・インタビューしちゃいました!! 2016-10-04 12:09

ミュージカル「ミス・サイゴン」
ダイアモンド☆ユカイ インタビュー

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何度も惹きつけられる魔力を持つサイゴンの悲恋

 

1992年の日本初演から今年で25年目を迎えた日本版「ミス・サイゴン」。ベトナム戦争時代に、サイゴンのキャバレーで働くベトナム人少女・キムとアメリカ兵として派遣されていたクリスの悲恋が描かれた不朽の名作だ。今回、新たなエンジニア役としてダイアモンド☆ユカイを迎えた2016年バージョンの上演が迫っている。ロックンローラーが突如としてミュージカル界へ。なぜ今、「ミス・サイゴン」に挑むのか。ダイアモンド☆ユカイの胸中に迫った。


――今回、「ミス・サイゴン」のオーディションに挑んだきっかけは?

元々ミュージカルには純粋な興味があって、いろいろな作品を観に行ってた。でも、俺はロックンローラ―だから、仕事として観るというより好きだから観るっていう気持ちで、劇場に足を運んでいたけど、やっぱり曲作りのヒントはもらっていたよ(笑)。そんな中で「ミス・サイゴン」を観たのは2年前。まず劇中の音楽がいいよね。メロディが美しい。俺はベトナム戦争の時代のロックに影響を受けてるから、時代的なものにもシンパシーがある。そして、その中に俺によく似たヤツが、エンジニアだとかいって出てくる(笑)。真っ赤な衣裳にせよ立ち居振る舞いにせよ、まさに若き日のダイアモンド☆ユカイそのまんまだと感じてさ。俺たちのバンドも、アメリカを目指してて「全米ナンバーワンになってやる」って息巻いてたから、すごく重なったんだよ。でも、一番の衝撃は「The American Dream」を聞いた瞬間だった。

 

――エンジニアの歌う「The American Dream」。作品を代表する名曲ですものね。

ロックシンガーとして30年、何百曲も歌ってきた中で、一番の恋人だと思えるくらい、ひと目ぼれだったね。自分で作った曲を含めて、歌い手として恋人だと表現できるような楽曲と出逢えることは本当に数少ない。俺の中のシンガーとしての魂が、まっすぐ「The American Dream」に向かっていってさ。まさに俺にとっては永遠の恋人、妻にしたい相手、生涯の伴侶にしたい楽曲に思えた(笑)。必ずこの曲をステージで歌ってやると思ったほどだったから。シェーンベルクが書いたこの楽曲を、俺はもしかしたら前世で歌っていたんじゃないか…本気でそう思えたほど響いたね。

 

――「The American Dream」へのひと目ぼれから、一気にオーディションまで?

オーディションがあると聞いたとき、もし受かれば“本物”になれるって思ったんだ。ミュージカルだから演技もしなくちゃいけないし、ダンスだってある。だけど、ロックとかミュージカルとか、そういう垣根なんて飛び越えるほど「The American Dream」を歌いたかった。ここでこの曲にプロポーズしないと、一生歌えないかもしれない。そう思ったら、いてもたってもいられなかったよ。共演してくださるミュージカルスターの皆さんからすると、とんでもないと思われる動機かもしれないね。でも、俺は本気だったんだ。皆に話を聞くと、キム役の笹本玲奈さんほか、共演者の思い入れが強い作品だとわかった。何回も出演しているベテランでさえ、それぞれこの作品には何かの魔力を感じ続けていて、引き寄せられているんだよな。何度も演じたい、何度も観たい、そう思わせる魔力があるよ。

 

――実際にオーディションに受かって、稽古も続いているわけですが、手ごたえはいかがですか?

見るのとやるのとでは大違いだね(笑)。「The American Dream」を歌うことについては負ける気はしないけど、その前にエンジニアという役を演じきらなくちゃいけない。だから四苦八苦してるよ。演技やダンスを全部ビデオで録画して、見直して、落ち込んでは闘志を燃やしてまた挑むって感じかな。エンジニアは、市村(正親)さんが25年の長きにわたって大事に演じ続けてきた役。もちろん市村さんみたいなエンジニアにはならないんだけど、俺には俺のエンジニア像が必ず見つかると思ってる。「ユカイちゃん、雰囲気がいいよね」という市村さんの言葉を信じてるよ(笑)。

 

――「ミス・サイゴン」への出演で、ダイアモンド☆ユカイというアーティストにどんな変化がありそうですか?

「ミス・サイゴン」に挑戦している自分を見て、「なんで俺こんなに頑張ってるんだろうな」と思うこともあるんだ。若いころに調子こいて、成り上がりじゃなくて成り下がりになったこともある。50歳になった今も鏡で自分の演技やダンスを見てはイメージと違ってへこんでる。恥だってたくさんかいてる。それでも、挑戦している自分が楽しくなってくるんだよね。本当の「Dream」って、夢を叶えることじゃなくて、夢に向かっているプロセスのことを言うんじゃないかなと思いはじめたんだ。「もっとやってやろう、あの場所へ行ってやろう」って、そう思える気持ち自体が夢なんじゃないか。エンジニアって役がまさしくそれを体現してる。何歳になったって、夢に向かっていい。夢に向かう自分ってバカでいい。今回、それを見てほしいな。だから俺は、この夢への気持ち…言うなれば、俺が磨き上げた「Diamond’s Dream」を、この舞台で思いっきりブチかましてやるよ。よろしくな!

 

インタビュー・文/新田哲嗣

 

◆プロフィール
ダイアモンド☆ユカイ
1986年、ロックバンドRED WARRIORSのボーカリストとしてデビュー。ロックアーティストとして活躍しながら、87年には映画「TOKYO-POP」にてハリウッドデビュー。以降、音楽活動を中心にタレント、俳優と幅広く活動中。

 

【公演情報】
ミュージカル「ミス・サイゴン」

日程・会場:
2016/10/15(土)~ 11/23(水・祝) 帝国劇場(東京)
2016/12/10(土)・11(日) 岩手県民会館 大ホール(岩手)
2016/12/17(土)・18(日) 鹿児島市民文化ホール第一(鹿児島)
2016/12/23(金・祝)~ 25(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール(福岡)
2016/12/30(金)~ 2017/1/15(日) 梅田芸術劇場メインホール(大阪)
2017/1/19(木)~ 1/22(日) 愛知県芸術劇場 大ホール(愛知)