・インタビューしちゃいました!! 2017-08-04 11:50

シアターコクーン・オンレパートリー2017「24番地の桜の園」 松井玲奈 インタビュー

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舞台があれば、どんな場所にも行けるし
お客さんを連れていける。そこに可能性を感じました

ロシア劇作家、アントン・チェーホフの四大戯曲のひとつに数えられる「桜の園」。「24番地の桜の園」は、このチェーホフ最期の戯曲をベースに串田和美と木内宏昌が新たに脚色を加えて描く舞台となる。この意欲作に臨むのは、「古典作品に出演するのが1つの目標でした」と語る松井玲奈だ。映画、ドラマ、舞台と女優として着実に活躍を続けている彼女は、本作にどのように挑むのか。

――今回の出演が決まったとき、どんなお気持ちでしたか?
松井 去年くらいから「いつか古典の作品にも出演したい」と思うようになっていたのですが、「もうこのタイミングで…」と驚きました。もちろん「桜の園」をベースにした作品ということではあるんですが、チェーホフの作品に出演することができるんだ、と思ってうれしかったです。現代劇はやっぱり自分たちに近いから、演じる側も観る側もわかりやすいですよね。感情や、言っていることも。でも古典劇は、「なんだ、この難しい言葉は…」って本を読んだ時には思うんですけど、実際に舞台を観てみると、言葉がすんなり入ってきたりとか、感情が理解できたりとかするんですよね。それって、演じている方たちの力なんだろうなと思うので。憧れでした。

――原作はチェーホフの四大戯曲に数えられる作品です。お読みになられて、どんな印象ですか?
松井 読んだときにすごく感じたのは、人によって感想も変わってくる作品だということ。残される人がいて、失う人がいて、前を向く人がいて…そのどの人物に感情移入するかによって、悲劇にも、とてつもなく暗い話にも、次に向かっていく希望の作品にもなる。私は小林聡美さんが演じるラネーフスカヤ(桜の園を所有する地主)の娘アーニャを演じるんですが、作品の中では光として、存在できるようになれればと思いました。今、私の中で理解している部分がどうお客さんから見えるかは…きっと串田さんがしっかりと演出してくださると思います。

――演出の串田さんにとっても初のチェーホフ作品とのことで、どのような演出になるのか楽しみなところです。お会いになったそうですが、どんな方でした?
松井 すごくアンテナの高い方でした。お話ししていても、いろんな知識がどんどんと出てくるし、私自身の世界も広がっていくような感覚があって楽しかったです。今回の作品の中では、生演奏の中でお芝居をしていくようになっているんです。それで、劇中にジプシー音楽のような曲を取り入れたいというお話をされていたんですが、そのほかにもこの曲も良いんだよ、あの曲も良くて、とどんどん次から次に音楽をかけていっていらしたんです。そんなお姿を見て、これから稽古の中でもいろいろなことを教えてくださる気がして、楽しみになりました。

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――今回の作品には高橋克典さん、風間杜夫さん、八嶋智人さん、美波さん、小林聡美さんら豪華キャストが揃います。共演への意気込みはいかがですか?
松井 臆さず、ぶつかっていくことが一番大事かなと思っています。皆さん…その、変な言い方ですけど「テレビの中の人だ!」「スクリーンの中の人だ!!」という感じで。初めて共演させていただく方々ばかりなので、お名前を拝見したときには、まずそう思ってしまいました。高橋(克典)さんは大きい方なんだろうなぁとか、そういう頭の悪そうなことしか最初は浮かばなかったんですが(笑)。でもそこに自分が入るんだ、そんな大先輩方とお芝居できるんだと思うと、全力でぶつかっていって、吸収したことをちゃんと作品に昇華させていきたい。お芝居をやっていて面白いのは、実際に面と向き合ったときに湧き上がってくる感情が、自分が頭の中で思っていたのとは全然違うことがあること。今回も、その時に自分がどう感じるのかが楽しみなんです。小林聡美さんとは母娘の役なので、本当に母のように慕えたらいいな。たくさんコミュニケーションが取れたら、うれしいですね。

――今年はすでに3作の映画が公開され、ドラマや舞台への出演などさまざまなメディアでご活躍されていますが、舞台ならではの面白さはどのようなところにありますか?
松井 お芝居って面白いな、と思ったきっかけの舞台が、三谷幸喜さんの「オケピ!」なんです。私は映像で拝見したのですが、舞台の下にあるオーケストラピットの中で起こるすったもんだのお話しなんです。けど、それって裏側の話じゃないですか。舞台という表の場所で裏側をやるって面白い!って思ったんです。「ここがオーケストラピットです」と言ってしまえばそれが舞台の上だろうと、オーケストラピットなってしまう。舞台上だと、「ここが公園だ」といえば公園だし、「家だ」と言っちゃえば家になっちゃうんですよね。映像だと、実際にその場所に行ったりして撮影することになるんでしょうけど、私はそこに、すごく舞台の面白さを感じたんです。たった一つの舞台で、いろんな場所に行ける、お客さんもそれについてこれる。それこそが、舞台の面白さだと思います。

――今回の舞台で楽しみにしていることは?
松井 串田さんの演出がどんなものになるのかが、本当に楽しみ。まだそんなに多くの方に演出をつけていただいたわけではないのですが、皆さん演出の仕方が違うんです。その演出に従って、理解して演じていくと、いいものになっていく。最初はただ、がむしゃらに必死に追いつこうとするだけなので、その時には気づけないこともたくさんあるんですけど、振り返ってみたり、立ち止まったりしてみると、その違いに気づいたりするんです。ゴール地点が一緒だとしても、そこにたどり着くまでのプロセスが違うと感じることも違ったり、感情の幅が変わったりする。そういう演出の違いは、本当に面白いなと思います。

――――さまざまな演出やいろいろな挑戦をこれまでもしてきたと思いますが、今後、挑戦してみたい役どころなどはありますか?
松井 そうですね…殺陣はもっともっと上手くなりたいし、アクションもやりたい。なので、そういう作品にまたご縁があったらうれしいなと思います。殺陣がちゃんとできる役者になるのは目標の1つでもあります。

――今回の作品は、東京以外でも松本、大阪での公演も予定されています。作品とともにいろんな都市に行くことについてはどのように感じていらっしゃいますか?
松井 まだそんなに多く地方で公演させていただいたことはないんですが、私よりも観に来てくださる方が一番楽しみなんじゃないでしょうか? やっぱり東京だけの公演も多いですし、なかなか東京までは観に行けないということも多いと思うので。私自身、愛知県の豊橋で育って、名古屋にもそんなに劇場は多くなくて…大作のような作品しか公演が来なかったりしたんです。それに、子供のころは、親に「舞台が観たいから名古屋に連れて行って」とはなかなか言い出せなかった。だから、私は映像で観ていたんです。きっとそういう人がいる中で、いろんな都市に作品と一緒に行けることは、きっと新しい出会いを届けられるような感じがして、すごくうれしい気持ちがあります。若い方にも、ぜひ観ていただきたいですね。

 

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インタビュー・文/宮崎新之
ヘアメイク/白石久美子
スタイリング/船橋翔大(Dragon Fruit)

【プロフィール】
松井玲奈 マツイレナ

1991年7月27日生まれ、2008年にSKE48の1期生としてデビュー。2015年8月に同グループを卒業後、TVドラマ、映画、バラエティなどに多数出演。舞台は2016年のつかこうへい七回忌特別公演「新・幕末純情伝」で主演を務めるほか、2017年の鴻上尚史の「ベター・ハーフ」再演公演に出演。

【公演情報】
シアターコクーン・オンレパートリー2017「24番地の桜の園」

日程:2017年11月9日 (木) ~2017年11月28日 (火) 、地方公演あり
会場:Bunkamuraシアターコクーン
作:
アントン・チェーホフ 

翻訳・脚色:木内宏昌
演出・脚色・美術:串田和美

出演:
高橋克典、風間杜夫、八嶋智人、松井玲奈、美波、大堀こういち、池谷のぶえ、尾上寛之、北浦 愛、菅 裕輔、新田祐里子、大森博史、久世星佳、串田和美、小林聡美