・インタビューしちゃいました!! 2017-10-25 09:49

舞台『黒蜥蜴』朝海ひかる インタビュー

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昔からある戯曲ですが、新しいもののような感覚を得ています

 

三島由紀夫が遺した作品の中でも最高傑作のひとつに数えられている『黒蜥蜴』。江戸川乱歩が生み出した長編探偵小説を三島ならではの感性で戯曲化し、これまで幾度となく上演されてきた。今回は、演出に世界的な活躍を続けているデヴィッド・ルヴォーを起用し、新たな世界を舞台上に映し出す。本作で家政婦・ひなを演じる朝海ひかるに、『黒蜥蜴』にかける思いを聞いた。

 

――今回の『黒蜥蜴』の出演が決まったとき、どのようなお気持ちでしたか?

朝海「もともと、三島由紀夫さんの『黒蜥蜴』にはとても興味を持っていまして、いつか出演したいと思っていた作品でした。また、デヴィッド・ルヴォーさんの演出も、演劇人であれば一度は受けてみたかったので、出演が決まったときにはまるで素敵なプレゼントをいただいたときのように、とても嬉しかったですね。三島由紀夫さんの作品は日本語の持つ美しさが流れるように表現されていて、とても素晴らしいんです。グロテスクなところもあれば、ビューティなところもある。人間の多面性をすごく表している戯曲だと思います」

 

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――すでに、ワークショップが行われたそうですが、どのような感じでしたか?

朝海「ルヴォーさんがとっても朗らかで優しい方なので、稽古場の雰囲気をとても和やかにして、役者の緊張をほぐしてくださるんです。そんな中で『黒蜥蜴』のいろいろな可能性を試した3日間でした。舞台セットなどはなく、あるのは人間だけ。2人きりの会話だとしても、その奥にあるものを見ているような感覚になりました。その心理や、脳で考えていること、そんなことを想像させてくれるんです。そのひと場面だけでもとても面白くて、本質も見えてくるし、その本質のさらに奥があるのではないだろうかと思わせてくれました。これが全編にわたって描かれたらどうなってしまうんだろうと、とても期待させられます」

 

――主演の中谷美紀さんの印象はいかがでしょうか

朝海「中谷さんはずっとテレビなどで拝見していたので、女性が憧れる女性という印象を持っていました。なので、普通にお話ししていいのだろうか?と、どこか手の届かないような気持ちでいたんです。本当にお美しい方なのでドキドキしていたのですが、とても気さくな方なんですよ。気負いしていた分、“そんなふうに喋ってもいいんですか!?”と(笑)。ほかのキャストの方にもよくお声がけされていましたし、人とのコミュニケーションをとても大切になさる方なんだなと思いました。中谷さんのおかげでみんなの絆が一気に深まったように思います」

 

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――今回の役どころは家政婦役とのことですが、どのように役をとらえていこうと考えていらっしゃいますか?

朝海「“老家政婦”という色々ある役なので、戯曲をご存じない方はぜひ楽しみにしていただきたいです。お台所がとても大好きというキャラクターを持っているので、そのあたりから自分の中で彼女を一から作っていきたいと思っています。私自身はお台所ではお茶を淹れるぐらいなんですけど(笑)。お台所のことはセリフにもありますし、戯曲がいろいろなヒントを出してくれているので、それを逃さないようにしたいと思います」

 

――役にアプローチするときにいつも心がけていらっしゃることはありますか?

朝海「今は本当に便利になって、スマートフォンなどですぐに調べることができるんですよね。作者のことについて調べてみたり、時代について調べてみたり。今回も三島由紀夫さんについて調べてみたんですけど、とてもエキセントリックな方なんですよね。ナルシストな部分も持ちながら人間臭さもあって。そういうところは『黒蜥蜴』のどこか、突っ込みどころ満載のコミカルなやりとりに出ている気がします。本当に幅の広い方だと思いました」

 

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――三島作品独特のセリフ回しがあると思いますが、そのあたりはどのように考えていらっしゃいますか?

朝海「まるでシェイクスピアのように一人語りが多いのですが、その長いセリフの中で徐々に印象が移り変わっていくんです。それはワークショップで中谷さんの長セリフを聞いていて、ゾワゾワっときました。そんな文体を作り上げているんです。昔から長くある戯曲ですが、まるで新しいものに出会ったかのような気持ちになりました。言葉の操り方がマジシャンのようですね」

 

――今回の作品の中で、目指しているところや乗り越えたいと考えていることは?

朝海「役として、いままで演じたことのないような役をいただいたので“この女優は、こんなこともできるんだ”と思ってもらえるように、新たな一面を皆さまにお見せできればと思っています。そして、ルヴォーさんの世界にどれだけ染まれるか。今までの自分を試したい気持ちもあります」

 

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――2017年はたくさんの作品を通して幅広い役どころを演じて来られて、女優として大きなステップアップになったのではないかと思います。2018年も1作目からかなり挑戦的な役になるのではないかという印象ですが。

朝海「製作発表で中谷さんもおっしゃっていましたけど、役を受けるときは本当に不安だらけなんです。まずは、その不安から入っていくんです。もちろん嬉しさもあるんですけど、不安のほうが大きくて。そして、何回も繰り返しながら、その不安を乗り越えていく。私自身としてはステップアップというような気持ちもないんです。公演を終えたときに“またひとつ、終えることができた”と思える。私たちにはその気持ちだけなんですよね。それを、お客様がどう感じてくださるか…常に不安と隣り合わせです。だからこそこれからもモチベーションを持ち続けられると思っています」

 

――最後に、公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします

朝海「この作品はこれまでたくさん上演されてきましたが、どれひとつとして同じ『黒蜥蜴』はありません。デヴィッド・ルヴォー演出の『黒蜥蜴』も今までにないものになることは間違いありません。出来れば、三島由紀夫先生にも観ていただきたかったと思いますし、美しい中谷美紀さんの『黒蜥蜴』を見逃していただきたくないので、ぜひ劇場にお越しいただければと思います」

 

インタビュー・文/宮崎新之

ヘアメイク/arie miyazawa (gem hair&makeup)

 

【プロフィール】

朝海ひかる

アサミ・ヒカル 1991年に宝塚歌劇団に入団。2002年に雪組トップスターに就任し、「ベルサイユのばら」オスカル役など数多くの作品で好評を博した。06年に退団後は、ミュージカル、ストレートプレイ、映像作品など女優として幅広い活躍を続けている。

 

【公演情報】

『黒蜥蜴』

原作:江戸川乱歩
脚本:三島由紀夫
演出:デヴィッド・ルヴォー
出演:
中谷美紀
井上芳雄
相楽 樹
朝海ひかる
たかお鷹
成河

 

一倉千夏、内堀律子、岡本温子、加藤貴彦、ケイン鈴木
鈴木陽丈、滝沢花野、長尾哲平、萩原 悠
松澤 匠、真瀬はるか、三永武明、宮 菜穂子
村井成仁、安福 毅、山田由梨、吉田悟郎
<ダンサー>小松詩乃、松尾 望 (50音順)

 

日程・会場:
2018/1/9(火)〜28(日) 日生劇場(東京都)
2018/2/1(木)〜5(月) 梅田芸術劇場メインホール(大阪府)