・連載―ゴジゲン目次の ボクには下校のチャイムが聞こえない! 2017-10-17 11:18

【連載】第4回「東迎の人生向かい風ッ!!!」 vol.1

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「ゴジゲン」の目次立樹(メツギリッキ)です。
一度たりとも正確に読まれたことはありません。
さて「ゴジゲン目次の ボクには下校のチャイムが聞こえない!」略して「ボクチャイ!」なんですが、なかなか下校できない大人たちに贈る、甘酸っぱくない、むしろ饐(す)えたテイストのコラムです。

今回は「東迎の人生向かい風ッ!!!」ということで、この度ゴジゲンに新しく加入した東迎の昂史郎(ヒガシムカイ・コウシロウ)の、世間の逆風に耐えながらも逞しく生きる男・東迎の生き様を皆様にご紹介します。

 

東迎昂史郎(30)は1987年、沖縄県石垣市に生を受けた。
早速ではあるが小学校時代にいじめにあう。
早くも向かい風。
頭の形から「モアイ」というあだ名でからかわれ、暗い幼少期を過ごす。
しかし、高校入学と同時に持ち前のギャグセンスを認められ、学校中の人気者になる。
卒業後はジャッキーチェンのような役者になることを夢見て上京、「演劇集団円」の研修生になる。

 

higasimukai
こんなにも精悍な顔の時代が彼にもあった
 

円といえば、名優・芥川比呂志が設立し、現在は橋爪功が代表を務める、知る人ぞ知る老舗劇団だ。
上手く劇団員になれば、未来は約束されたようなものだった。
しかし、そうはならなかった。
そうはならないのが東迎の向かい風だ。
芝居の方向性について悩み、一番弱ってるときに「ゴジゲン」に出合ってしまったのだ。

 

『チェリーボーイ・ゴッドガール』という、イケてない大学生たちが童貞卒業を胸に誓い、合コンに繰り出すという男子校スープ100%のこってりトンコツ作品だった。

 

cherryboy_img03手前の白シャツが本折最強さとし、中央のチェックが目次、赤いTシャツが松居。
 

観終わったあと、東迎の心は絶望と希望の狭間にあった。
そして、一つの言葉が彼の心の中を占めていた。

「演劇ってこんなにも自由なんだっ!!!」

今まで研修所の真面目な作品しか観てこなかった彼だ。
不道徳な欲望も、恥ずべき醜態もすべてさらけ出し、汗だくでのたうち回るイケてない男たちが、逆にかっこよく見えてしまった。
東迎は心に決めた。

「この人たちについていこう!」

その後の彼はかわいそうなくらいゴジゲン作品に傾倒、ジャッキー・チェンへの道は大きく踏み外した。
いや、元々ジャッキーの要素は「演劇集団円」にもなかった。
そこんところはまぁ、石垣の温暖な気候のしからしむるところではある。

 

ある日、東迎はゴジゲンの主催するワークショップオーディションに参加する。
人生の大一番、彼はこれでもかというくらいに必死にアピールした。
「円」で培った「日本演劇界の叡智の結晶」と呼ぶべき技術のすべてを、下北沢で童貞のお芝居をしていた人たちのワークショップに注ぎこんだ。
そのせいか近所からの通報で警察が駆け付けるくらい盛り上がった。
やりきった。
しかし心残りがひとつあった。
ワークショップ後の懇親会で、主宰の松居とほとんど話すことができなかったことだ。
そこで彼は、煮え切らない思いの丈をすべて一通のメールに込めることにした。
天が崩れ地が裂けるぐらい松居を褒めちぎった。
その結果…

受かった。

後日松居に理由を聞くと、そんなに印象には残ってなかったが、こいつがいたら自分を持ち上げてくれて毎日スゲー気分がいいんじゃないかと思ったそうだ。
そんな、演技とは関係のないところから憧れの劇団への出演の夢を叶え、ゴジゲン作品の常連となった。
そしてついに、

念願の劇団員まで登りつめる。

結果を出すまでは沖縄の土は踏むまいと心に誓った彼だ。
これで胸を張って(真意は定かではない)故郷に帰れる。
すべてが順風満帆に思えた。
しかしそうは上手くいかないのが、東迎の向かい風である。

 

彼が加入した3ヶ月後にゴジゲンは活動休止を発表したのだ。
原因は色々あるらしいが、たぶん目次とかいう先輩が「おれは農業をする」とか世迷言を言い出したせいらしい。
おかげで東迎は1人路頭に迷うことになる。
彼は悩んだ。

「このまま役者を続けていたって仕方がない。いっそのこと全部辞めてしまおう」

そしてゴジゲンも辞めるべく、喧嘩も辞さない覚悟で松居を渋谷のカフェ・ミヤマに呼び出した。

 

「松居さん……おれ…」
「東、どうした?」
「ゴ…ゴジゲンを……」
「ゴジゲンがどうした?」

 

「ゴジゲンを辞めますっっっ!!!」

「うん、OK!」

ok matsui

ビックリするぐらい簡単に辞めれた。
切ないぐらいにアッサリ終わった。
カフェ・ミヤマの落ち着いた雰囲気の店内は、恐ろしいまでに冷たかった。

 

吹っ切れた。
所属事務所も辞めた。
そして演劇と無縁の世界でせっせと働いた。
高層ビルの工事現場で、ひたすらドアを取り付け続けた。
千葉にも引っ越した。
愛する女性にも出会えた。
なんとなく

幸せを手に入れた。

気がした。
しかし、

東迎の中で何か足りない!?

3年後、そんな彼に温かくはないが生ぬるい追い風が吹く!!!

 

つづく(予定)

 

【公演概要】
ゴジゲン『くれなずめ』

日程・会場:
10/19(木)~29(日) 東京・下北沢駅前劇場

11/4(土)・5(日) 京都・アートコミュニティスペースKAIKA
11/11(土)・12(日) 福岡・北九州芸術劇場 小劇場

作・演出:松居大悟
出演:奥村徹也 東迎昂史郎 松居大悟 目次立樹 本折最強さとし 善雄善雄