・観劇してきました! 2015-11-25 20:05

パルコ・プロデュース公演『オレアナ』観劇レポートが到着!

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田中哲司&志田未来「オレアナ」
観劇レポートが到着!

 

緊迫の会話劇に、あなたの常識と内面の男女比が暴かれる!?

「観る方によって捉え方が異なる作品だと思います。結末もなんでこうなるの!?と、衝撃的でした」(志田未来)

 

「それはあなたが決めることじゃない」。その決定打が色んな意味で怖すぎる! 互いに、聞いているようで聞いてない。質問しているようで、すでに答えをもっている。これは、思い込みによるこじつけ、逆切れ、天邪鬼の末の悲喜劇なのか。ディスコミュニケーションが予想外の事態を巻き起こす、デイヴィッド・マメット原作の二人芝居。92年からオフ・ブロードウェイで1年以上のヒットを飛ばし、その後全米4都市をはじめ、世界各国で上演。クライマックスでは喝采とブーイングが入り混じり、各地で社会的議論を巻き起こした。そんな問題作がここ日本で、16年振り三度目の上演中だ。後にセクハラで訴えられる大学教師ジョン(田中哲司)と被害者を名乗る女子学生キャロル(志田未来)。舞台では“事件当日の様子”がつぶさに再現される。その日その時、密室で何が起きたのか―――。

 

親切心が生み出す不条理劇

観劇中、何度も「んもー!」とキリキリさせられた。かと思えば、思わぬ変化球(主に志田さん)に笑わされる。イライラしたりあっけにとられたり、飛び交うマシンガントークの意味を必死で追い続けた一幕の終わり。で、はたと気づいた。本作は教師と生徒の物語である一方、男性と女性、持つ者と持たない者、成熟と未熟、自立と依存…あらゆる対となる視点から語られる会話劇でもあるのだ。登場人物らも何とか自分のテリトリーで会話を進めようと、教師から家庭人へ生徒から女性へとその都度立場を変える。いつまでたっても論点が噛み合わない。その上、小難しい単語で畳みかけられれば、早々に意味を追うことを手放してしまう。それでも、すんなり心に届く台詞もあるのだから、それが本作を見る上でのあなたの「立場」なのだろう。

当日はジョンが念願のマイホームを得るために妻と契約先を訪れる日でもあった。そのため、突然の“訪問者”により約束をドタキャンされそうな妻から、ジョンのもとへ何度も電話が入る。決まってキャロルとの会話が核心に触れようとするその瞬間に。電話のベルを合図に会話は崩壊し、また振り出しに戻る。「親切心だったのに」というジョンの思いが心に火種を灯す。やがて、火にかけたやかんが沸点に達するように、その後にジョンが取った行動は「正しいこと」のように思えた。しかし、驚いたのは終演後。「男性の女性蔑視は今もあるから、キャロルの勇姿には超スッキリ!」と話す女性客らの声を耳にしたのだ。『ええ! キャロルの方が正解? 田中哲司さんがカッコよすぎて無意識に「セクハラはない」と決めつけていたのか。自分は常識人かつ女性だと信じていたが、実際はそうでもなく内面的には男性だった!?』と、猛烈な勢いで自問自答にかられることになった。これはもう一度見直さなければ!

 

初舞台の志田が大健闘!

幕開きではただ「授業が分からない」と取り乱すだけだったキャロルは2幕から容姿のみならず、主語までも“私たち”と不敵に変化させる。そんな起伏の激しい難役を、初舞台の志田未来が堂々と演じきる。セリフ回しも明瞭で、間合いやテンポも小気味よく、黒目勝ちな瞳も舞台奥まで感情を届けて、効果的。対する田中哲司はさすがの存在感。ゆったり構えるジェントルマンな前半から、目に見えて憔悴し余裕をなくす後半での変貌ぶりは見もの。その他、見惚れるほどに重厚で美しい松井るみの美術、ドラマチックな小笠原純の照明、何より社会派の会話劇をホラーコメディタッチのエンターテインメントに仕立てた栗山民也の演出には、引き込まれた。

(取材・文/石橋法子)

 

 

★オレアナSPOT映像

 

【公演情報】

パルコ・プロデュース公演
「オレアナ」
OLEANNA by David Mamet

[東京公演] 2015年11月6日(金)~11月29日(日) パルコ劇場
[福岡公演] 2015年12月5日(土)~12月6日(日)  北九州芸術劇場・中劇場
[広島公演] 2015年12月8日(火) JMSアステールプラザ 大ホール
[大阪公演] 2015年12月12日(土)~12月13日(日) 森ノ宮ピロティホール

作:デイヴィッド・マメット
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也

出演:田中哲司・志田未来

 

★詳しいチケット情報は下記のボタンにて!