・インタビューしちゃいました!! 2017-06-22 11:52

PARCO & CUBE 20th. present『人間風車』 演出・河原雅彦、成河、ミムラ、加藤諒 座談会

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2000年初演の“童話ホラー”の傑作が
キャストを一新、河原雅彦による新演出で蘇る

後藤ひろひとが劇団「遊気舎」に1997年に書き下ろし上演し、その後、2000年と2003年にパルコ劇場にてG2演出で上演した舞台『人間風車』。14年の時を超え新たに生まれ変わり、今年9月、パルコ・キューブ提携公演として東京芸術劇場プレイハウスにて上演する。生瀬勝久、斉藤由貴、阿部サダヲ、八嶋智人、大倉孝二(2000年版)、入江雅人、永作博美、河原雅彦(2003年版)、ら錚々たる出演者経歴に加え、作家の語る童話が現実になりホラーへと転がり落ちる衝撃の世界観によって演劇界に強い爪痕を残した。今回の再演に当たり後藤本人は「この作品はコメディであり、ホラーであり、ファンタジーであり、私が書いた脚本の中では最大の悲劇」とコメント。
このたび、自身も03年の『人間風車』に演者として出演した河原雅彦が演出に立つ。主人公の売れない童話作家・平川役には高い演技力とフィジカルの強さで躍進する成河、ヒロインのアキラ役に2度目の舞台出演となるミムラ、河原も演じた少し変った青年サム役には加藤諒。ほかにも矢崎広、松田凌、良知真次など注目俳優もそろうゆえ期待は否が応でも増す中、河原、成河、ミムラ、加藤の4人が集まった。初めましての顔ぶれもあり、また河原と加藤は、河原が加藤の才能を見出し、厳しく稽古をつけた“師弟関係”ということで、S度の高いツッコミが。爆笑、互いの意外な発見に盛り上がる座談会。絶対に面白い舞台になる。この空気感をなんとしてもお伝えしたい!

――まずは出演が決まった時のお気持ちを。加藤さんからお願いします。

加藤「僕の前にサムを演じられたのが、阿部サダヲさんと河原雅彦さんと聞いただけで、一気にプレッシャー。大丈夫かな、大丈夫かな、とすっごい不安です。で、いま迷っているのが、前回のDVDを見てから稽古に挑むか、見ないで自分なりにやるかの二択」

河原「諒、観ないんじゃない? 仕事が忙しければ観ないだろうし、観て影響受けすぎてそのまま完コピとかになってもね(笑)。見ても見なくてもどっちもダメですね。薄目で見る?」

加藤「ひえぇ……、薄目で、遠目で、観ます」

ミムラ「映像を観て、逆にわたしはうれしくて。斉藤由貴さんと永作博美さんという、すごい先輩がやられた役を頂けた喜びと、作品の持つ引力の強さ。この中に立てるなんて楽しみばかりです」

河原「いいなあ。僕や阿部くんのことも諒にそんな風に言ってもらえたらなあ」

加藤「だ、か、ら!不安なんじゃないですか!」

「僕もパルコ初演の映像を見ました。平川の役は生瀬勝久さんで、気力、体力のいる役だと思いつつ、あの不安定な人物にはやりがいを感じる。自分を追い込んで、やれるところまでやりたいと思っています」

 

――河原さんは2003年にサム役で出演。その時に、まさか演出するとは……。

河原「思わないですよ。僕のやったサムは、芝居で絡む人がお姉さん(アキラ=永作博美)と作家(平川=入江雅人)だけで、稽古場も時間割りされているから、団体感があまりなかったし、本番中も一人で楽屋にいた記憶なんです。ファンタジー的シーンにみんなで出ていって楽しげなことをしている間、僕だけずぅーっと楽屋にいたなあ、という。この作品って、急に、直角に話が変わっていくじゃないですか。演出することになり、改めて本を読み返してやっと全貌がわかりました」

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――演出することになり、どのように取り組もうと?

河原「演出家として作品を見て、率直にいえば、難しい作品です。後藤さんが最初に遊気舎に書いたものから、2000年のパルコ・プロデュース用には、演出のG2さんも脚本づくりに加わっていたらしく。演出家が脚本づくりに関わると、演出プランがその本の中ですごく反映されやすいんですよ。作家さんがフラットに書いたものを預かるなら、演出家としていろんなやりようがある。でも、今回はそこが一つ難しい点で、すでに脚本に演出プランニングがなされてあり、こう見せるんだなという計算が見える。そこをどうするか。……僕が変えていいことあるかな(笑)? 無理に変えることもないけど、僕らなりのトライはしたい。しなきゃね、トライ。でもですね、遊気舎版のほうがもっと残虐非道っぷりはすごかったらしいんです。僕としては元の本に興味がありますね、残虐非道には目がないので(笑)。後藤さんの今回における思いもあって、いまは工事中の段階です」

 

――それぞれの役の印象と、演じるにあたって課題にされていることは?

加藤「自分にないものがいっぱいあるので、まだどう演じたらいいかわからない状態です」

河原「ふっ(失笑)」

成河「なんですか、その絵にかいたような失笑は(笑)」

河原「だって、僕や阿部くんにもサムの要素はないからね。もう、諒、顔が怖い。俺たちより顔だけ見たらサム向き。自分のことなんにもわかってないでしょ」

加藤「え、か、顔!?」

成河「すでに演出が(笑)!」

ミムラ「アキラは魅力的なキャラクターだと思います。彼女には、いまの仕事のもっと先に行きたいけど、目前の仕事も丁寧にやらないと先はないぞとわかっている30代女性の切迫感があり、気持ちがすごくわかるんです。そういう人は多いでしょうから共感してもらえるようやりたいのが、一つ。あと一つ、サムは普通の青年とは違う反応をする、違う感性や感覚を持つ設定で、直結ではないんですが、障害を抱えて生まれたわたしのおばのことを思い出しました。行動の予測がつかないので小さい頃はやっぱり怖かったし、どう接していいかわからなかったけど、わからないを乗り越え、こう接すべきというのができた。でも、今度はこうすべきからどうやって離れて自然体に持って行けばいいのかに時間がかかり、結局、最後の最後までわからないまま終わりました。アキラもまた、現実を飲み込んでいるように見え、どこかで、こうすべきだというものに縛られている。その隙間を突かれたから、話が直角に曲がっていく、という……。取材でこの話をすべきかどうか迷いましたが、いや、そういうことじゃないだろう、実体験が使えるなら舞台で使っていこう、と思った次第で。それと、舞台経験はまだ2度目なので、みなさんを見て学びながらがんばります!」

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成河「ミムラさんに圧倒されるなあ!僕はどう演じようかは、まだなにも。いろんな可能性があるだろうから、妄想は広げておきたい。どんな平川像があってもいいだろうし、残虐非道ソムリエ=河原さんがいるので、一緒に考えて行ければ。子どもたちやサムに聞かせる物語の長ゼリフもありますが、つかこうへいさんの舞台を多くやってきたので、長ゼリフは好きなんですよ。むしろ会話のほうが繊細だったりしますしね。特に、今回の長ゼリフは物語。楽しみですね」

 

――河原さんからみなさんへの要望は?

河原「いまのミムラさんの話を聞いて、そういうアプローチが持ち込めたら生々しいというか、いい要素になるかなと思いました。……要は、諒に馴染めないってことで?」

全員「爆笑!」

河原「俳優さん、スタッフさん、美術ひとつ、音楽ひとつ取っても新しいので、このカンパニーならではの『人間風車』にしたいですが、これだけ体を動かさないと気が済まない成河が作家の役をやるし、諒は顔面がおもしろ過ぎるで、成河と諒、二人してミスキャスト!なんですよ。けど、そのギャップが強みに活かせる。成河は、肉体を酷使せずとも、本をはみ出すところまで芝居を持っていける俳優だし、諒は……そうねぇ……フライングでもさせようか? じわ~〜〜と浮いているだけ、とか(笑)。」

全員「爆笑!」

河原「諒にはこう見えて強烈な陰の部分もある。そのへんのギャップを使いたいですね」

成河「自分の中身がえぐられてしんどそうですね(苦笑)。でも、希望的な作り物を積み上げるおもしろい作品もあるけれど、『人間風車』は、自分の持つ、直視したくないものをちゃんと出す作品だと思うから。焦らないでやりたいですね。腹の中には軽々と人に言えないこともあるでしょう? じわじわと自分の中に見つけていく作業になるかと思います。舞台だからできるんですよ。映像ではそこまで時間がかけられないかもしれない、けど、舞台には稽古があって、いろんなことが試せる」

 

――お互いの印象も聞いていいですか?

加藤「僕、河原さんが大好きです。初めてご一緒した時はほんっとに怖かったんです。毎回怒られてました。でも、ダメなところはちゃんと言ってくださいますし、よくなったらそれも言ってくださる。信頼しているので、ついて行けば必ずおもしろい作品になると信じています」

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河原「諒を誉めるの、やめようかな。病んでほしいから」

加藤「キエー!覚悟を持って稽古場に挑みます。河原さんには追い詰められても嫌じゃないんです」

河原「サムは31歳だよね。珍しくない? 普段はキテレツな印象の諒が30代の青年を演じる、それだけですでにファンタジーだよ。ミムラさんは、テレビで見ながらつい“この人素敵だな”と思わずつぶやいてしまいそうな・・・クレバーで芯が強そうだし……おもしろそう。斉藤さんとも永作さんともお仕事をさせてもらってますが、みなさんタイプがぜんぜん違う。めちゃめちゃ良さげですよね、ミムラさんのアキラ。ドキドキします」

ミムラ「(笑)ありがとうございます。自分の取扱説明書を申し上げますと、結構、しつこいです。やった後からムラムラ湧いてきて、こうですか、ああですかと、しつこく聞きに行くタイプなので、何卒よろしくお願いします」

河原「いやいや、有難いです。どうしても諒が受けつけないとか、なんでも言ってください」

全員「爆笑!」

成河「だいぶ昔ですが、俳優としての河原さんと共演しました。演出家として受けたのはわりと近年。俳優としての河原さんは本当に怖かったですよ」

河原「もうやめてよ、演出家としても怖いって言われてるのに(苦笑)」

成河「河原さんはなんでも話せる。言葉で言わずとも、なんでも話してよ、という空気を出してくれる。役者の気持ちをとてもわかってくださる、同じ目線で話してくださる。それは一番有難いことです」

 

――『人間風車』のカギは童話です。本作から感じる童話とは、また、好きな童話など、童話にまつわる思いを聞かせてください

河原「前回公演から14年ですよね。当時と、いまでは、受け取り方が違うと思います。ダメな現実が童話に盛り込まれることを前は笑えたけど、それって当然じゃないのといまは思われるかもしれない。童話の中のシビアな要素が時代ごとに違うとして、現代における童話って、どういったものが童話になるのか」

成河「前の台本を読みましたが、ハッとしたセリフがありました。童話や絵本は子どもが選ぶんじゃない、親が選んで読ませるもの、と。これが現実だと思いました。童話ってまずは大人が読むものなのかと……。僕自身は子どもの頃、石坂浩二さんの読み聞かせのテープをよく聞きましたね。字に弱かったので、耳から聞く。浩二おじさんのお話を(笑)」

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ミムラ「わたし、しゃべらせていただけるなら何日でもしゃべれます。絵本が大好きでレビュー本を2冊出しているんですよ。河原さんのおっしゃる通り、絵本や童話は新陳代謝がすごく早い媒体なんです。差別用語だからと題名が変えられたり、桃太郎の最後は鬼を退治しなかったり、いまはまろやかでふわっふわな絵本が増えましたね。童話や絵本の源流をたどると、昔話や民話がありますが、それが語られていたその昔にも、子どもを楽しませようと聞かせただけではなく、実は政治的な国民洗脳だったとか。ピュアな子どもから染めていこうという各国の歴史が地脈にあったりします。童話や絵本にはそもそもとして差別や様々なグロさが入っていて、だから、メッセージ性が強いし、違う国に移っても説得力があるし、人間が代々葛藤してきたものが詰め込まれているんです。と、いうこともあり、今回この作品に出られることに、ものすごいやりがいを感じています」

河原「ミムラさん、やっぱりおもしろい! ……なるほど。僕も、『人間風車』の中では、平川がサムに聞かせる話(一番悲惨な話)が一番好きですもん。いい童話だなあと」

ミムラ「サムの状態(洗脳される)は、絵本が、昔から一番にやりたかったことかもしれないですね。戦後まもなくの絵本は、目を引く赤でないと売れないなんて言われていたそうですよ。まさに、わたしたちは今日赤い衣装で撮影しました。因縁深いものを感じますねぇ」

加藤「僕は、赤ずきんちゃんが好きでした。特に、最後におばあちゃんを食べちゃうところ。学校の朝読書で、「本当は怖い童話」を読んでいました。いろいろ考えさせられるし、グロさのある話も嫌いじゃないです」

河原「『人間風車』でいうと、平川みたいな童話作家は基本ダメじゃないですか。本当にそれがいい話だと思って書いてる時点でかなりヤバいというか。それこそファンタジー。平川の存在自体が童話、ファンタジーかもしれないですね」

 

――最後に、読者にメッセージをお願いします。

河原「再演の難しさは演出家にも俳優にもあります。けど、今日、ミムラさんに初めてお会いして話が聞け、よく知っている2人、成河と諒は、新しいカンパニーで新しいものを産み出そうする思考の人。これは心強いです。で、諒はフライングする、と(笑)」

加藤「すごい方々が出演するので、稽古前からしっかり準備しないと、絶対おいてけぼりになると思うんです。しっかり喰らいついて行けるよう、しっかり準備して」

ミムラ「初舞台だった前回、稽古中に怪我をしてしまったので今回はケガをしないことと、体の説得力が出せることを個人的な課題にしたいと思っています。あと、頭で考え過ぎるのが悪い癖なので、現場でできるものを信じて飛び込めれるようにがんばります。是非劇場にいらしてください」

成河「ミムラさんに今日初めてお会いしましたが、本当におもしろい、ヤバイですね。今日は隣に並んでメイクしましたが、メイクさんともおしゃべりが止まらないの。(ミムラ「うわぁ(苦笑)うるさかったですよね、ごめんなさい!」)あの20分でミムラさんの結構なことがわかりました。映像とギャップがあって、ますます楽しみになりました。この作品にはファンの方がいっぱいおられます。本作の真骨頂は、残虐さや、人間の見たくない部分を晒すところ。さっきも時代の話がありましたが、なにがヤバくて、なにが残虐なのか、表現のやり方は時代でぜんぜん変わると思う。いまの僕たちにとって、本当に見たくないものの見たくない表現が、これまでとは違うものになる。いま、一番ヒリヒリする表現をきちんと提示できれば、作品ファンの方にもきっと伝わると思うので、みんなで探していきたいと思います」

河原「この感じ、大丈夫そうでしょう? ほかにも魅力的な俳優陣が揃っています。人数はすこし増えて13人。若い俳優たちも多いし、後藤さんの改変も楽しみだし、果たしてどんな新しい人間風車になることやら。ま、やってみます!」

 

取材・文/丸古玲子

ヘアメイク:Leinwand(成河、ミムラ、加藤)

スタイリスト:宮本真由美(MYPS)(成河、ミムラ、加藤)

衣裳クレジット:KINJI(成河)

【プロフィール】
成河
■ソンハ ‘81年、東京都出身。大学時代より演劇を始める。近年の主な舞台出演作に『エリザベート』『わたしは真悟』(16)、劇団☆新感線『髑髏城の七人 Season花』(17)など。また、吹替初挑戦のディズニー映画『美女と野獣』が公開中。

ミムラ
■ミムラ ‘84年、埼玉県出身。03年ヒロインオーデイション合格にてドラマ『ビギナー』にて女優デビュー。ドラマ・映画で活躍ほか、執筆活動も行う。舞台は『スタンド・バイ・ユー 〜家庭内再婚〜』(15)以来2度目。

加藤諒
■カトウ リョウ ‘90年、静岡県出身。00年、当時10歳でバラエティー番組『あっぱれさんま大先生』にて芸能界デビュー。多くの映画・ドラマ・舞台で活躍の場を広げ、舞台『パタリロ!』(16)にて舞台初主演。

河原雅彦
■カワハラ マサヒコ 俳優、演出家、監督など多彩な顔を持つ。主な受賞歴に読売演劇大賞・優秀演出家賞など

【公演情報】
PARCO & CUBE 20th. Present
『人間風車』

作:後藤ひろひと
演出:河原雅彦
出演:成河、ミムラ、加藤諒、矢崎広、松田凌、今野浩喜、菊池明明、川村紗也、山本圭祐、小松利昌、佐藤真弓、堀部圭亮、良知真次

公演日程・劇場:
【東京公演】2017年9月28日(木)~10月9日(月・祝) 東京芸術劇場プレイハウス
【高知公演】10月13日(金) 高知県民文化ホール・オレンジホール
【福岡公演】10月18日(水) 福岡市民会館・大ホール
【大阪公演】10月20日(金)~22日(日) 森ノ宮ピロティホール
【新潟公演】10月25日(水) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
【長野公演】10月28日(土) ホクト文化ホール・中ホール
【仙台公演】11月2日(木) 電力ホール

*2017年7月15日(土)東京公演チケット発売