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・連載―イヌの日 2016-07-22 21:43

<第3回>ゴジゲン目次の「イヌの日」DXインデックス

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今回から「キャスト紹介」ということで、いつもと少し趣向を変え、今回の出演者の皆様をご紹介していきたいと思う。

 

◆尾上寛之

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忘れられないTVドラマがある。
フジテレビ開局40周年記念作品として放送された「少年H」である。
当時中2だった私は、主人公の少年の目を通して語られた激動の時代の大河ロマンに胸を熱くし、「さまた~~~い」と番組のテーマソングであった「Summertime」をビリー・ホリデイばりに熱唱したものである。
何を隠そう、この物語の主人公・肇の青年期を演じていたのが彼である。
中井貴一、桃井かおり、陣内孝則…そうそうたる俳優陣の中にいながら、観る人の心を突き刺すようなまっすぐな演技は今も心に焼き付いている。

 

いざお会いすると人懐っこい笑顔が印象的な、気さくな大阪のあんちゃんであった。
バリバリの関西弁にも驚いたのだが、何より私は普段の彼の細やかな心遣いに舌を巻いた。
稽古場では敏感に空気を察して良いムードを作り出し、
飲み会でつまらなそうにしているキャストがいれば優しく声を掛け、
現場に疲れたスタッフがいれば、行って労を労ってやり、
南に死にそうな人あれば、行って怖がらなくてもいいと言う、
賢治も顔負けな好人物であった。

 

そんな尾上君と同じ舞台に立つことを当時の私が知ったらさぞ驚くことだろう。

 

「どうだボウズ、尾上くんと共演するんだぞ。すごいだろう」

 

すると中2の私は一時はともに喜んでくれたのだが、間もなくふさぎ込み目に涙を浮かべながらこう訴えたという。

 

「下り坂が長過ぎるよ…」

 

ぐうの音も出なかった。
これから待ち受ける彼の未来を思うと途端に胃が痛くなってきた。
あまりに不憫だったので、当時好きだったシホちゃんと2年後に付き合うことになるぞと耳元でそっと教えてやった。
すると頬を赤らめスキップで駆けていった。

 

 

◆玉置玲央

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まず初めに天才と狂人は紙一重だということを言っておく。

 

彼との出会いはゴジゲンの前回公演であった。
夜の公演の終了後、私は客席でお客さんと談笑を交わしていた。
その回を見に来ていた彼は、作品をお気に召していただけたのかひどく興奮状態にあった。
すると私の姿を見つけるなり

 

「おっぱ~いっ!!!」

 

と、私の胸をもみしだいてきたのである。
もちろん激しい舞台の後で、私の上着は汗でびっしょり濡れていた。
それに気づいた彼は、

 

「ウワッ 汗きたねっ!!!」

 

と、速やかに私の元から退避し、たまたま居合わせた彼の知人の衣服で丁寧に手を拭った。
呆気にとられる私を尻目に、彼は素知らぬ顔でその知人とだべり始めたのである。

 

これが私と彼の出会いであった。

 

どうか読者の皆様に考えていただきたい。
私はよくよく知りもしない男に公共の場で辱められた挙句に、いわれもない暴言を吐きかけられたのである。
私が彼と同性であるがために想像がしづらいのであればこう考えていただければわかりやすい。
彼は「ラーメン屋で好き勝手飲み食いした挙句、スープが不味いと言い捨てそのまま食い逃げした」のである。
と、ここまで書いてあのときの怒りが蘇ってきたので、この場を借りて一言いわせてもらおう。

 

「おれのおっぱいに謝れっ!!!」

 

しかし先日、彼を含めた数人と「せい家」というラーメン屋に行った。
席に着くなり全員分のお水を配り、不味いどころか「ウマいウマい」とスープをすする彼は、存外に折り目正しい男であり、気骨のある多面的な人物だということが分かった。
無論そんな彼が食い逃げなどしようはずがない。
そして、誰よりも早く稽古場に入り、誰よりも遅く稽古場を去る彼の作品づくり姿勢を目の当たりにするにつれ、抱いていた敵意も違う感情に変化していくのを感じた。
なんだか急にあの程度のことで取り乱した自分の方が卑小な人間に思えてきた。
よし、もはや何が起きようと抵抗はすまい。
さぁ、玉置よ。
思うさま我が乳をもみ口汚く罵ってくれ。

 

 

◆青柳文子

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その日は「本読み稽古」といって、キャストが一堂に会し脚本を読み合わせる日だった。
前回の記事に書かせていただいたが、私は大層浮いていた。
どうやら力が入り過ぎてイタイ演技をしていたようだ。
しかし彼女も私に負けず劣らず浮いていた。
もちろん彼女の場合は悪目立ちをしたという意味ではなく、ひときわ作品世界に溶け込んでいたという良い方の意味である。
月並みな言い方をすれば、まるで物語からそのまま抜け出してきたような異質な存在感であった。
余計な意図のない真っさらな言葉が静かにこぼれていく、そんな彼女の本読みに新鮮な驚きがあった。

 

聞くと彼女は舞台経験はほとんどないという。
稽古はまだ始まったばかりだが、今回の作品で彼女という異質な存在が周りとどんな化学反応を起こすのか毎日が楽しみである。
もしかしたら今回の作品において一番の采配は彼女のキャスティングにあったといえるのではないだろうか。
劇場にてそれを確かめていただきたい。

 

 

先日、好きなスポーツは乗馬だと教えてくれた。

 

 

 

 

素敵だ。

―終

 

Profile
目次立樹 メツギ・リッキ

profi

1985年10月29日生まれ、島根県出身。
劇団ゴジゲン所属。舞台上では圧倒的な存在感を放つ、松居大悟作品には欠かせない存在。ここ数年は地元・島根県にて俳優、農家、ワークショップデザイナー、児童クラブの先生としても活動の場を広げている。

 

―今後の活動―
「イヌの日」 出演
作:長塚圭史 演出:松居大悟
2016年8月10日(水)~21日(日)
ザ・スズナリ(下北沢)