・連載―FUN HOME 2017-12-21 10:28

【連載】『FUN HOME』大好きローチケ演劇部員が送る、FUN HOMEの楽曲解説企画第3弾!

裏

『Changing My Major』

性の喜びを全身で歌い上げる1曲。それだけ聞くと、なかなか際どいんじゃないかと思うかもしれませんが、この曲、一言でいうと、すごく滑稽です。

 

 

登場人物が同性愛者の小説を読んで自身がレズビアンだと自覚した中アリソンは、大学のゲイサークルに参加するようになりました。そして、そこで出会ったジョーンという女性と、始めて一夜を共に。この曲は、その後の喜びや戸惑いを表現しています。

「Changing My Major」は、簡単にいうと「私の専攻を変える」という意味です。中アリソンが初めての経験をして、自分の専攻にしたいぐらい夢中になったものというと、それは、“ジョーン”。

曲中でアリソンは、

 

“もうこの部屋から出なくていい、何も食べなくてもいい、もう自分がどうなっていたかもわからないけど、私はずっとジョーンといれればいい!彼女はなんて素敵なんだろう。私の研究対象はジョーン。ジョーンについてもっとよく知りたい…”

 

と、なんとまあ驚くべきハイテンションでひたすら喜びを表現します。本人は本当に幸せなはずなのに、観客にしてみればまるでコメディ。中アリソンの表現力が問われるシーンです。

今回、そんな、とにかくハイテンションで興奮している中アリソンを演じるのは、歌手として人気を博す、大原櫻子さん。その歌声もさることながら、きっといままで見たことのないコメディエンヌとしての大原さんを見ることが出来るのだろうと、正直一番楽しみにしております。

 

大原
 

さて、彼女は喜んでいるだけではありません。曲の中盤では、彼女の中にある不安も明らかになります。

 

なにか自分が変わってしまったような戸惑い。

変わってしまうことへの恐れ。

落ちていくような恐怖と舞い上がるような高揚感。

 

様々な感情が中アリソンを襲い、彼女は戸惑いを隠せません。この、先ほどのハイテンションとの落差が、中アリソンの人間らしさを際立たせ、観客に彼女をより身近に感じさせてくれるのです。

今後の楽曲にも、物語の構成自体にも通じることですが、FUN HOMEは緩急をつけて感情を表現するのが本当に上手です。感情の対比がとてもテンポよく、その突然さを隠すことなく行われています。『Changing My Major』は、嬉しいはずなのに、怖くもある、、、そんな複雑な感情が、とってもよく伝わってくる一曲です。

 

※子供時代のアリソン=小アリソン、大学時代のアリソン=中アリソン、大人のアリソン=大アリソン

 

文/ローチケ演劇部員(有)

 

【公演情報】
『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』

日程・会場:
2/7(水)~26(月) シアタークリエ

3/3(土)~4(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
3/10(土) 愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール

原作:アリソン・ベクダル

音楽:ジニーン・テソーリ
脚本・歌詞:リサ・クロン
翻訳:浦辺千鶴
訳詞:高橋亜子
演出:小川絵梨子

出演:
アリソン(漫画家) 瀬奈じゅん
ブルース(アリソンの父) 吉原光夫
アリソン(大学生時代) 大原櫻子
ヘレン(アリソンの母) 紺野まひる
ロイ(ブルースの愛人) 上口耕平
ジョーン(アリソンの恋人) 横田美紀
アリソン(小学生時代)Wキャスト 笠井日向 龍 杏美
クリスチャン(アリソンの弟)Wキャスト 楢原嵩琉 若林大空
ジョン(アリソンの弟)Wキャスト 阿部稜平 大河原爽介