・NEWS 2017-04-24 14:31

「情熱大陸」で話題のMIKIKO(演出振付家)が NYで一番影響を受けた作品とは!?
フエルサ ブルータ芸術監督ディキ・ジェイムズとの対談

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          (写真:GEKKO)

二人に共通する演出への情熱とは!?

世界30カ国・60都市以上、500万人以上の観客を魅了し、世界中を熱狂の渦に巻き込んでいる「フエルサ ブルータ」。「日本」にインスパイアを受けた芸術監督のディキ・ジェイムズが、世界初となる最新バージョン「WA!」を創り上げるという、この壮大なプロジェクトは、構想に10年かかり、満を持してこの夏上演される。

そんな世界が注目する公演を前に、本作の演出家ディキ・ジェイムズと日本を代表する演出振付家MIKIKO の対談が実現!!ニューヨークで初めて観た「フエルサ ブルータ」に感銘を受けたというMIKIKO。現在Perfumeの振付やライブ演出をはじめ、近年一世を風靡した「恋ダンス」の振付やPVやCM、舞台と、飛ぶ鳥を落とす勢いで大活躍している彼女は、先日放送された「情熱大陸」でも大きな反響を呼んでいる。

今回この対談が行われたのは、昨年12月。ディキ・ジェイムズが本作のオーディションのために来日した際に実現した。二人に共通する演出への情熱とは!?さらに3日間に渡るオーディションで選ばれた日本人キャストについても語った。

 

MIKIKO「私は10年前、アミューズの会長から、演出の勉強をするならニューヨークに行った方がいいと言われ、ニューヨークに行きました。それまでブロードウェイに馴染みがなかったので、ミュージカルをみるのは新鮮な体験だったのですが、いいとは思うんだけどなんとなく自分のやりたい表現に、ピンと来ていないところがあって。そんな時に、「フエルサ ブルータ」に出会い、すごく感激して、救われたんです。今回その「フエルサ ブルータ」の新作を日本で作るときいて、お会いできてすごく嬉しいです。」

ディキ「そういっていただいて、本当に光栄です。我々も興奮しています。まだ制作途中で、この感覚、わかっていただけると思うのですが、「このショーは素晴らしいものになる」と思う日があれば、「すべて間違えている。ぜんぶ直さなければならない」と思う日もあったり。でも今日はいい一日だったと思います。」

MIKIKO「ニューヨークで上演する際に、ニューヨークということを意識したのか、アルゼンチンで作ったものをそのまま上演したのでしょうか?」

ディキ 「「ビーシャ・ビーシャ(Villa Villa)」という作品がアルゼンチンで作った最初のショーなのですが、ニューヨークでも6年間上演しました。これはクリエイティブの制作段階で、ニューヨークやロンドン、そして日本のプロデューサーがブエノスアイレスに来てくれたので、その繋がりとしてアルゼンチン以外でもこのショーを上演するとは思っていました。自分にとってこのショーは、私が住んでいるところで作るというのがポイントだったのです。今回、はじめて自国以外の国で作るというチャンスがきて、緊張しています。すべてが違うし、我々にとってもクレイジーな体験です。

MIKIKO「ああやって考えることをやめて、みんなが体験するショーを作っていることに、私はとても共感ができます。歌はありますが、非言語の表現で、多分お客さんに想像してもらうということを期待して作っていらっしゃるのかな?と聞いてみたかったのです。」

ディキ「そうです。我々はインタラクティブな人間ではなくて、どちらかといえば反射神経で動いている。なので考えながらやるのは好きじゃないんです。自分の創っていることの意味を考えながらやるのが嫌なんです。でも、そんな中でインタビューもあり、説明もしなくてはいけない。ですが創っている最中は、座って考えることはやめています。観客には、ショーを見ているときに感じてほしい、同じ体験をしてほしいと思っています。考えながら見てもらいたくないんです。自分の考えよりももっと先に行っていたり、感情的な旅にでたり、経験的な旅に出てたり。観客はショーが終わったあとに、なんだったんだろうねとか、これは世界の始まりだよとか、いろいろな考え、反応を持っていると思うんです。だから考えてやっているわけではないんですよ。」

MIKIKO「私はどういう意図で作ったのかと質問されるのがいちばん苦手で、なので今の話をきいてすごく納得がいきました。」

 

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ディキ
「たまに難しいですよね。座って考える。人間は毎日すべてのことを考えて生きていると思うんです。だから作っている最中には自由が欲しいんです。このプロジェクトでは、すごく自由を感じられるんですよ。自分にとっては怖いことで、日本の文化から始めなければいけないし、たとえば失礼にあたるんじゃないかなとか考えます。日本側のチームは、みんな自分のやりたいようにやっていいのよと言ってくれているんです。怖がらず、やって、と。もう自由で好きにやっていいよと言ってくれるので有難いです。大きな挑戦だと思います」

MIKIKO私はリオの閉会式の日本パート(リオ2016大会閉会式 東京2020フラッグハンドオーバーセレモニー)の総合演出と演舞振付を担当した際、日本ってなんだろうと考えることに長い時間をかけました。芸者とか忍者とか着物など、海外の人がイメージする日本をショーで発表するという考えもあったんですけど、やっぱり今の東京を、今の演出で見てもらうということになりました。でも、今回、日本人ではないディキが演出することに意味があるし、私たちが見たいものになるんじゃないかなと思います。」

ディキ「ありがとうございます。あのセレモニーの映像を観たのですが、すごく良かった。ダンスや様々な要素を入れて、現在の日本を、現在の東京を見せるというのは、とてもいいアイデアだったと思います。我々はそれとは違ったものをやっています。芸者のや侍のコンセプトとかすごく伝統的なものから始めています。伝統的な画家とかお祭りとか、日本の伝統的な要素を紹介したいというのがスタートなんです。そしてそこからできる限り遠いところに離れていきたい。明日違うことを言うかもしれないけれど、今日に関しては、私達がやっているのは日本からのインスピレーションを表現するショーになるとしかいえないのですが。最終的にはモダンなショーになると思います。なぜならテクノロジーとか機械とか、使う要素はすべて現代的だからです。ただ、スターティングポイントは伝統的なもので、そこから遠いところに行きたい、どこが終わりなのかまだ想像もつかないけれど、本当に楽しい経験になると思います。」

MIKIKO「装置を作るのは日本人ですか?」

ディキ「我々のチームが、ショーの要素も含めてブエノスアイレスで作っています。そこに、オーディションで選んだ日本人のキャストを連れてきて、ブエノスアイレスでトレーニング・リハーサルを積みます。」

MIKIKO「ニューヨークで「フエルサ ブルータ」を観たときに、世界観すべてが印象的だったんですけれど、ダンサーの選び方が共感できるというか印象的で、ただスタイルがいいだけではなく、ちょっと硬派な人が多い印象があったので、どうやってダンサーを選んでいるかというのが聞いてみたいです。」

ディキ「今回のオーディションには、ダンサー・アクターの中から選んだのですが、アクロバットの要素を持っている人もいました。ほとんどはダンサーから選びましたが、広がりを持っている人を探していました。このショーはアクションが大きかったり、爆発したりとか、そういった振付を考えていたんです。でもゆっくりめというか、静かなセクションがあってもいいと思ったので、両方の要素を持った人、できる人を探していました。また、舞台にいて普通みんな観客席にいるものではなく、お客さんにすごく近いところにいるので、4番目の壁というか、1000人くらい周りにいるとパフォーマーとして強い人でないと負けてしまう。だからパフォーマーもものすごく強い精神というか、キャラクター性を持っていないといけないと思うんです。立ち上がって全てをストップさせる力を持っている、そしていきなり静かになる。カオスでばらばらになっているところをストップできるような要素をもっているキャストじゃないといけないと思っています。」

MIKIKO「今回のオーディションで選ばれたキャストもそうですか?」

 

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ディキ「はい、すごく強いパフォーマーを探すことができたと思っています。最初はなにを創造すればいいのか怖くて、ちょっとナーバスになっていたんです。これまでオーディションを様々なところでやってきましたが、日本でオーディションをやるときになにを期待すればいいのかわかりませんでした。でも今はすごくいい経験だったと思っています。マーシャルアーツとか格闘技とかストリートダンサーとかクラシックダンサーとかバレエとか、いろいろなバックグラウンドを持つ、素晴らしくいいパフォーマーが見つかりました。
本当に様々なバッググラウンドを持った人たちがいて、みなさんすごく準備をしてきてくれた人たちだと思います。なので結果に関して、非常に満足しています。」

MIKIKO「私は振付を始めてから演出家を目指したんですけれど、ディキは演出家になったきっかけはなんですか?」

ディキ私は最初パフォーマーでしたが、演劇や舞台にないものをやってみたいと思ったんです。自分は、自分のなにかを作らないといけないと最初から思っていて。準備段階としていろいろな演劇学校に行ったんですけれど、自分はもうわかっていたんです。自分のものを作らないとだめだと思っていました。「ビーシャ・ビーシャ」のときは演出家でも、パフォーマーでもクリエイターでもあったんです。それが自分のはじまりでもあるのですが、でも「フエルサ ブルータ」をはじめたときに、演出家だけになろうと思った。パフォーマーであることはやめようと思ったんです。なぜなら自由が欲しかった。自分でやりたいと思ったんです。いまは演出家としては自由がある。こうしろ! と、みんなに指示を出すのが好きなんです。ボスとして(笑)。でも、自宅に戻ると、よく妻や子どもに家では演出家ではないんだから、このディナーを演出しているわけではないんだからとよく言われるんですけどね(笑)。」

MIKIKO「演出するときは厳しいんですか?どなったりする?」

ディキ「はい。ちょっとクレイジーにはなるんだけど。サッカーの試合とかで監督が、「もっと強いキックをしてください。お願いします」と言わず、「早く蹴ろ!」言う感じと同じなんです。すごく激しい感じで、大きい声を出したり、ちょっとクレイジーになったり、自分はこういうやり方だから、熱くなるとそうなってしまうんです。
ただ、ごめんなさいというのも得意なんです。ショーが終わったあとに、これ言ってごめんねってよく言います。一緒に仕事してくれる人たちは私のことを知っているから、できるだけ大きい声を出さないようにしているんだけど、たまにやりすぎてしまったと思うことはあります。感情とかプレッシャーとかがあって・・・。でも、みんな私がちゃんといい作品を作ると信じてくれている。ただ、わかってくれると思うんですけど、たまに説明をする言葉が見つからないときがあるんですよ。自分がほしいものが見つからないときが。だからたまに、フラストレーションを感じているときに、人にあたってしまったりすることがあるんです。機械とか作ってくれる人にあたったりね。でもみんなといい関係性を持っていると思っています。いちばん最悪なのは、ショーを作っている最中に、何かいわれると言いすぎちゃったりすることです。
我々の仕事の仕方は、ショーをやるときに、自分の考えの60%がやれていたらといいと思うんです。最初の40公演が終わった後に、大きく変えることもあります。照明があって、パフォーマーがいて、お客さんがいて、色々な要素があるのですが、ショーを立ち上げるときに、すべての要素を加えたものを観る時間がなかなか無いんです。なのですべてのものが集まったときに、もう少し新しいプロセスを迎えたいと思う。だから新しいショーをつくる時には、そういう変更を受け入れられる人を求めているんです。楽屋にいって、「今日はこういう変更を入れるから」と言ったときに、「え~」という人ではなくて、「はいわかった、そういう風にやろう」と言ってくれる人を探しています。変更に対応してくれるパフォーマーを探すんです。
ぎりぎりのところで変えたいという人はいないと思うんだけど、そういうプロセスをやっているときに、変更に対応できるチームでないとできないんです。照明とか音楽とか振付とか、ときにはシーンの順番さえもね。でも我々の仕事は、映画監督のように編集の時間が取れません。自分はショーの編集を、上演している最中にやらなければいけない。それは大きなダメージです。ショーに加わってくれる人、P、そうだと思います。変更しなければいけないと思ったら、みんなに言って変更してもらう。ショーが落ち着いたらそのままにします。変更する要素がなければ、もう一回ショーを観に行くということはあまりしないんです。」

MIKIKO「私はロングランをやったことがなくて、あったとしても2か月のツアーなのです。あとツアーだと、こっちのお客さんには1、2回のショーとか見せられないっていう、条件のなかで作ることが多いので、変更することがちょっと怖いという頭の固さがあるから。でもその考え方がうらやましい。」

ディキ「制作段階の時の話なのですが、中国のあまりこういったエンターテインメントが上演されていない街で2年間上演したことがあるのです。日本はビートルズまで来たし、様々なショーを上演しているから、日本のお客さんはそうゆうのに慣れていて、「ビーシャ・ビーシャ」のときはそのまま持ってくればよかった。でもこの中国に行ったときに、もしかしたら劇場に足を運んだことのない人たちも多いかもしれないと思ったので、理解してもらえるように、沢山変更を入れました。それがわかったときに、みんなを呼んで、「明日、リハーサルが必要、変更しないといけない」と言ったことがありました。でも、そういうことは結構好きです。」

MIKIKO「理解してくれるダンサーやチームが必要ですね」

 

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ディキ「そうです。変更が好きだという人を選んでいます。終わったあとに、「もう変更をいれないよ」というんですけど、変更を入れるとみんな喜んでくれるんです。そういったチームが好きです。」

MIKIKO「私も変更を入れることでよくなると信じてくれるダンサーとかを集めている最中なので、いつかディキみたいに時間をかけて作品を作ることができる日が来るようにと願っています。」

ディキ「振付とかダンサーを使うのは、けっこう大きなチャレンジだと思います。ダンサーさんが、なんであんな動きを一瞬で覚えられるのか、本当にすごいと思います。すごくストロングなダンサーさんと一緒に仕事をしていると思いますよ。大きなチャレンジだと思います。」

MIKIKO「ディキがみた日本を……どんな風に写るのか、楽しみにしています。」

ディキ「ありがとうございます。お話できてよかったです。」

MIKIKO「伝えたいことの情熱が感じられて、だからこそあの作品に何か共感することがあったんだなという答えが見つかった気がします。私がニューヨークに住んでいたときにいちばん感銘を受け、そして救われた作品が「フエルサ ブルータ」で、その日本版を日本人のキャストで、ディキに作ってもらえるのは日本人にとして誇りですし、彼が日本人を調理、というか演出するとどうなるのか、すごく未知数なので観たいです。実際に、空間自体が演出されているので、足を運んで体験しないとわからない情熱みたいなものがぜひ感じられると思うのでみんなにもぜひ観てほしいです。ありがとうございます。」

 

【公演概要】

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フエルサ ブルータ「Panasonic presents WA!-Wonder Japan Experience 」

日時:2017/8/1(火)~9/30(土)
会場:東京 品川・ステラボール
料金:
前売り1Fスタンディング ¥7,600 / 当日1Fスタンディング ¥8,700(税込)
※2F指定席あり、詳細は後日発表 ※未就学児入場不可

 

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