・連載―イヌの日 2016-08-06 13:26

<第5回>ゴジゲン目次の「イヌの日」DXインデックス

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キャスト紹介第2弾です!
「大窪人衛」「川村紗也」「本折最強さとし」「菊池明明」の4名をご紹介します。
今回は特別に一色絢巳による「イヌの日キャストをポケモンに例えると?」も合わせてお楽しみください。

 

◆大窪人衛 (ポケモンに例えると:コダック)

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彼については第二回にたっぷりと書かせていただいたのでそちらも参照いただきたい。

すべては5年前のゴジゲンの出演者オーディションから始まった。
当日、応募者には「山で道に迷った3人の若者が古びた神社で一休みする」という短いシーンを演じてもらうことになっていた。
審査は極めて平和に進んでいったのだが、1人の男が爆弾を投じることとなる。
その男は3人のとりとめのない会話の最中に突然寝そべりゴロゴロと回りだしたのである。
当時若干22歳の大窪人衛であった。
我々は唖然とした。
もちろん台本の中にはそんな指示は一言もない。
この短いシーンのどこにゴロゴロする必要性を見出したのか全くわからない。
困ったのは、彼と一緒にこのシーンを演じていた他の2人だ。
1人は寝そべった彼を助け起こすのに気を取られセリフどころではない。
もう1人にいたっては彼の行動をなかったことにしてシーンを進めていくのでまるで不自然であった。
シーンが終わり、苦々しい顔をする2人をよそに、額に爽やかな汗を湛えた大窪がいた。

普通であれば3人とも落とされたであろう。
しかし出演者の座を射止めたのは大窪であった。
何がどうなってそうなったのか定かでないが、特に選考でモメた記憶はない。
その場にいた全員が彼を推したのだと思う。
彼のとった行動には我々を納得させるほどの説得力とパワーがあったのだ。
今回も彼のトリッキーでパワフルな演技は健在であるどころか、ますます冴えわたっている。

それにしてもだが、彼のゴロゴロはめちゃくちゃ可愛かった。

 

◆川村紗也 (ポケモンに例えると:ゼニガメ)

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「どうだ?川村さん面白いだろ?」
初稽古の本読みの後に、演出の松居が俺に話しかけてきた。
めったに役者を褒めないヤツがそんなこと言うので正直驚いた。
実際に普段話している彼女からは想像もつかない、なおかつごく自然な演技だった。
とんでもない方向から役が飛んできて、彼女にスポンッと憑依したような印象だった。

先日パンフレット用のインタビューが行われたのだが、そこで種が明かされた。
彼女曰く「今回の台本を読むと、自分の役がどうセリフを発するのかがわかる」というのだ。
普通は道なき道を手探りで進む役作りを、彼女は迷うことなく突き進んでいく。
だからこそ彼女は天衣無縫に舞台上を駆けまわれるのかと納得がいった。
まさにナチュラルボーンな女優なのだ。

ちなみに私の役は一向にこちらに飛んで来る気配を見せない。
もしかしたら私に憑りつくのを嫌がっているのかもしれない。
それは「ゼニガメ」に例えられるカワイイ彼女とは対照的に、私のポケモンはいかつい岩ポケモンだからなのか。
私の役に聞きたい。
「イワーク」じゃダメですか?

 

◆本折最強さとし (ポケモンに例えると:マンキー)

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今作品の最大の「?」を解消したいと思う。

4年ほど前、彼は本名である「本折智史」から「本折さとし」へと改名した。
本人は心機一転の決意表明みたいなつもりだったのだろう。
しかしそれがまずかった。
そういう半端なことが許せない、ある男の癇に障ったのだ。
今作品の演出を務める松居大悟だ。
案の定居酒屋に呼び出されて説教が始まった。

「なんだそのマイナーチェンジ?全然面白くねーぞ。」

そこから小一時間、改名へのダメ出しが始まる。

「 いや、おまえ自身は面白いよ。おまえ自身は。でもさ、おまえの名前は相当スベッてるよ。スベリ倒してるわ。まずさ、おれが気に食わないのは……」

彼への集中砲火が終わると、ゴジゲン周りで集まった飲みの席はすでに「改名した名前の改名案」で盛り上がっており、いくつかの案がすでに用意されていた。

後輩「今一番僕らの中で熱いのが本折さとし3ですね。スーパーサイヤ人3みたいな感じで」
最強「は~なるほど、3番目の名前だからってことね」
松居「もしくは本折さとし6」
最強「え、4と5はどこ行っちゃったの?」
後輩「本折さとるってのもありますけど」
最強「いや、変わっちゃってるよね?」
後輩「ミドルネーム入れるなんてどうっすか?ほら、モンキー・D・ルフィみたいな」
松居「いいじゃんいいじゃん、なんか強そう」

 

全員「強そう…?」

そこから彼の最強の人生が始まった。
彼はその後、その名が持つあまりの意味の重さに3回「本折さとし」に戻っている。
その間に2回劇団を辞めて、4回バイトを変えている。
ちなみに今回は4回目の「本折最強さとし」である。
本人に言わせると、ブレることに関してはブレてないらしい。

 

◆菊池明明  (ポケモンに例えると:ラプラス)

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彼女の台本はすべて手書きだ。
台本を自らの手で書き写している。
何故わざわざそんな面倒なことをするのか理由は知らない。
しかし、それを聞いてふと頭をよぎったことがある。
私が学生時代、演劇サークルの先輩に聞いた故・大滝秀治さんの教えだ。
「体のどこを切っても血が噴き出すでしょう?セリフも同じなんです。血のように体に流れていてどこを切ってもセリフが噴き出す、そのぐらいまで体に染み込ませるんです」
ディティールは定かではないが、たしかそんな内容だった。

彼女はそれを実践しているように私は思ったのだ。
書くことでセリフを自らの血肉にしているのではなかろうか。
機械が打った文字と、自らの手を動かして書いた文字とどちらが生命感に満ちているだろうか。
言葉は生きている。
文字は生きている。
少なくとも自分はそう信じている。
彼女もそんな言葉の力を信じているのではないだろうか。

ところで、人生で一番多く使う言葉のひとつに「自分の名前」があるが、私はそれが徐々に存在を持ってくるような気がする。
名は体を表すという言葉もあるくらいだ。
彼女の場合、「明明」と自ら名乗り、人から呼ばれ、記名するごとに明明になっていく。
実際彼女は明々とした、太陽のような美しい女性である。
今作品には「本折最強さとし」という男が出演しているのだが、彼も自ら最強と名乗り、人から呼ばれ、その名を背負い続けることで最強になっていくのだろう。
―終

 

 

Profile
目次立樹 メツギ・リッキ

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1985年10月29日生まれ、島根県出身。
劇団ゴジゲン所属。舞台上では圧倒的な存在感を放つ、松居大悟作品には欠かせない存在。ここ数年は地元・島根県にて俳優、農家、ワークショップデザイナー、児童クラブの先生としても活動の場を広げている。

 

―今後の活動―
「イヌの日」 出演
作:長塚圭史 演出:松居大悟
2016年8月10日(水)~21日(日)
ザ・スズナリ(下北沢)