・インタビューしちゃいました!! 2016-12-08 12:21

舞台『不信~彼女が嘘をつく理由』 三谷幸喜 インタビュー

fushin_01

観ている人が不安になるほど次の展開が読めない新作

 

三谷幸喜ファンならずとも待望の、新作書き下ろし作品の上演が決定した。『不信~彼女が嘘をつく理由』という、今までの三谷作品にはない独特の緊張感を感じさせるタイトルだ。今回、三谷作品2度目の登場となる優香を中心に、段田安則、栗原英雄、戸田恵子といった実力派が顔をそろえることになる。2年間続いた大河ドラマ「真田丸」の執筆にて「新たに進むべき道に気づけた」と豪語する三谷。その新境地とはどんなものだろうか。

 

――今回、「不信」というタイトルから、過去にないサスペンスめいた期待が伺えますが?
三谷 今、自分の中には「新しいジャンルを切り開きたい」という気持ちが強くあるんです。昨年から今年、2年かけて大河ドラマ「真田丸」を書いてきた中で、今後の自分の進むべき道というものが新たに見えてきた気がしました。人はどんなものを好んで観るのか、どんなものにワクワクするのか。今まで自分が書いてきた「笑い」にプラスアルファでどういうエッセンスを加えられるか。その答えを見出したい。ただ、「不信」というタイトルに特に重きを置いているわけでなく、今まで比較的長いタイトルが多かったので短くしてみようかという程度ですね。画数はちゃんと見ましたが(笑)。十三画で大吉。

 

――大河ドラマで得た気づきは、具体的にどんなものだったのでしょう?
三谷 どんな物語でも、作家が書くと何となく先が想像できるものが多くなるものです。でも現実はたまに、作家が頭の中で考える展開を越えるときがある。「真田丸」ではそこに気づかされました。天正壬午の乱(甲斐・信濃・上野で繰り広げられた徳川家と北条家の戦い)なんて、ひどいですよ。裏切り裏切られ、あっけなく死に…。全く先が読めない。僕の完全オリジナルで、架空の国の架空の時代で「真田丸」を書けるかと言われると、絶対にできない。そう思うと、逆にそれに挑戦してみたくなったんです。次の展開が読めず観ている人が不安に駆られるくらいの物語。かなり難しいですけどね。書いてみてダメだったら、やめるかもしれない。それくらい難しい。

 

fushin_02

 

――そんなハラハラする展開を実現させていく役者さんは段田安則さん、優香さん、栗原英雄さん、戸田恵子さん4名。どういう意図でのキャスティングだったのですか?
三谷 僕が新作を書くときは、俳優ありきなんです。「この人にどういうことをさせたいか」、まずその欲求からスタートします。今回がまずは、「優香さんをさんざんな目に遭わせたい」というのが発想の原点です。彼女には2014年に『酒と涙とジキルとハイド』という作品に出ていただきましたが、そのときに舞台女優としての可能性を感じたんですね。僕はコメディエンヌの条件として「頭から水をかぶっても悲惨な感じがしない」ということをよく言うのですが、優香さんはぴったりとその条件に当てはまります。

 

――さんざんな目…優香さんはどんなひどいことをされてしまうのでしょう?(笑)
三谷 『酒と涙と~』ではドタバタの中で肉体的にひどい目に遭いましたが、今回は心理的に。ちょっとした、ほんのささいな嘘から物語が始まり、驚いたり追い詰められたりと翻弄されていく姿を描きたいですね。小さな嘘が積み重なるというお話は1997年に『君となら』という作品でやっていますから、それとは少し違います。もっと不条理な感じ。あくまで優香さんは受け身で、不思議な世界に迷い込んでいくような。…現代を舞台にした不条理版不思議の国のアリスみたいな。まだ書いてないから、なんだって言えちゃうんです(笑)。

 

fushin_03

 

――未知なるところが多いわけですね(笑)。優香さんを取り巻くお三方にはどのような期待をなさっていますか?
三谷 とにかく優香さんを達者な役者さんで囲みたかった。段田さんや戸田さんには、やはり作品を支えてほしいという気持ちがありますね。もっとも信頼できる役者さんたち。お二人とも、僕と共通言語を持っている。だから稽古場では、ひとつの役をゴールにたどり着かせる時間がとにかく短くて早い。そのぶん深いところへ行けますから、今回もぜひにとお願いしました。未知といえば、栗原さん。以前『タイタニック』という舞台でお姿を見たのがきっかけとなり、「真田丸」でも真田信尹役として出演してくださっています。もうホント素敵ですよ(笑)。たたずまいも、声も芝居も全部いい。「真田丸」でテレビドラマ初出演をなさり、まだ世間に知られていない、色のついていない状態ですから、その知られざる部分を活かしたいですね。

 

――作品ごとにさまざまな進化、変化を遂げる三谷作品。ずばり、今回の見どころは?
三谷 僕は喜劇作家なので、基本的にはどの作品もコメディです。でも前回の「エノケソ一代記」は人情喜劇で、今度は不条理喜劇。これからも、いろんな形にコメディを作っていきたい。今回は、クールで、スタイリッシュ。ミステリーというよりはサスペンス。それで笑いもあって。最高でしょ。これから書くんですけどね。

 

インタビュー・文/新田哲嗣

 

【プロフィール】
三谷幸喜
ミタニ コウキ 1983年大学在学中に劇団「東京サンシャインボーイズ」を結成。以降、演劇活動を続けながらドラマ脚本家としても活躍の幅を広げる。 2016年大河ドラマ「真田丸」では高い視聴率を記録している。

 

【公演情報】
不信〜彼女が嘘つく理由

日程:2017/3/7(火)〜4/30(日) プレビュー:3/4(土)〜6(月)
会場:東京芸術劇場シアターイースト

★プレリク抽選先行 12/10(土) 12:00~開始!