・インタビューしちゃいました!! 2015-09-15 00:00

舞台『弱虫ペダル』IRREGULAR ~2つの頂上~ 中山晴喜 インタビュー

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先入観のないセンスで新しい舞台を仕掛けるキーパーソン

 

 1997年にマーベラス(当時はマーベラスエンターテイメント)を設立した中山晴喜。音楽、映像、ゲームの3事業を柱に創業した同社だが、2000年のミュージカル『HUNTER×HUNTER』より、舞台製作も開始。2003年からスタートしたミュージカル『テニスの王子様』の大ヒットにより、同社が手がける、コミックやゲームを原作にした〝2.5次元舞台”は現在、日本の演劇界の大きな潮流のひとつとなっている。中山自身は、「このビジネスをするまで、演劇とはほとんど縁がなかった。(劇団)四季も宝塚(歌劇団)も観ていないし、観たことがあったのは(市川)猿之助のスーパー歌舞伎ぐらい」の演劇素人だったそう。だがその先入観のなさや、1コンテンツとしてクールに作品をとらえられることで、業界に新鮮な旋風を巻き起こしてきた。そして今では、「うちがやっているいろんなビジネスのなかでも、演劇がいちばんぐらいに好きですよ。できていく過程が面白いです」と、顔をほころばせる。

 

 そのマーベラス製作の舞台のなかで際立った人気を誇るのが、2012年にスタートした舞台『弱虫ペダル』。10月にはシリーズ7作目の「IRREGULAR~2つの頂上〜」が開幕する。同社製作の舞台にはエグゼクティブプロデューサーとして名を連ねる中山だが、役割は作品によって異なるという。「7月に上演した、舞台『東京喰種トーキョーグール』では演出家は僕が決めたし、キャストのオーディションに僕自身も参加しました。舞台『弱虫ペダル』の場合は、うちがなんらかの権利を持っていたわけではなく、制作担当の女性社員がコミックスを持ってきて、『すごく面白いからこれを舞台化したい』と言ってきたんです。僕は原作を知らなかったし、『自転車をどう表現するの?』『舞台として成立するの?』と、半信半疑でしたね(笑)。でも、あのアイデア(=自転車のハンドルだけを持ち、キャストがその場で足踏みしてマイムのように自転車レースシーンを表現)が出てきたときはさほど驚きませんでした。なぜなら(スポットライトと音でテニスの試合を表現した)テニミュ(=ミュージカル『テニスの王子様』)で経験していたし(笑)、『これをどう表現するの?』というものを、今までも結構やってきたので」

 

 そして、前売チケットが常に即完売するほどの超人気舞台に成長。キャストの体力を奪うハードな舞台ゆえに長期公演が望めないことも、人気に拍車をかけた。加えて、「正直、劇場をあまり大きくしたくないんです。キャストたちの汗が見えなくなるから」と中山。「舞台『弱虫ペダル』は、キャストみんなが汗だくで本気にならないと〝熱〞が伝わらない。実際、稽古と公演を通じて体つきも変わってくるんですよ。あの頑張り感やリアル感は、大きな劇場ではなかなか伝えにくい」

 

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 欠かしてはならないエッセンスを原作から抽出し、人気に溺れることなくそれを貫くことが、同社舞台が信頼され、人気を集める理由だろう。「ただ最近は舞台『弱虫ペダル』も原作を知らない人が結構観に来ている。そういう人にも『面白かった』と言ってもらえる舞台にしなければというのが、唯一心がけていることです」

 

 最新作は、総北の巻島裕介と箱根学園の東堂尽八に焦点を当て、原作の主人公・小野田坂道以外のキャラクターがメインとなるスピンオフ。また、これまでシリーズを引っ張ってきた村井良大に代わる二代目・小野田坂道として、小越勇輝の登板も発表された。舞台『弱虫ペダル』のみならず、中山が舞台を通じて発信していく仕掛けは、今後も観客に驚きと発見を与えてくれそうだ。

 

≪WEB版 こぼれ話≫

今の2.5次元舞台の人気の要因を探る意味でも興味深い話がたくさん聞けたが、ミュージカル『テニスの王子様』におけるキャストたちの“客席降り”や“お見送り”も中山氏の発案だったというのが個人的に驚きだった。エンディングでの“客席降り”は今やテニミュの定番であるし、キャストたちが衣裳やメイクのまま劇場出口付近で見送ってくれる“お見送り”は現在、ほかの舞台でも多く見られる観客サービスのひとつ。キャストと観客の距離を縮めるこうした試みはそのまま、映画などと比べて敷居が高いと思われていた演劇と若い観客との距離をも縮めたと言える。「うちはバリバリの演劇会社じゃないし、僕自身にも演劇のあらゆるものに先入観がない。ミュージカル『薄桜鬼』などで音楽ライブをやるのも、『曲が溜まったからライブやっちゃう?』っていう軽いノリから始まってます(笑)」と中山氏。この“先入観のなさ”は、これからも日本の演劇界の起爆剤となるだろう。以前「月刊ローソンチケット」でも取材させていただいたネルケプランニングの松田 誠社長とともに、目が離せないキーパーソンの一人だ。

 

インタビュー・文/武田吏都
Photo/山本友来
構成/月刊ローソンチケット編集部 9月15日号より転載

 

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【プロフィール】

中山晴喜
■ナカヤマ ハルキ バンダイ、セガを経て、’97年に株式会社マーベラスエンターテイメント(現在はマーベラス)設立。代表取締役会長兼社長CEO。演劇プロデューサーとしての代表作は、ミュージカル『テニスの王子様』、舞台『弱虫ペダル』、舞台『東京喰種トーキョーグール』など。「日本2.5次元ミュージカル協会」理事も務める。

 

【公演情報】

『弱虫ペダル』IRREGULAR~2つの頂上~
公演日程・会場:
《名古屋公演》2015/10/8[木]~10/12[月・祝] 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
《東京公演》2015/10/22[木]~10/25[日] TOKYO DOME CITY HALL
《大阪公演》2015/10/29[木]~11/3[火・祝] 梅田芸術劇場 メインホール
《福岡公演》2015/11/7[土]・11/8[日] キャナルシティ劇場
料金(税込):
一般指定席¥6,800 サイド指定席(東京・大阪・福岡)¥6,800 プレミアムチケット(パンフレット付き)¥9,800
※プレミアムチケットの取り扱いは先行のみとなります。

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