・インタビューしちゃいました!! 2016-02-15 00:00

「8月の家族たち」 ケラリーノ・サンドロヴィッチ&麻実れい インタビュー

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傑作戯曲が日本初上演
“家族”を描いたブラックコメディー

 

 ピュリッツァー賞戯曲部門やトニー賞最優秀作品賞を受賞し、メリル・ストリープとジュリア・ロバーツという顔合わせで映画化もされた「8月の家族たち」が日本で初演される。現代アメリカ演劇、希代の劇作家トレーシー・レッツが自らの実体験を描いたと言われるこの物語には、アルコール中毒の父に薬物を過剰摂取している母、それぞれに問題を抱える三姉妹とその連れ合いや子どもといった、“家族”たちが登場する。血のつながりがあるだけに衝突するときは深く激しい感情が爆発し、深い愛憎が交錯していく。やりようによってシリアスにもコミカルにもできそうなこの作品に上演台本・演出として取り組むのは「群像劇、そして三姉妹ものが大好き」と公言するケラリーノ・サンドロヴィッチだ(以下、KERA)。

KERA「映画版は日本人にはコメディとしてはまったく伝わっていないように感じたけど、ブロードウェイの舞台映像は決めゼリフの連発で爆笑に次ぐ爆笑でした。日本版はその中間あたり、決して押しつけがましくはなく、でも笑える、ドライなブラックコメディーとして仕上げることができたら、かなり面白い舞台になるんじゃないかと思います」

 

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 物語の要とも言える母・バイオレットにキャスティングされたのは、「ずっとご一緒してみたかった」というKERAのラブコールに応えた麻実れい。これまで家族崩壊を描く物語で、精神を病んだり薬物依存になっていたりするような女性を演じる機会も多かったが「もちろん、それぞれ別の女として演じてきましたし、今回のバイオレットもまったく別の女をKERAさんのお力をお借りして作り上げたいなと思っています」と、初顔合わせのKERA演出に意欲を見せる。

麻実「バイオレットも本当はごく普通の女だと思うんですよ。ただ最愛の夫がほかの女性に目を向けてしまい、ある意味、潔癖症だったんじゃないんでしょうか。私みたいにある程度ルーズだったら『まあいいか』って思えることも『女として許せない』と、さらに溝を深くしてしまった気がするんですね」

 とバイオレットの心境を、早くも麻実なりに分析。

 

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 設定や展開を考えると確かにブラックコメディーになりそうな流れもあるが「でもこの作品の場合、わかりやすくギャグやジョークが飛び交うわけではないので、あくまでもその場の人間関係が生み出す空気感やちょっとしたズレのさじ加減が笑いにつながっていくんだと思う」と話すKERA。

KERA「感情過多な人間て、ハタから見るとトゥーマッチ過ぎて思わず笑ってしまいますよね。この芝居でのバイオレットもおそらくそう。本人たちは至って真剣なのが、余計おかしい。観客に対して、うまく『ここは笑っていいんですよ』と指示棒を出してあげられたら、きっとお客さんも楽に笑えるはず。だからこそ、今回は特に最初の場面が肝心なのかなと思っています」

 

 また、これはあくまで“家族”の物語であることも大きな鍵。麻実も「そういえば母と姉のちょっとした口ゲンカも、はたから見ていると面白かった」と自身の体験を振り返る。

麻実「家族というつながりには辛辣さという面もあって、そこが恐ろしくもありつつ、それでいておかしみにもつながると思うんですよ。どんなに愛で結ばれていてもそういうことが存在してしまうのが、家族の現実なんではないでしょうか」。

 

 「いろいろなことが現時点では未知なんですが、この危なっかしいところに飛び込んでいく感じもまた楽しみ」とKERAが語れば、「とてもすてきなものが先に待っているような気が、今からしています。素晴らしい戯曲なのでぜひ多くの方に観ていただきたいですね」と麻実。新たな切り口から広がっていく、深く見応えある家族の物語に期待は大いに高まる。

 

インタビュー・文/田中里津子
Photo/加藤夏子
構成/月刊ローソンチケット編集部 2月15日号より転載

 

【プロフィール】

ケラリーノ・サンドロヴィッチ 
■’63年、東京都出身。バンド有頂天、劇団健康を経て、’93年にナイロン100℃を旗揚げ。’99年第43回岸田國士戯曲賞、’15年第40回菊田一夫演劇賞、’16年第23回読売演劇大賞優秀演出家賞、最優秀作品賞(’15『グッドバイ』に対して)を受賞。

麻実れい
■アサミレイ ’50年、東京都出身。’70年に宝塚歌劇団入団、雪組のトップスターを務め、’85年に退団後は数多くの舞台に出演し演劇賞を多数受賞。’06年には紫綬褒章を受章している。

 

【公演情報】

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シアターコクーン・オンレパートリー+キューブ 2016
8月の家族たち August:Osage County

日程・会場:
2016/5/7[土]~29[日] 東京・Bunkamuraシアターコクーン
2016/6/2[木]~5[日] 大阪・森ノ宮ピロティホール

★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!