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・インタビューしちゃいました!! 2016-01-15 19:52

『魔術』 内藤裕敬(作・演出)&萩原聖人(出演)インタビュー

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時代を常に冷静なまなざしで見つめる内藤裕敬の書き下ろし新作に、中山美穂、萩原聖人、橋本淳、勝村政信という鮮烈で強力なキャストが集結。
内藤裕敬と萩原聖人の対談をお届けします!

 

 深夜のおでん屋にどこからともなく集まった、3人の男と1人の女。そんなシチュエーションのもとで繰り広げられる、近くて遠い他人同士の会話劇「魔術」。4人の中で唯一の女性を演じるのは、今回が初舞台となる中山美穂。ともすればこの“初舞台”というポイントに注目が集まりがちだが、この舞台の仕掛け人である内藤裕敬(南河内万歳一座)、そして内藤からの信頼が厚く過去の演出作品にも出演してきた萩原聖人に、作品のバックグラウンドなどについてじっくり話を聞いてみた。

 

――これまでに「調教師」(2005年)、「4×4」(2008年)、「すうねるところ」(2012年)という3作品でコラボされているお二人ですが、お互いの印象は?

内藤 萩原くんは、ぱっと見は“不機嫌な少年”なんです。ちょっととんがってるところがあるんだけど、それが芝居で共同作業をやっていく上では“いいものを作ろう”という方向に働くので、パートナーとしてすごくいい現場が作れる人、という印象ですね。

萩原 もう少年じゃないですよ(笑)。僕が思う内藤さんは…ご機嫌なおじさん(笑)。最初に組んだ作品(『調教師』)は内藤さんの書かれたものではなかったんですけど、あまりにも難解すぎたのと自分自身も勉強不足な部分が大きくて、悩みの多い作品だったんです。そのときに「俺にもわかんないとこがあるから、一緒に考えようぜ?」って言いながら、いろんなことを丁寧に僕に教えてくれたんですね。その感覚がすごく心地よくて、忘れられなかった。俳優として演出してもらって、いろんなアドバイスをもらうことがこんなに自分の栄養になる人はいない、というのが最初のお仕事の感想でした。ただ僕らの目に見えるところでは、つねにご機嫌で。本当は細かいこともいろいろ気にされているのかもしれないですけど、周囲には一切感じさせないような懐の広さがある方です。

内藤 「調教師」の前からずっと、「一緒に何かやりたいね」という話はしてたんですよ。クラシック音楽と演劇のコラボレーションだった「4×4」、薬師丸ひろこさん主演の「すうねるところ」と、どれも濃密に組んでは来てますね。

萩原 「4×4」が内藤さんの書き下ろしだったんですけど、あくまでクラシックの音楽を立体化するために僕らの肉体を使うというような作品だったので、これまたすごく難解だったんですよ(笑)。「内藤さん、これ本当に自分でわかって書いてます?」ってツッコんだりしたくらい。でもそういうやり取りがしんどいんですけど辛くはなくて、作品をわかりたいという気持ちでいっぱいで。そのときの「あれでよかったのかな?」という感覚が、自分の中で引っかかり続けていたんだと思うんです。だから内藤さんの書いた言葉ともっとがっつり向き合いたくて「また何かやりましょうよ!」ってずっとお願いしていたんですよ。

 

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内藤裕敬

 

――念願のコラボになったわけですね。今回の「魔術」は不思議なタイトルですが、どうしてこのネーミングに…?

内藤 自分の今置かれている現実を見て「何か妙な魔術にかかってるんじゃないか、俺?」って思うような、無意識のうちに何かに絡め込まれてしまっていることって、往々にしてあるじゃないですか? …まあ元々は芥川(龍之介)の短編で『魔術』という見事な作品があって、これに匹敵する作品を書いてみたい、と思ったのが由来なんですが。

萩原 決して中山美穂さんが魔術を使うわけではありません!

 

――“魔法”とも似て非なるもので、ずいぶんニュアンスが違いますね。

内藤 魔法には呪文だとかきっかけがあって“かかる瞬間”があると思うんですよ。魔術っていうのは、気がついたらかけられているもの、じゃないですかね? いつのまにか。

 

――タイトルも不思議ですが、この4人のキャストの組み合わせと、舞台がおでん屋というのも、すごく不思議な気がするんですよ。“中山美穂のいるおでん屋”って。

内藤 屋台で一杯やってる中山美穂さんっていう、この画がいいでしょう?

萩原 (笑)。内藤さんくらいでしょ、そんなこと考え付くのは。

内藤 この作品のコンセプトが“距離と密度を遊ぶ”というものなんですよ。例えば満員電車には人がいっぱい乗っていて密度は高いのに、個々は他人との関係を拒絶した状態でいるわけじゃないですか。距離は近くて密度が高いんだけれども、その人間同士の関係性は非常に遠い。そういうバランスの悪さが、都会の中にはありますよね。普通の居酒屋だって横のテーブルの人のことなんか気にならないけど、おでん屋っていうのは話が別で。店のおやじはだいたい話しかけてくるし、隣に座った他人とともすれば会話が生まれたりして、知らない人同士で同じ鍋のおでんをつつく。この距離と密度って、よく考えると奇跡的なものでしょう? そういう意味で、おでん屋の屋台って距離と密度が現実とは離れたあいまいなものな気もするし、非常に劇的な空間だなって思うんですよ。

 

――今回の4人のキャストは萩原さんと中山さんは同世代ですけど、橋本淳さんが20代、勝村政信さんが50代と世代が離れてますよね。そういう世代間のギャップみたいなものも、ストーリー中で浮き彫りになったりするんでしょうか?

内藤 人と人との関係性の話なので、結果的にそうなるでしょうね。50代の僕自身が橋本くんの世代とは相当距離があるってリアルに思ってるから、橋本くんのほうはもっとそう感じるんじゃないかな。その距離感が、そのまま舞台で見える形になるとは思います。

 

――SNSを使いこなす20代、人によってはそういうものと距離のある50代、そしてその中間の40代という組み合わせが非常にユニークに映ります。

内藤 SNSは誰かの書いた言葉がストレートに目に見えるものなわけですけど、僕なんて、どっちかっていうと手紙世代ですからね。何日かかかって相手から着いた手紙が、さらに封筒の中に入っていて“どんな言葉が書かれてるんだろう?”って、封を開けるのにワクワクしたり、逆に怖かったりして。なんとなく、どんな内容かをもったいぶられるというか。そういう“タメ”が、SNSにはないじゃないですか。だから作品中で人間関係を描くにしても、そういうスピード感の違いは出てくるんじゃないのかなあ。

 

――中山さんは内藤さん、キャストのお三方とも今回の舞台で初顔合わせになるそうですが、初対面の印象はいかがでしたか?

内藤 猫に例えるなら、彼女は都会の野良猫っていう感じがしますね。物事に対する嗅覚が鋭いというか。あと、都会っていうのは生き物にとって危険が多い場所じゃないですか。車もたくさん走っているし、人も多い。そんな中をタイトにすり抜けるようなシャープさを持っている女性、という印象を持ちました。

 

――“猫っぽい”というイメージはあると思うんですが、飼い猫ではない…?

内藤 いやあ、飼い猫ではないよね。あの感じは、飼えないと思います。

 

――名言ですね(笑)。お互いに芸歴が長くて同世代の萩原さんと中山さんが初共演というのも意外ですが、萩原さんは初対面でどんな会話をされたんですか?

萩原 映像と舞台はいろいろと違いがあって大変だとは思うんですが、「大丈夫です、内藤さんがいるんで!」って言っておきました。

 

――(笑)。中山さんの、30年のキャリアがありつつの初舞台というのは、考えるとすごいことですよね。

内藤 30年やってて、初舞台で、周囲の人とも初顔合わせ。舞台はどうやって作っていくのか、他の役者はどんな風に作業をするのか、というのをこれから目の当たりにされるわけですからね。

萩原 逆に言うとこんなに楽しいことってないんじゃないかな? こんなに初めて尽くしのことを知らない人たちとやるっていうのは、例えれば海外でやったことのない仕事に飛び込むようなものじゃないですか。僕ら3人はそれぞれ舞台に関してはキャリアがありますけど、そのキャリアが邪魔をする瞬間っていうのもたくさんあるんです。それがない分、実は彼女はすごく強いんじゃないかなと思うし、もしかしたら僕らのほうが教えてもらうことが多いんじゃないかとも思います。

内藤 舞台になんか慣れなくてもいいと思うんですよ、中山さんは。思う存分やって欲しいですね。

 

――先ほど出てきたおでん屋という設定もそうですが、演劇ファンにとっては下北沢の本多劇場に中山美穂さんが出るっていうのが、そもそも意外だと思うんですよ。

萩原 それが逆によくないですか? 世間的には中山美穂さんという女優さんには、ある“イメージ”があると思うんです。今回は本多劇場で、おそらくおでんの屋台しかないセットの中で4人でやるストレートプレイになると思うんですが…役者の肉体や感情と、お客さんとの距離感で作る、演劇本来の魅力をすごく感じられるようなものになるんじゃないかって思うんですよ。多分、内藤さんは派手なことは一切しないと思いますし…いや、プロジェクションマッピングなんかをがんがん使ってくるかもわかりませんけど(笑)。内藤さんの作る舞台ってどこか原点に返るようなイメージがあって、演出家との距離感の近さも含めてきっと一本やると精神的にボロボロになるだろうなとも思うんですよ。でも、舞台ってそういうものというか、余力なんか残ってたらいけないと思うし、そういう特別な体験が全員でできたらいいなとは思います。

 

――萩原さんは舞台や映像と幅広くお仕事をされていて、NHK「コズミックフロント☆NEXT」など多くの番組でナレーションもやっていらっしゃいますが、舞台は他のお仕事とはまた感覚が違いますか?

萩原 作業として肉体を使うか、声だけを使うのかといった違いで、どの仕事も中身は一緒だと思って、区別はしてないつもりなんです。ただ、先日「グッドバイ」(ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出)が終わったばかりなんですけど、台詞を覚える作業に始まって千秋楽にいたるまでの時間に経験する、たくさんの“ちょっとしたこと”がやっぱり特別だなって思います。今は自分の中でも舞台欲がすごくあるというか、舞台に飢えてますね。舞台をやる度に、お客さんが喜んでくれていても自分の中で100点ということはなくて、常に何か持ち続けてなきゃいけないものがあるんですよ。多分この「魔術」でもそうで、内藤さんと本気でぶつかるんですけど、解消されないものはきっと残って、それがいずれ役者としての栄養になっていくのかなって思うんです。だから特別か特別じゃないかで言えばやっぱり特別、ですね(笑)。

 

――内藤さん率いる南河内万歳一座にしてもそうですが、この「魔術」では全国各地での公演も予定されてますね。

内藤 東京だとか大都市では、劇場で待っていればお客さんが見に来てくれる。でも演劇って、こちらから会いに行くという作業も大事なんですよ。普通に東京や大阪だけで芝居やってたら絶対に出会えない方々に、舞台の上からですけど出会える可能性があるわけなので。待っているのではなく能動的に会いに行くという作業を、僕や俳優だったり、作り手もやるべきだなと思っているんですけどね。

萩原 そんなこと言って、全国のうまいもの食べたいだけですよね?(笑)

内藤 そうだなあ、全国のみなさんに会いにも行いきたいんですけど、なるべく海があって海産物がおいしいところがよくて、温泉なんかもあったらなお会いに行きたいですね(笑)。

萩原 冗談は抜きにしても、地方の方が生で中山さんを見る機会っていうのは、歌手としてのコンサートは別にして今じゃなかなかないでしょうしね。今回は、地方の方にこそ見てもらいたいと思っているんですよ。さっきも言ったように、内藤さんは奇をてらうようなことはきっとしないと思うんです。でも「魔術」は、まだ具体的なイメージは湧かないんですけど、今までに見たことのないようなものになる気がしていて。

内藤 自分で言うのもなんですけど、相当いいものになるとは思ってますよ。全国に、こちらから会いにいきます!ので、ぜひ劇場に会いに来てください。

 

取材・文 古知屋ジュン

 

【プロフィール】

内藤裕敬
■ナイトウ ヒロノリ ’59年、栃木県出身。’80年に劇団・南河内万歳一座を旗揚げ。劇団作品のほか、様々なキャストにより再演されている即興劇「青木さん家の奥さん」(’90年~、作・演出)、KARA COMPLEX「調教師」(’05年、演出)、木皿泉作の「すうねるところ」(’12年、演出)などでも活躍している。

萩原聖人
■ハギワラ マサト ’71年、神奈川県出身。’87年にテレビ初出演以降、ドラマや映画、舞台など幅広いジャンルの作品に出演。最近の主な作品に、「鬼と呼ばれた男~松永安左エ門 」(NHK)、「しんがり~山一証券最後の聖戦」 」(WOWOW)、舞台「ART」(’13年)「パン屋文六の思案~続・岸田国士一幕劇コレクション~」(’15年)などがある。

 

【公演情報】

『魔術』

作・演出:内藤裕敬
出演:中山美穂、萩原聖人、橋本 淳、勝村政信

日程・会場:
2016/3/27[日]~4/10[日] 東京・下北沢 本多劇場
2016/4/13[水]        愛知・刈谷市総合文化センター大ホール
2016/4/15[金]~4/17[日] 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
2016/4/22[金]        愛媛・松山市総合コミュニティセンター キャメリアホール
2016/4/24[日]        高知・高知市文化プラザかるぽーと 大ホール
2016/4/28[木]        宮城・仙台電力ホール
2016/4/30[土]        北海道・道新ホール

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