・インタビューしちゃいました!! 2017-02-10 17:55

赤坂大歌舞伎・新作歌舞伎『夢幻恋双紙(ゆまぼろしかこいぞうし) 赤目の転生』
中村勘九郎 単独インタビュー

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演劇界を巻き込む大事件!「赤坂大歌舞伎」に待望の新作登場。
中村勘九郎×中村七之助×蓬莱竜太、
奇跡のタッグでなにが起きる!?

5回目を数える「赤坂大歌舞伎」が、東京・TBS赤坂ACTシアターにて今春4月6日~25日の上演を決定。この「赤坂大歌舞伎」、そもそもは2008年9月、十八代目中村勘三郎の「芸能の街・赤坂で歌舞伎を!」の一声で始まった。歌舞伎を観たことのない観客にも喜ばれる傑作演目を次々に上演。2013年に中村勘三郎の遺志を継ぎ、中村勘九郎と中村七之助兄弟を中心に『怪談乳房榎』を上演し、新たな歴史をスタートさせ、2015年には中村七之助が七役に挑む『お染の七役』などで話題を博した。

この、前回2015年の「赤坂大歌舞伎」の千穐楽の日に、「次は新作を……」という話がすでに出ていたという!しかも、脚本・演出の白羽の矢が立ったのは劇作家、劇団「モダンスイマーズ」の蓬莱竜太。どんな経緯で今年の実現に至ったのか。中村勘九郎が単独インタビューでネタバレギリギリまで教えてくれた!

 

――「赤坂大歌舞伎」で初めて新作を上演することになった経緯とは?

中村 前回の「赤坂大歌舞伎」は、父が亡くなって2回目ということで不安もありました。でも、千穐楽の日の打ち上げで初回から携わってくれているTBSの方が、「本当に良かったよ」といいことを言ってくれたんです。その方は、いつもロビーにいてお客様の声を聞いて僕らに教えてくれる。そういう人はなかなかいなくて、父も人柄に惚れて「赤坂大歌舞伎」を続けていましたし、とても信頼していました。そんな方が「いままでで一番盛り上がったんじゃないか?」と言ってくれ、七之助もみんなも喜んで、僕もすごくうれしかった。じゃあ、次、喜んでくれたこのお客様方になにを提供しようか?と。これはもう新作しかないな!と思いました。

――新作の脚本を蓬莱竜太さんに依頼したのは?

中村 まず、新作にしようと思ったきっかけですが、いま、歌舞伎にはいろんな歌舞伎があります。『野田版 研辰の討たれ』『野田版 鼠小僧』、近年では『スーパー歌舞伎Ⅱワンピース』。歌舞伎は本当に懐が深いんですよ、やっている僕が言うのもヘンですが。一方で、僕は前々から、蓬莱さんに歌舞伎を書いてほしいと思っていました。蓬莱さんは、家族や日常を描くのがうまい。しかも、はたから見たら普通の人なんだけど、実は変な人たちがいっぱい出てくるじゃないですか(笑)。そこがうまいし、女性を描いても素晴らしい。『まほろば』(作・蓬莱竜太、演出・栗山民也)を見た時、あれも家族のお話で、ああ、これはもう、蓬莱さんに絶対やってほしい!と確信しました。で、無理を承知で今回の話を持っていったら、あ、はい、やります、と。

――脚本について、蓬莱さんとはどんな打ち合わせを?

中村 最初に僕が出した案は「長屋もの」。歌舞伎って、江戸時代にはニュースペーパー、いまのネットニュースと同じだったりするわけで、当時の人々は歌舞伎を見ておもしろおかしく事件を知るというのがあるんですね。蓬莱さんには、日常に潜むなにかを描いてほしいと思い、そうなると、長屋もの、いまでいう団地をミックスしたらおもしろいんじゃないかと思いました。近所におかしな人がいる、アイツ悪い奴じゃないか……というところから、「夢幻恋双紙」という新作歌舞伎が出来上がっていきました。

――直接のやり取りでツッコんでいくんですね。

中村 芝居を観に来てくれたり、観に行ったりした時、ごはんを食べながらやるんですよ

――ところで、「転生」を題材にしたのは? 何回くらい生まれ変わるんでしょう?

中村 ……うーん、どこまでしゃべれるかな(笑)。「転生」は蓬莱さんのアイデア。3、4回は転生しますよ。最初にシノプシス(あらがき)が上がったのは昨年でした。別の舞台中に渡され、帰りの車の助手席で読んですぐに電話しました、「天才だ!」と。そしたら蓬莱さん、「そう、うん、ありがとう」って(笑)。ほんとにもう、すごいです。妙な話で、おもしろい!登場人物がどう転生するのか、なぜ赤目なのか……。ミステリーであって、喜劇のように見えて、笑いながら深い闇に落とされる、そんなお話です。

――資料によると、勘九郎さん演じる「太郎」が七之助さん演じる「歌」をなかなか幸せにできず、何度も生まれ変わって違う人格になって人生をやり直す、と。

中村 同じ太郎でも、何役もあるってことで、演じるほうは大変。最初は、人がやるもんだと思って読みました。自分がやると思って読むと…ね(笑)。人がやると思うとめちゃくちゃおもしろいんです。でもですね、太郎一人が変わるだけじゃないんです。一人が変われば、周りの対応も、環境も変わるから、関わる人々の人生まで変わる。つまり、みんなが何役もやることになる。

――歌舞伎ならではの派手な演出もありますか?

中村 派手さより、作品力で見せたいと考えています。人間同士の醜い部分も、醜いけど美しかったり、歪んでいるけれども愛おしかったりする、そうした絡み合い。それこそ蓬莱さんに書いてもらう意味がある。役者の技量にかかってくる芝居になります。がんばらないと。

――TBS赤坂ACTシアターという劇場に関しては?

中村 小屋的に最高!と思うんです。蓬莱さんが書く新作歌舞伎の世界が、ものすごく伝わりやすいと思います。過去にもここで歌舞伎をやってきましたが、喜劇も、人情話も、ケレンみのあるものも受け入れてくれる劇場です。おもしろいのが、「赤坂大歌舞伎」のお客様はご覧になった後、わかりやすくしたの?セリフも現代っぽくしたの?と言ってくれますが、まったくなにも変えていない古典的な演出のままなんですよ。……と、いうことは、劇場の持つパワー、マジックで、「赤坂大歌舞伎」は多くの方々に伝わりやすくなっているんです!

――歌舞伎や歌舞伎座は敷居を高く感じるけど、TBS赤坂ACTシアターは大劇場とはいえ、通常の演劇ファンも行きやすさがありそうです。

中村 歌舞伎や歌舞伎座への先入観は少なからずありますよね。でも、それでいいと思います。僕たちだって、「あ、歌舞伎座だ」って思うもん(笑)。舞台に立っていても、「ここ歌舞伎座だよー」と思うんですから。歌舞伎好きの方々、赤坂の町の方々、「赤坂大歌舞伎」が好きな方々、そして、演劇界をひっくるめての事件になればいいなと思います。

――ちなみに、転生していく太郎の中に、ご自分に近い人物はいますか?

中村 それが、ぜんぶに自分がいるんです。これはおもしろい。見ているお客様も、ぜんぶに自分がいるって思うんじゃないかなあと思いますね。結婚してもぜんぜん働かず、変わる変わると言って変わらない太郎が、転生したら金持ちだったり。世の中のニュースをひっくるめたようなネタが満載です。ただ、歌だけは、どれだけ周囲や環境が変わってもブレない一つのものがある。転生しても変わらない、なぜか?……それも最後にわかるんです。

――歌舞伎らしいものと、蓬莱さんらしいもの、どんなバランスで交わりそうですか?

中村 蓬莱さんの言葉の選び方は非常におもしろく変えたくないから、語尾や、一人称をどれだけ歌舞伎寄りにするか。歌舞伎に「俺」という呼び方はないんですね。それから、テンポの良さも活かしたい。悲しいかな、ここも歌舞伎の先入観で、ゆっくりしゃべれば歌舞伎だと思われる節があります。でも、昔の映像を見ると、実は時代物のセリフでさえテンポが速い。戦後から100年と経たずどこで変わってしまったのか……。先人のテンポも学びつつ、いまの僕らのテンポを大事に作ります。

――期待している方々にメッセージを!

中村 これは歌舞伎じゃない、という人も出てくるかもしれません。でも、いまはもう、いろいろな歌舞伎がありますから!そこを改めて考えた時、父の「赤坂大歌舞伎」はじめ、スーパー歌舞伎の二代目市川猿翁さんの頃は、ものすごくいろいろなことを言われていたと思います。戦った方々がいてくれたからこそ、いま、僕たちがこうして挑戦できる。感謝と、尊敬と、ジェラシーとを持ちながら、心して新作に挑みます!

 

取材・文/丸古玲子
スタイリスト/寺田邦子
ヘアメイク/宮藤 誠(Feliz Hair)
衣装/
ネクタイ(¥10,000)
スーツ(¥69,000)
シャツ(¥18,000)
いずれもTAKEO KIKUCHI(TEL:03-6324-2642)

 

【プロフィール】
中村勘九郎
■ナカムラ カンクロウ 1981年10月生まれ、東京都出身。十八代目中村勘三郎の長男。‘86年に『盛綱陣屋』小三郎役で初お目見得。翌年に『門出二人桃太郎』兄の桃太郎役で二代目中村勘太郎を名のり初舞台を踏む。その後、歌舞伎以外に舞台『おくりびと』やテレビ、映画、ドラマなど幅広く活躍。2012年、父・十八代目中村勘三郎の前名である中村勘九郎を六代目として襲名した。

 

【公演情報】
赤坂大歌舞伎 新作歌舞伎
『夢幻恋双紙 赤目の転生』

作・演出:蓬莱竜太
出演:中村勘九郎、中村七之助、市川猿弥、中村鶴松、中村亀鶴、片岡亀蔵 ほか

日程・会場:
2017/4/6(木)~25(火) TBS赤坂ACTシアター(東京)

 

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