琢磨できるライバルみたいな関係なんですよ。稽古中なんかはどちらも“やってやろう!”みたいなテンションだったし。流司は普段は僕らとわちゃわちゃしてるのに、本番になると完全にサスケモードに入っちゃうんですよね。だから舞台裏で声をかけてもやたら反応がクールだったりして、終演後に「さっきちょっと(役に)入ってたんで、ごめんなさい」って謝られたり(笑)。“どこまで集中してるんだこいつ?”ってくらい、サスケの空気を纏っていましたね。

伊藤 君沢さんは逆に、みんなの緊張感をやわらげてくれるような存在でした。私も集中すると周りがみえなくなりがちだったけど、舞台裏でもよく声をかけてくれたりして。

君沢 (うみの)イルカ先生(市瀬秀和)や大蛇丸さん(悠未ひろ)だとかの大人チームで、“若い子たちがあんまりピリピリせず、のびのびやれるようにできたらいいね”って話したりしてたんですよ。最年長の三代目火影役の平川(和宏)さんと広大って実は40歳くらい離れていて、その2人が共演してる不思議なカンパニーだったんですけど、大人チームでの交流も楽しかったですね。自来也役の梅垣(義明)さんとは芝居の話、一回もしてないですけど(笑)。毎回「いやぁ日本酒が旨い!」とか言っちゃって。

 

――(笑)。ここで児玉さん含めてうかがいたいんですけど、ストーリー中に“チャクラを開く(本来持っている何十倍ものエネルギーを引き出す)”という表現がありますよね。初演をやってみて、ご自分の中で新しい扉が開いた!と思った瞬間はありましたか?

児玉 今回、これだけいろんな要素を入れてみて、お客さんに観ていただいたときに「こんなの舞台じゃない!」とか「『NARUTO』じゃない!」って言われたらどうしようという不安はあったんです。でも想像していたよりも、みなさんに受け入れていただけて…役者やスタッフが力を合わせて、映像ですとかいわゆる芝居ではない要素も作品の中に上手く落とし込めるなら、演劇には無限の可能性がもしかしたらあるんじゃないか…と思えたことには、今回チャクラが開いたというか勇気をもらえました。

君沢 僕は子供の頃に原作を読んだときからカカシ先生っていうキャラクターが大好きだったんですよ。飄々として見えるけど、オンオフの切り替えが上手かったり、物事を俯瞰で見られるかっこよさがあるなって。この役をやっていて、個人的にもカカシ先生に影響されるというか、学んだことが多かったですね。あとはアクションなんかも、稽古期間にバク転ができるようになったりだとか。『NARUTO』では技術的に難しいアクションもたくさんあるんですが、できない人も最初から諦めるんじゃなくて、みんなで挑戦してみようという感じで、稽古の前段階からレッスンをつけてもらったりしていたんですね。以前はできればダンスなんかも逃げたいほうだったんですけど、鍛えられました(笑)。みんな大変だったんですよね…そういえばサクラちゃんは、本番中の大事なシーンの前には、必ずどっかしらに消えてたよね。

伊藤 集中したかったんですよ(笑)。私が演じることによって原作のサクラちゃんの魅力を消しちゃいけないし、むしろ何倍にも増して観せなきゃっていうプレッシャーが大きかったんですよね。本番初日のゲネプロが終わったあとでも、お客さんがどう受け入れてくれるんだろう?っていうことで頭がいっぱいで、ご飯も食べられないくらい、苦しくなっちゃって…。でも、始まる数分前くらいに「この場を楽しみながら、サクラちゃんと一緒になろう」って、覚悟を決めました。そこでチャクラ、開いたのかな?(笑)

君沢 キャストもスタッフも児玉さんも、みんな稽古場で考え、苦しみ、ぶつかり…チャクラを開くじゃないですけど、何かを導きだした作品なんで。本番前にしんどい思いをした分“一緒に戦って行ける戦友”みたいな感覚は他の舞台より圧倒的に強かったかな。カンパニーの絆も…作るつもりはなかったですけど、いつの間にか生まれちゃって。

(一同爆笑)

児玉 再演でも何かしら大変なことはあると思いますけど、初演の経験があったから、このチームならきっと乗り越えられるだろう、というのはありますね。

 

――初演での経験を踏まえて、“次回はこういう風にできたら”という抱負はありますか?

伊藤 再演ですけど、気持ちは再演でいたくないんですよ。また新しい気持ちで、でもお芝居はパワーアップさせて。厚みのあるサクラちゃんにしたいなって思ってるんです。

君沢 そういう“プラスワンモア”をみんなで出しあえたら、「NARUTO」のクオリティがさらに上がるのかもしれないね。でも個人的には、“こうしてやろう”とかいうこましゃくれた気持ちはなくて、伊藤ちゃんが言ったみたいに初演のときのまっさらな気持ちで挑んでいきたい。

児玉 今回、数人ですが新しいメンバーも入ってくるので、彼らは彼らですごくプレッシャーを感じていると思うんですよ。初演から続投のメンバーも、よりパワーアップしたものを見せなくちゃいけないし、新しい方々が入ってくることで最終的にはいい方向に作品をブラッシュアップ&パワーアップできたらいいなと思います。

伊藤 DVDも出ているし、中身がなんとなくわかっていらっしゃる方も多いと思うんですけど。それをイメージしてこられる方々の、いい意味で期待を裏切りたい。

君沢 「何回観ても『NARUTO』はいいな」って言われるようなパワーを持てる作品でありたいですよね。中身がわかっているのに面白いと思えるもの、それが最上級のエンターテイメントだと思うんで。

 

 

取材・文/古知屋ジュン

 

 

【プロフィール】

児玉明子
■コダマ アキコ ’98年に宝塚歌劇団で作・演出家デビュー。’10年に文化庁の新進芸術家海外研修制度でカナダへ留学。’13年の宝塚歌劇団退職後は「GOKÛ」(’16年2月)など多彩な作品を手がける。4/30[土]~5/9[月]にはライブ・ファンタジー「FAIRY TAIL」を上演。

伊藤優衣
■イトウ ユイ ’94年、群馬県出身。映画「告白」(’10年)でスクリーンデビューを果たす。映画「新宿スワン」(’15年)など映像作品のほか、近年は「美少女戦士セーラームーン-Petite Étrangère-」(’14年)、「転校生」(’15年)など舞台での活躍も目覚しい。

君沢ユウキ
■キミサワ ユウキ ’85年、京都府出身。「仮面ライダーW」(’09年~’10年)園崎霧彦役で人気を獲得。ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズン(’13年〜’14年)や「東京喰種(トーキョーグール)」(’15年)など、舞台作品にも多数出演している。

 

【公演情報】

ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』

日程・会場:
2016/7/30[土]~8/7[日] 大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
2016/8/13[土]~28[日] 東京・AiiA 2.5 Theater Tokyo

★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!