・インタビューしちゃいました!! 2015-10-21 12:01

ナイロン100℃ 43rd SESSION『消失』 犬山イヌコ&三宅弘城 インタビュー

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 ナイロン100℃の最新公演『消失』は、初演が2004~05年と約10年前。しかしながら、ナイロン100℃の数多の作品の中でも非常に評価の高い、ある意味伝説的作品と言えるだろう。

 その作品が今回、初演と全く同じキャストで蘇ることとなった。大きな時代の転換を迎えたこの10年を経て、再び蘇る『消失』に今、何を思うのか? ナイロン100℃劇団員でもある、犬山イヌコと三宅弘城にインタビュー。

 

 10年ぶりの再演、そしてキャストは初演と全く同じ。劇団員から大倉孝二、みのすけ、犬山イヌコ、三宅弘城、松永玲子、そして客演の八嶋智人。初演時に非常に好評を博した作品だけに、劇団員としては満を持しての再演という感はやはりあるのかしらと思いきや……2人とも、少し微妙な表情。

犬山 「もともと過去の作品は結構忘れるタイプなんだけど、これに関してはもうすっかり忘れてて……(笑)」

三宅 「僕もそんな感じ(笑)。稽古場が寒くて、ストーブでせんべい温めて食べてたとか、そんな些細なことばっかり思い出すの。あと旅公演でメンバーがなんか買ってたとか」

犬山 「でもほんと、なんでこんな忘れてるんだろう」

三宅 「『消失』ですよ、まさに(笑)」

 

 綺麗なオチ? がついたところで、2人とも「だからこそ、本当に“新しいもの”として挑むことができる」と声を揃える。

三宅 「ナイロンの作品って、その時の年齢や精神状態などで、結構大きく左右される繊細なものだったりすると思うんです。で、今回初演からほぼ11年経ってるんですよねぇ。だから、再演って聞くとまず『……そうかぁ』って」

犬山 「そうかぁ、だよね(笑)。でも、やるなら面白くしたいなとは思うし、ここまで間が空くともはや新作くらいの勢いで、新鮮な気持ちでできるよね」

三宅 「本当に。やった本人も断片的にしか覚えてなかったりするから(笑)」

犬山 「お客さんもきっと、初演を観てない人の方がむしろ多いのかもしれないし」

 

 自分たち自身がハードルとなってしまう“再演”。彼らが越えなければいけない壁は、私たちが思う以上に高いようだ。

三宅 「でも、再演だと初演と違って脚本が既にあるから(笑)演出がもっと骨太なもの、濃密なものになったりするこことがあるんですよね。『ノーアート・ノーライフ』とかもそうだった記憶があるんです。」

犬山 「改めて演出を掘り下げていくことができるよね」

三宅 「だから稽古に入ると、やっぱり面白いものになるんですよ」

 

 劇団公演とは言え出演者は非常にミニマム。かつ、客演に八嶋智人を迎えるというなかなか見られないキャスト陣にも注目だ。

犬山 「初演の時は……八嶋くんはみのすけの面倒を見る係になってたよね。劇団内のみのすけって本当にツッコミどころが満載で、八嶋くんがまた面倒見がいいから……」

三宅 「どうしてナイロンの人たちはみのすけさんに怒らないんだ!って怒ってた」

犬山 「八嶋智人がキレるってなかなかないよ!? でも真面目な話、当時、八嶋くんが出てるから愉快なお芝居かと思って観にくると、まったく違うっていう(笑)そういう点での意外さはあったんじゃないかな」

三宅 「KERAさんはもともと、その人の定番な面とは違う面を見せたがるから。客演に呼ぶのもそういう狙いがあるし。この舞台ではテレビとかのパブリックイメージとは違う八嶋くんだよね」

 

 作品の舞台となるのは、近未来らしき荒廃した世界。ディストピアと化した世界は、初演当時は舞台上での“フィクション”だった。しかし、今はどうだろう? 10年あまり経ち、もしかしたらその世界観により現実世界の方が歩み寄っているのではないか……そんな気にすらさせられる。

犬山 「時代や場所の設定とか、『どこ』とは特定されない感じだし、KERAさんの作品はそういうの多いけど……あの世界観は当時よりも、今観た方がぞっとするかもしれないね」

三宅 「確かに、それはあるかもね」

犬山 「あと、わしは一人っ子なんですよ。だから兄弟に対する憧れがすごくあって。この作品は兄弟愛ゆえの悲劇、という部分もあるから、そういう意味でも怖い物語だな、とも思う」

三宅 「表と裏がすごく大きい人達が出てくるんですよね。でも誰もがそういう部分を多少なりとも抱えてると思うんですけど。そこの意味での怖さもある作品」

 

 ストーリーの核はあくまでも、そんなディストピア世界で繰り広げる兄弟と、周囲の人々の“人間”が繰り広げる物語。だからこそラストまで観た時にわかるタイトルの意味は、重く、そして切ない。KERAが描き出す“善意”が描き出す悲喜劇の傑作。この貴重なチャンスに、しっかりと心に焼き付けておきたい。

 

取材・文:川口有紀

 

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【公演情報】

ナイロン100℃ 43rd SESSION『消失』

日程・会場:2015/12/5[土]~12/27[日] 東京・下北沢 本多劇場

 

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