・インタビューしちゃいました!! 2016-09-15 00:00

「扉の向こう側」 壮一帆、一路真輝、紺野まひる&板垣恭一
インタビュー

tobira
元宝塚歌劇団・雪組トップ3人が共演!

 

 壮一帆、一路真輝、紺野まひるという元宝塚歌劇団・雪組の男役・娘役トップの3人が、やはりミュージカル界で活躍する岸祐二、泉見洋平、吉原光夫3人を相手にスリリングで痛快なやり取りを見せるドタバタ・サスペンス・コメディ「扉の向こう側」。しかしこの作品、純然たるストレートプレイ。壮、紺野、一路に演出の板垣恭一が加わった座談会は、このキャストが集まったきっかけや“宝塚あるある”、演技・演出論も飛び出すバラエティに富んだ内容になった。

板垣 プロデューサーから話をいただいたとき、率直に面白い企画だなと思いました。お三方に限らずミュージカル界の名だたる俳優さんの名前が挙がってきて、こうなったら全員そのほうが絶対面白いでしょう!という話になったので、仮チラシにノリノリで「歌いません」って書いてね。

一同 (笑)。

 

 これだけの歌ウマなキャストがそろって歌わないというのは、なんとももったいない話だが、ミュージカルをメインに取り組んできた役者にとっては、逆に歌わない演技の難しさという側面もあるのではないだろうか。

 私はストレートプレイも初めてなんですよ。宝塚在団中にストレートプレイを観ていて「みなさんよく(セリフを)覚えはるなあ」と思っていたくらいで。

紺野 最初はセリフの多さにビックリしますよね。

板垣 いま、軽く「長いセリフはやめてね」っていうプレッシャーがかかりましたけども(笑)。

一路 でも早くストレートプレイに慣れるのはいいことだと思います。私は退団後もミュージカル女優っていうすごく大きな十字架を背負って20年間やってきて、産休から戻ってきて、初めてストレートプレイをやったんです。だから本格的なストレートプレイに取り組んだのが、ここ近年なんですよね。早いうちにいろいろ経験しておいたほうが、絶対にいいと思う。

板垣 逆にストレートプレイを専門にやってる方々が初めてミュージカルに出るとなったときには「歌と踊りって、どうやって覚えればいいんですか?」ってよく聞かれますよ。両方を見ている身としては、みなさんなら絶対大丈夫です。

一同 …。

板垣 あれ、黙っちゃった。

紺野 いや、難しいなと思って。翻訳された台本を読んで、会話のテンポがものすごく大事な作品になるんじゃないかなって思ったので、それが私の中では結構プレッシャーですね。ここでお客さんがシーンってなったらどうしよう、だとか。私、退団後はそんなに舞台に出ていなくて、朗読劇やミュージカルなどをやって、蜷川(幸雄)さんの作品(2009年の『コースト・オブ・ユートピア』)に出て、これが5本目なんですよ。

板垣 蜷川さんの次ですか…(笑)。

 

 老舗ホテルのスイートルームを舞台にしたこの作品。実業家リース(吉原)は、共同経営者のジュリアン(岸)の手を借り、ジェシカ(紺野)とルエラ(一路)という2人の妻を殺した過去を持っている。しかし70歳になり死を意識し始めたリースは、自分とジュリアンの悪事を告白する文書をしたためた。その文書を法的に有効なものにするには第三者の署名が必要なため、滞在するホテルのスイートルームにSM嬢のフィービー(壮)を呼んで署名を頼もうとする。それに気づいたジュリアンはフィービーの殺害をも企てるが、身の危険を感じてコネクティングドアーから隣の部屋に逃げ込んだフィービーは、そこで殺害されたはずのリースの2人の妻・ジェシカ、ルエラと出会う。扉の向こうは過去と現在を繋ぐ不思議な空間となっていたのだ。互いの立場を理解した3人は、気のいい警備員ハロルド(泉見)を巻き込み、自分たちの殺人事件を未然に防ごうと奮闘するが…。

 この女性3人がそろうシーンがあるんですが、私はそこがすごく楽しみですね。お客様も楽しみにしていらっしゃる方が多いじゃないかと思いますし。(紺野)まひるとは宝塚時代に新人公演で一度組んだことがあるんですけど一路さんとは初めてで、ずっと舞台を観せていただくばっかりで本当に“雲の上の人”だったんですよ。そんな方と同じ板の上でやらせていただけるというのは緊張しますね。でもどんどんあつかましくぶつかっていって、少しでもいいものにできたらって思います。

紺野 私も雪組での初組子(所属)が、一路さんの退団後だったんですよ。

一路 最近ご一緒する元宝塚の方とは現役時代本当に交わってなくて、「一路さんの舞台観て入りました!」とか言われることも多いんですよ。だからすごくジェネレーションギャップがあるのかと思いきや、いざ稽古に入ると、不思議な共通意識みたいなものを感じるんですよね。一つのものに向かってみんなで協力していくっていう意味では、非常にいいメンバーなんじゃないかと思いますね。

板垣 世代を超えた女性たちの友情物語なんですよ。だからこの中でお三方の関係がどういうバランスになるのかっていうのは、非常に楽しみなんです。そしてこの作品は、女性が痛快に男性をやっつける話でもあるんですよね。ダメでどうしようもない男たちを女性3人が協力してこらしめて、自分の人生に乾杯するという。ぜひ女性の方々に観ていただきたいですね。特にまわりの男性に何か不満を持っている方とかに(笑)。あと原作者のアラン・エイクボーン自身が明かしているんですけど、映画の「サイコ」(1960年)や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年)のオマージュが盛り込まれてるんですよ。もちろん元ネタがわからなくても楽しんでいただけるはずなのですが、そういう意味でもエンターテイメント性の強い作品だと思います。

 

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 豪華キャスト×ウェルメイドなコメディを多数生み出してきたアラン・エイクボーンの作品の組み合わせに、期待感も高まる「扉の向こう側」。コメディということで、アドリブが飛び出すのかも気になるところだが…。

板垣 僕が考えるルールとして、アドリブを稽古段階でやるのはありなんですよ。でもルールが二つあって。一つは話を自力で戻せること。もう一つは相手役に損させないこと。

紺野 そんなに器用じゃない(笑)。やっぱり難しいですよ。

板垣 そんなきっぱり諦められても(笑)。

 私も実は全然アドリブがきかないんですよね。決められたセリフの中で遊ぶのは好きなんですけど、基本的にはセリフ通りの人間です(笑)。今年の春にご一緒させていただいた演出の福田雄一さんにも「(セリフを)変えないよね~」って言われました。

一路 私もあまりしないですね。宝塚の子ってみんなあんまりしないですよ。やってしまうといろいろと秩序が崩壊しちゃうところがあるから(笑)、みんなしない習慣になっているんだと思います。

 

 そしてこの3人中唯一、ミュージカル「シャーロック ホームズ」で板垣作品に出演した経験があるのが一路。板垣演出の面白さはどんなところにあるのだろうか。

一路 稽古に入ると、「このシーンでは右を向いて」みたいなことは細かくおっしゃらずに、役者がどう出るかを待っている時期があるんですよ。宝塚っていうのは立ち位置だとか細かく決められてやってきてるから、そういう部分の怖さはありますね。シャーロックでは共演が橋本さとしさんでガンガン自分を出していく俳優さんだったから、私はそれに寄り添っていた部分もあったんですけど、板垣さん、すごいニマニマしながら待ってるんですよ(笑)。そのときはミュージカルだったんで、今回はまた違う板垣さんが観られるのかなと思って、楽しみにしております。

板垣 作品によって細かく演出をつける場合もあるんですけど、基本的に俳優さんが作る演技が好きなんですよ。俳優さんの考えた演技って、公演期間中にも伸びしろがあるんです。この作品は14ステージありますけど14ステージ後には内容が変わって見えるくらい、俳優さんの演技が変わることもあるんですよね。それが演劇の一つの面白さだと思っているから、演出でなるべく“答え合わせ”をしないで、そこに何が生まれるのかを、いろんな燃料を投下しながら楽しんでいるところはあるかもしれない。

一路 俳優の演技を細かく見てくださってて、ちょっと変えたりすると必ず「あそこは変えた後のがいいと思うよ」「あれは前のほうがいいと思う」というのをちゃんと言ってくれるんですよ。一見野放し状態なんですけど、そこはちゃんとフォローしてくださいます。

紺野 私たちもいろんなことを考えて臨まないといけないですよね、俳優に任せられてる部分が大きいので。しっかり台本を読み込んで、みなさんとの掛け合いも楽しみに挑みたいですね。

 私は退団して3作目になるのですが、1作目が男役で2作目が無性別なお坊さんの役でした。3作目でやっと女性の役が来た!と思ったらSMクイーンだったという(笑)。それなのでまだ女性を演じるベースが定まりきらないうちに飛び込む怖さはありますね。ただ、板垣さんが今おっしゃって下さったように、今作での私の課題も壮一帆の人となりをどれだけ出すことが出来るか、ということですね。多少足が開こうが声が低くなろうが、それが自分の役になるんだったらそれはそれでいいのかなと思っています。

板垣 演じてる俳優さんの細胞が作品にどれだけ入るかっていうのが非常に重要だと思っているんですよ。例えばこの作品を再演することになってどなたかひとりキャストが代わったとしたら、僕は新しい人のバランスで組み直しちゃうと思います。壮さんがおっしゃってるように今この役をやることを面白がっていただいて、その人と役が混ざった瞬間をつかまえるのが好きですね。

 

 いわゆるタイムスリップものの物語の中で、スリリングかつ痛快に時代を飛び越えていく3人の女性たち。本作の設定の面白さについても聞いてみた。

一路 時代をまたぎつつも私と壮ちゃんは年齢が変わらないっていう設定なので、多分私と壮ちゃんが軸を作って、周りがめまぐるしく動いていく流れになるんだろうなって思うんですよ。私が演じるルエラはリースの二人目の奥さんで、そこに壮ちゃん演じるフィービーがタイムスリップして来て、私の前の奥さんであるジェシカ(紺野)は若い頃と、年齢を重ねた頃のシーンがあったり。面白い仕掛けがいっぱいあるので。そういうところも見どころです。

板垣 今回はルエラがいる時代を現在にして、フィービーがいるのは20年後、ジェシカがいるのは20年前でという風に考えてます。

一路 フィービーは未来のSM嬢ってことね。じゃあ、やりたい放題できるじゃない? だって誰もどんなものなのかわからないんだし。ロボットかもしれないよ。

 (爆笑)。そういう風に考えたら楽しいですよね、ホントにそうです。

紺野 想像したら楽しくなってきちゃった(笑)。

板垣 確かに。和服で出てきたとしても未来はそういうもんですって言えますしね。

紺野 ジェシカの役では、作品中ではあまり描かれない彼女が生きているの時代背景がちょっと出せたらなと思います。ファッションや髪型、当時聴いていた音楽なども意識しながら演じられたら。

 

 本作は東京・名古屋・兵庫のツアー公演となる。キャスト3人は〝宝塚のお膝元である兵庫公演も含めて楽しみ”と、顔をほころばせた。

一路 ストーリーの3人の女性たちのようにこの3人で力を合わせて、楽しいものをお見せしたいと思います。あとこの3人でよかったねって言われるようにもしたいですよね。

紺野 7年ぶりの舞台で久しぶりだしすごく緊張してますけど、観てくださったお客さんに「ああ、面白かった!」って言って帰ってもらえるのが一番なので、一生懸命取り組みたいなと思います。

 まだまだ未熟な私としては、新しい壮一帆の色もお見せできたらいいなと。新しい作品に挑むときは常にそう思ってやってるんですけども、本当に芸には終わりがないと思うので…。先日、台本を口に出して読んでみたんですけど、声が低いし、女性らしいしゃべり方があまりはまらなかったんですよ。でも逆にそのほうが、自分の色が出るんじゃないかなって。今回の役どころは新しい挑戦になると思うので、一歩上を目指して前向きにとらえていきたいと思います。

 

インタビュー・文/古知屋ジュン
構成/月刊ローソンチケット編集部 9月15日号より転載

 

<ヘアメイク>
壮一帆、紺野まひる:小口あづさ(Nanan)
一路真輝:岩井 マミ(M)

<スタイリスト>
壮一帆:RyokoKishimoto(W)
一路真輝: 遠山 真紀(M)
紺野まひる:瀬川 結美子

壮一帆:グリーントップス、スタッズ付きパンツ/PINKO
問い合わせ先
PINKO JAPAN
TEL03-5778-9861
http://www.pinko.com/en-gb

紺野まひる:ワンピース グレースクラス/グレースコンチネンタル ショールーム
問い合わせ先
グレースコンチネンタル ショールーム
〒150-0034
渋谷区代官山町6-6フィオーレ代官山3階
03-5728-3633

 

【プロフィール】

板垣恭一
■イタガキ キョウイチ ’64年、東京都出身。第三舞台を経てフリーの演出家に。今後は10月に「瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々」、2017年1月に「フランケンシュタイン」と演出作品が控える。

壮一帆
■ソウ カズホ ’75年、兵庫県出身。’96年に宝塚歌劇団に入団。’12年に雪組トップスターに就任。’14年の退団後はコンサートやミュージカル作品を中心に活躍。

紺野まひる
■コンノ マヒル ’77年、大阪府出身。’96年に宝塚歌劇団に入団。’02年に雪組トップ娘役に就任し、同年退団。退団後は’03年の朝ドラ「てるてる家族」(NHK総合)など、映像作品でも活躍中。

一路真輝
■イチロ マキ ’65年、愛知県出身。’82年に宝塚歌劇団に入団。’93年に雪組トップスターに就任し、’96年に退団。9月には「ガラスの仮面」、2017年2月には「君は どこにいるの」に出演。

 

【公演情報】

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扉の向こう側

日程・会場:
2016/11/11(金)~13(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
2016/11/16(水)~23(水・祝) 東京芸術劇場 プレイハウス
2016/11/28(月) 名古屋市青少年文化センター アートピアホール

★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!