・インタビューしちゃいました!! 2017-02-09 11:49

『熱海殺人事件NEW GENERATION』黒羽麻璃央 インタビュー

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“新世代”の幕開け間近!稽古まっただ中の本音を黒羽麻璃央が吐露!

演劇界の巨星つかこうへいの代表作『熱海殺人事件』が新世代のフレッシュな布陣で甦る! 1973年に文学座に書き下ろされた本作は、紀伊國屋ホールを拠点に何度も再演し“東京の春の風物詩”と呼ばれるまでになった名作だ。タイトルを「売春捜査官」「モンテカルロイリュージョン」などと変化させてバージョンアップを重ね、映画化もした。演劇に詳しくない人でも『熱海殺人事件』の名を一度ならず聞いたことがあるのではないだろうか。つかは2010年に他界したが、『熱海殺人事件』は終わらない。その遺志を継ぎ、2017年2月、まったく新たな顔ぶれで“NEW GENERATION”を打ち上げる。部長刑事・木村伝兵衛に『新・幕末純情伝』で桂小五郎を演じた味方良介、婦人警官・水野朋子に1986 年の映画版で同役を演じた志穂美悦子の娘、文音、刑事・熊田留吉に『手裏剣戦隊ニンニンジャー』などで活躍する多和田秀弥。そして、三流の犯人・大山金太郎役が黒羽麻璃央に白羽の矢が立った!2.5次元ミュージカルの『テニスの王子様』『刀剣乱舞』(主演)で人気と実力を高める黒羽だが、ストレートプレイにがっつり本腰を入れ始めたのは昨年からという。インタビューは稽古開始から4日目。役作りに没頭中の生々しい本音を語ってくれた!

 

――『熱海殺人事件』の稽古場に、これまでの稽古場と違うものは感じますか?

黒羽 作品が作品だし、出演者は4人。稽古に入る前から“キツイだろうな”とは思っていました。稽古場には、その稽古場独特の空気感があるじゃないですか。僕だけちょっと遅れて入ったんで、それもあって。でも、ミカティ(味方)と(多和田)秀弥はもともと一緒にやってきた二人だし(『テニスの王子様』)、(文音)姉さんも気さくな人だからすんなり入れました。でも……。

――……でも?

黒羽 いやぁ、すごい作品でしょう!?稽古をすればするほど、本を紐解いていけばいくほど、これはすごいわと改めて思っています。やることもいっぱいあるし、遅れて入ったしで、みんなに稽古に付き合ってもらってる感じです。

 

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――つかさんや『熱海殺人事件』のことは知っていましたか?

黒羽 もちろんです!この世界でつかさんを知らない人はいないし、芸能に疎いうちの両親も知っていたんですから。出演が決まったと報告したらすごく喜んでくれて、「がんばれ!」って。そう、僕がこの世界に入って最初の頃のレッスンで、つかさんの本をやりました。戦争もので、死が関係していて、すごく重かった。まだ17歳くらいだから正直意味がわからなくて。ただ、『テニスの王子様』に出る前の、“舞台”や“表現”を一から教わったものだから、思い入れはありました。

――今回のオファーを受けた時の思いとは?

黒羽 いつかつかさんの作品を演じたいと思っていました。公言はしていないけど、事務所の人には言っていた。いままでとは違う、“演劇的”というのかな、そういうものをやりたいと思い、昨年の『歌姫』からちょっとずつ“演劇”に向いていくようになったんです。それでいきなり『熱海殺人事件』!でも、共演が同世代という点で少し気が楽です。若いのが僕だけポンッと入れられたとしたらもっとキツかったと思います。

――過去に錚々たる俳優陣が務めてきた名作を、新世代のメンバーでやる重圧感とは?

黒羽 プレッシャーですよ。でも、“新世代”に選ばれたことがすごく光栄で。同年代の俳優仲間に「熱海に出るんだ!?」と羨ましがられるんです。しかも、僕がやる大山を演じたいという人も結構多い。これは本当にやりがいがある役です。いろんな感情を抱える人間で、物語の終盤に見せ場があって、そういうのをみんなもやりたいんだろうなって思う。観客を涙に持っていける、インパクトあるポジションでもある。持っていけるかどうかは僕の芝居にかかっているけど……、いや、難しい!(大山)金太郎は。

――知れば知るほど、深みにハマっていきますね。

黒羽 そうですね。もう本当に、自分の内面をえぐられるというか。演じる大山金太郎の人間としての内面が、僕の中に“ぎゅーっ!”となって、やればやるほど……、病む(苦笑)。

――“病む”!?

黒羽  稽古をすればするほどめちゃくちゃ心身が疲れます。毎公演、人を殺さなきゃだし。

 

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――『熱海殺人事件』の犯人ですからね。見せ場ではありますが。

黒羽 そう。浜辺のシーンは回想ではあるけれど、山場です。なにがあったかの、すべてが明るみになる場面ですから。

――今回の脚本は、初期に近い戯曲ですか?

黒羽 ……かな? でも、ぶっ飛んでいますよ。岡村(俊一)さんならではの演出で。

――つかさんの懐刀とも言われる岡村さん“ならでは”の演出をどこに感じますか?

黒羽 今回が初めてですが、『熱海殺人事件』を一番愛していらっしゃるのがわかります。同世代の先輩たちも一度は通る演出家さんなので、ようやくそこには入れた!というのがうれしい。ただ、まだ、なにが飛んでくるかがわからないんです。物語をかき乱す人たちのシーンがあって……、アドリブというんですかね。本番でなんて話しかけられるかがわからない!準備できるような、できないようなで、もうドキドキ。とにかくいまは稽古がしたい! 前回のDVDを見た、原作も読んだ、出来得る限りのことはしました。なにせ稽古がしたい!というのがいま一番思っていることです。

――ほかのキャラクターや、本作に流れるものを、どんな風にとらえています?

黒羽 伝兵衛を筆頭に、水野も、熊野も、全員頭がおかしい(笑)。もしかしたら(大山)金太郎が一番ノーマルじゃない?というほど。稽古を見ていても、秀弥の熊田はぶっ飛んでますよ。変な人たちの中に放り込まれた感覚ですけど、やればやるほど、人間をえぐり、その根底には愛がある。4人おのおの愛の形が違う、ただ、表現の仕方が違う。一種不器用な人たちの集まりです。その中でも(大山)金太郎の愛は人殺しになるけど、いろいろ積み重なっての彼なんです。すごくやさしい心を持ち、まっすぐな男だと思う。そこが表現できればいいけれど、……ヤバイ!ヤバイ!早く“金太郎をやっていて楽しい!”と思うようになりたくて。

 

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――いまの“ヤバイ”を乗り越えての“新世代”の幕開けなのですね。新しい客層が増えそうですが、どんな風に見せたいですか?

黒羽 ディズニーランドより楽しませたい!つかさんの作品を終わらせることなく、世に出していくのが僕ら4人の使命です。初めて『熱海殺人事件』を知る人にも、いいねと思われるようにやらないと。そして、それが、僕らよりさらに若い世代に広がって、次の“新世代”になっていく。つか作品の世代のバトンタッチのチャンスにいまいる、という感じ。自分が受け渡していけるほどに、歴史を作りたいと思います!
メインのキメ写真は、金太郎の定位置というデスクの電話横に腰かけて。黒羽が演じる大山金太郎は熱海でいったいなにをしでかしたのか? 三流の犯人・金太郎は一流の犯人になれるのか?新世代の幕開けに立ち会ってほしい!

 

取材・文/丸古玲子

 

【プロフィール】
黒羽麻璃央
■クロバ マリオ 1993年7月6日生まれ、宮城県出身。第23回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト準グランプリ。ミュージカル『テニスの王子様2nd』(2012年〜2014年)で青学 菊丸英二役を演じ話題に。以後、タクフェス第4弾『歌姫』、映画『宇田川町で待っててよ。』 、ミュージカル『刀剣乱舞』などに出演。人気上昇中の若手俳優。

 

【公演情報】
『熱海殺人事件 NEW GENERATION』

作:つかこうへい
演出:岡村俊一
出演:味方良介 黒羽麻璃央 文音 多和田秀弥

日程・会場:2017/2/18(土)~3/6(月) 新宿 紀伊國屋ホール(東京)