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・インタビューしちゃいました!! 2016-07-29 21:53

舞台『かもめ』 渡辺大知 インタビュー

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チェーホフの傑作「かもめ」が舞台化。
渡辺大知のインタビューが到着

 

 tpt公演「おそるべき親たち」(2010年)や「狂人なおもて往生をとぐ」(2015年)などで、気鋭の若手演出家として注目を集める熊林弘高。その熊林が今年挑むのが、チェーホフの傑作「かもめ」だ。登場人物の誰もが誰かに片想いをしているが報われない…という悲劇的かつ喜劇的なこの舞台に、満島ひかり、佐藤オリエ、田中圭、中嶋朋子ら熊林作品の常連に加え小林勝也ら実力派のベテラン勢が集結。その中で異彩を放つのが、バンド・黒猫チェルシーのフロントマンとして活躍するかたわら、俳優としても注目を集める渡辺大知だ。取材時にはまだ上演台本が出来上がっていなかったこともあり、一言ずつ言葉を選びながら「かもめ」について、そして音楽活動と俳優活動の両立について、丁寧に答えてくれた。

 この「かもめ」が2作目の舞台となるという渡辺が初舞台を踏んだのが、赤塚不二夫生誕80 周年「男子!レッツラゴン」(2015年)というコントオムニバス的作品。まず、そのギャップが目を引くが…。

渡辺 でも、だから舞台っておもしろいなと思いますね。作品ごとにこんなに違うことに挑戦できるんだというワクワクと、もちろん不安もありつつなんですが。前回は中村まことさんや荒川良々さんたちと全力でバカをやる“大真面目な部活”って感じだったんです。そのときの演出家の細川徹さんに、2作目が東京芸術劇場での「かもめ」になるんですって伝えたら、「じゃあ僕たちの現場でやったことは全て忘れて、初舞台のつもりでいってね」って言われました(笑)。

 

 そんな渡辺が「かもめ」に出演することになったきっかけは、熊林が演出した「狂人なおもて往生をとぐ」にあったという。

渡辺 熊林さんの去年演出されていた「狂人~」を観に行かせてもらって、すごく疑問が残るというか“なんでここがこうなったんだろう?”だとか、好奇心をかきたてられる作品だったんで、すごく興奮したんですよ。観たあとに楽屋に挨拶に行って、出演者の門脇麦さん(『まれ』で共演)経由で熊林さんに紹介してもらったりしたんですけど、そのときにオファーを考えていただいたらしくて。それが縁で僕が出た「男子!レッツラゴン」も見ていただいたようで…舞台、観に行くもんだなあと思いましたね。

 

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 登場人物の、時に生々しいセリフのやり取りや動き、セットや照明、音響のスタイリッシュさ。「狂人~」に限らず、熊林作品は演出が独特なことでも知られている。

渡辺 「狂人~」では音の使い方ももちろんなんですけど、視覚的にも自分にはあまりなじみのない空間だなあという印象があって。観客の日常に近い空間を見せるのであれば、誰でもその世界にすっと入り込めたりするんでしょうけど、それを無視しているというわけじゃなく、はなからそういう日常が存在しないような感じがあったんですよね。セットしかり、役者の佇まいしかり、セリフしかりに。そういう、一秒先がどうなるか読めないような所在のなさに、観る人もドキドキしたりするのかなあと思うんですけど。あと「狂人~」のビジュアル面でいうと、幾何学的なイメージがおもしろいと思いました。三角形のステージに丸い照明が当たってたり、セットの柱時計が四角と丸の組み合わせだなとか…例えば僕らの普段の生活が、全てそういう幾何学的なものに囲まれてるとしたら、安心できない感じというか、不穏な空気が漂うわけじゃないですか。それがお客さんの好奇心をくすぐような感じがしたんですよね。それが熊林さんの演出の魅力の一つで、おそらくまだまだこんなもんじゃないんだろうなという感じがしたので、次回作品も観たい!って思ったんですけど、それにまさか自分が出ることになるとは思わなかったですね。

 

 そんな次回作「かもめ」には、若い女優のニーナを演じる満島ひかりを筆頭に、熊林作品の常連キャストが多く出演する。

渡辺 ドキドキしてますね。実は原作もまだじっくりとは読んでないんです。めちゃくちゃ有名な作品という認識はあって、だからこそ手をつけるのが怖かったってやつで…。でも自分は安心できるところよりも、緊張感のあるところのほうが合ってると思っているんで、これはありがたいドキドキなんですよ。キャストの中では坂口健太郎さんが初舞台らしくて、僕とは一歳違いで年齢も近いんで親近感はありますね。それでも本当にたくさんの映画やドラマに出演されてる方なんで、僕もいっぱい教えてもらいたいというか、彼の演技を観て勉強したいというのはあります。

 

 これまでにNTTドコモのCMでコンビを組んだ渡辺謙ら、そうそうたる面々と共演。慣れない現場にも飄々と対峙しているように見えるが、今作についてはどんな気持ちを抱いているのだろうか。

渡辺 現場に入る前に緊張はするんですけど、始まっちゃうと忘れちゃうみたいなとこはありますね。音楽をやってきて、バンドでの初ライブからそうだったんですよ。開演前は震えてたんですけど、ステージに上がっちゃったら、あんまりかっこ悪いとこ見せてもしょうがないみたいなとこ、あるじゃないですか。そしたらもう、楽しむしかないかなっていう気持ちがあって。だからステージに立つときは、不安より楽しみたいって気持ちのほうが大きいです。どちらかっていうと“稽古場ってどういう感じでいたらいいのかわかんないな”とか、そういうところに身構えちゃってる感じがあるんですよね。

 

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 昨年の初舞台のほかバンドで数多くのライブを経験している渡辺に、ステージに向き合う際のこだわりについて聞いてみた。

渡辺 舞台に関してはまだ僕が語れるようなことは何もないんですけど、バンドでお客さんを目の前に自分のパフォーマンスをするときには“そこに漂っている空気をどれだけ震わせられるかが勝負”みたいなとこがあって、ただ好きな歌を歌ってるんじゃなく、空気を震わせたいって気持ちでやってるんですよね。空気を震わせることでそこに笑っちゃったり、泣いちゃったりしたくなるようないろんな感情を生みたい、そういう気持ちがあって。だからステージって、そういうことのできる場所なのかなあって思っているんですよね。実際に「かもめ」をやったらまったく違った!みたいなことになるかも知れないですけど(笑)、今はそんな風に思ってます。

 

 さて「かもめ」で渡辺が演じる教員のメドヴェジェンコは別荘管理人の娘・マーシャ(中嶋朋子)に思いを寄せるが、マーシャは劇作家志望の青年・トレープレフ(坂口健太郎)に恋しており、冷たくあしらわれ続ける。その後トレープレフを諦めたマーシャと結婚するのだが、ストーリーを通して不遇な立ち位置にあるという役柄だ。

渡辺 今回の「かもめ」でのメドヴェジェンコがどういう人物として描かれるのかはまだ言えないところがあるんですけど、でも、愛せるなあって思いますね。あらすじを読んだりした感想でいうと、すごく一途で純粋であるがゆえに報われなかった人、という風に思ってます。自分が演じる中で作っていく部分もあると思うので、このメドヴェジェンコというキャラクターが魅力的な人物になったらいいなって。チェーホフの「かもめ」といえば古典的名作ですし、メドヴェジェンコって日本人にはなじみのない…なんなら一つ目の妖怪みたいに聞こえる名前だったりするから(笑)、僕自身も距離を感じそうになったんですけど、日本人の僕が2016年の今やるわけですから。知らない国の知らない人をやるっていう感じではなく、観る人が“この人のこと知ってるかも?”って思えるように演じられたらと思いますね。

 

 この、さまざまな作品で役を演じる上でのアプローチには、共通するものがあるという。

渡辺 この世界にその役柄みたいな人がいるかいないかっていうのは、わりとどうでもよくて。“いたらいいな”とか“本当はいないかもしれないけど、いたら友達になりたい”って思えるような感じにできたらと思ってます。それがどれだけおかしな役柄だとしても、いたら出会いたいなって思えるほうが夢というか、ロマンがあるのかなって。もちろん作品によるかもしれないですけど。

 

 フロントマンを務める黒猫チェルシーでリリースした最新シングル「青のララバイ」は、大人気アニメ「NARUTO–ナルト- 疾風伝」のエンディング曲としてオンエア。ドラマ「毒島ゆり子のせきらら日記」ではヒロイン・ゆり子の恋人の一人である気のいいバンドマン“みーちゃん”を演じるなど、その人気はさらに広がりを見せている。

渡辺 僕が言うのもおこがましいですけど、ジャンルは違えど自分が好きだなと思うものたちがつながったらいいのに、って思ってるところがあって。いろんなものがどんどんつながって、枠にはまらないものが生まれたらいいのにって。例えば音楽をやってる人って、ジャンルや活動の仕方だとかでこの線からこっちはよくて、この線からこっちはだめ、みたいな線を引きたがる人がたくさんいて…音楽はもっと広がれるものだし、バンドっていうスタイルの中にももっといろんな“おもしろ”をぶち込んでいきたいなっていう風に思っているんですよね。その中に演劇から生まれた何かが入り込んでも絶対おもしろいし、逆に演劇や映像の世界に音楽から生まれた何かが入り込むのもアリなんじゃないかって。あと単純に自分が好きなものに我慢せずにが飛び込んでいきたいっていう気持ちは常にあります。無理なものは無理でいいんですけど、今は無理かわからないからとりあえず飛び込みたい!って気持ちでやらせてもらってますね。

 

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 渡辺はバンドのインディーズデビューと前後して俳優活動もスタートさせているが、歌うことと演じることが彼の中で密接に結びついていて、その2つを並行することが双方によりよい効果を生み出しているようだ。

渡辺 僕自身がそのどちらもないとダメというか、どちらか一本に絞るっていうのが無理かなって(笑)。悩んだ時期もあったんですけど、決めなくっていいやって今は思ってます。二足のわらじを、自分の中でナシにしていくよりもアリにしていったほうがいいし、今は楽しくてしょうがないから、だったらやったほうがいいなと思って。もちろん音楽やってるからこそ何かを演技に反映できたり逆もあったりするとは思うんですけどそれ以前に、並行してやっていて自分の中でちょうどいいというか、バランスが取れてる感じはありますね。「かもめ」の本番までの間にバンドのツアーやレコーディングもあるんですけど、やりたいと思ったことを諦めるんじゃなく、どうやったらそれがやれるのかを考えながら全力で取り組んでいきたいと思ってます。

 

 「かもめ」では東京のほか、宮崎、松本、札幌、滋賀、相模原、豊橋と全国の各地をツアーで回る。「舞台の地方公演って初めてなんですよ」と、嬉しそうな表情を見せた。

渡辺 バンドのツアーとはまた違うと思うんですけど、狭い島国なのにご飯だったり人柄だったりも地域でずいぶん色が違いますから、そういった土地柄が感じられるのが、また楽しいなって思うんですよね。バンドで47都道府県のほとんどを回っていて、まだ行ったことがないのが大分と宮崎なんですよ。今回初めて宮崎に行けるので、妙な達成感みたいなものがありますね(笑)。ほかもバンドでもしょっちゅう行けるような場所じゃなかったりするので、僕自身も楽しみにしてますし、お客さんにもドキドキしながら待っていてもらいたいです。

 

取材・文/古知屋ジュン

 

【公演情報】

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© KEI OGATA

かもめ

誰もが恋してむくわれない…
普通の人々のドラマを描くチェーホフの傑作「かもめ」に、気鋭の若手演出家・熊林弘高が豪華演技派キャストと挑む。

作:アントン・チェーホフ
演出:熊林弘高

出演:満島ひかり、田中 圭、坂口健太郎、渡辺大知、あめくみちこ、山路和弘、渡辺 哲、小林勝也、中嶋朋子、佐藤オリエ

日程・会場:
2016/10/29(土)~11/13(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
2016/11/16(水) 宮崎・メディキット県民文化センター 演劇ホール
2016/11/19(土)・20(日) 松本・まつもと市民芸術館 主ホール
2016/11/23(水・祝) 札幌市教育文化会館 大ホール
2016/11/26(土)・27(日) 滋賀・びわ湖ホール
2016/11/29(火)・30(水) 神奈川・杜のホールはしもと
2016/12/2(金)~4(日) 豊橋・穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール

★東京・神奈川公演 7/30(土)10:00より一般発売開始!