・インタビューしちゃいました!! 2015-10-21 11:58

絶賛上演中!「ヴェローナの二紳士」 三浦涼介 インタビュー

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80歳を迎えた演劇界のレジェンド・蜷川幸雄が軽やかに放つシェイクスピア喜劇「ヴェローナの二紳士」(31日まで彩の国さいたま芸術劇場で上演中。地方公演あり)。オールメール(=キャストが全員男優で女性役も男優が演じる)で上演される本作で、“二紳士”の一人・個性的なプローティアスに扮する三浦涼介に話を聞いた。

 

――蜷川さん演出の舞台には3度目の出演。「ボクの四谷怪談」「わたしを離さないで」と、いずれも観客に強いインパクトを与えて、結果を残していらっしゃいますね。

三浦 「蜷川さんと出会ったのは3年くらい前です。『あゝ、荒野』という蜷川さん演出の舞台を見に行って、開演前に楽屋でちょっとご挨拶させていただきました。で、舞台を観終わって、『なんだ、この世界観!』とすごく感動してしまって。ぜひこの人と仕事をしてみたいけど、さっきお会いしたとき特に何もなかったから無理なんだろうなと思いながら、駅に向かって歩いていて。そしたらマネージャーさんから電話が掛かってきて、『もう1回会いたいと蜷川さんが言ってくれている』と。それで戻ったとき、蜷川さんが僕のところに来てくれて、『僕が死ぬ前に一回芝居しよう』って言ってくれたんです」

 

――強烈な口説き文句ですね!

三浦 「こんなこと言ってくれるなんて、とうれしかったですね。最初の『ボクの四谷怪談』のときは一番下っ端でしたけど、歌を1曲いただいたり、いいシーンに出させてもらいました。またいつかできたらいいなぁと思っていたら、翌年に『わたしを~』の話をいただいて。ただ、その頃は俳優として悩みにかられていた時期で、この作品が終わったらちょっと休業しようと考えていたんです。だからこそというか、芝居に対して初めて貪欲に、何がどうなっても自分のやりたいように真っ直ぐ前を向いてやろうと思えた作品でもあって。とにかく台本しか読んでなかったんですよ。寝なくても、ご飯が食べられなくても、ひたすら台本を読んでいた。そんなことって人生で初めてでした。追い込まれてもいたんですけど、あの作品に入り込めたことは、僕にとっては逆に楽だったかもしれないですね。だから乗り切れたときの感覚はものすごいもので、もっと感じたいな、もっとやりたいなって思えた。『わたしを~』の稽古に入る前、蜷川さんの笑顔をたくさん見るというのが個人的な目標だったんですけど、たくさん笑ってくれて僕も楽しかったし(笑)、この先も自分は芸能界というところに生きていていいのかなと思えた公演でした」

 

――まさにターニングポイント、ですね。

三浦 「かなり前向きに変わりました。11歳からこの仕事をしているんですけど、やっぱりちょっと、いわゆる“いい子”で生きてきたなと思っていて。だけど自分のやりたいことやこういうことを表現したいんだっていうのは自信を持って前に出していかないと誰も共感してくれないし、そうしないと僕の存在なんてすぐ忘れられてしまうと思う。だから仕事ができている今のうちにそうしていきたいし、楽しみたいと思いました。しんどかろうがなんだろうが自分が楽しいと思えることをやり続けていれば、数年後に万一この仕事を続けていなかったとしても何かにつながっていくのかなっていうのは、ここ最近思うことではあります」

 

――そして現在、『ヴェローナの二紳士』に出演中。三浦さんの比較的豊富な舞台キャリアの中でもシェイクスピア作品は初ですね。

三浦 「あの世界に入ったら僕きっと頭がおかしくなっちゃうなと思って(笑)シェイクスピアは避けていたんですけど、もろもろ考えて、早くやらないと後悔するんじゃないかと思っていた矢先、この作品のオファーをいただいたんです。数日考えさせてもらって、やっぱりやろうとお受けしました」

 

――オールメールでの上演ですが、三浦さんは意外にも(笑)女性役ではないんですよね。

三浦 「周りからかなり言われました。知り合いの役者に『お前の役、やりたかったんだよ』って完全に決め付けられて言われたことも(笑)。普段、蜷川さんが僕にやらせたいと言っているのはプローティアスとは対照的な弱くて繊細な感じの役なので、蜷川さん自身は僕には合ってないと感じてるんじゃないかと思うんですよ。そこでハードルが下がっている分(笑)、自由にやれるなって。僕の新たな部分を見せられればいいなと思うし、僕自身も新しい自分が見出せるんだろうなとワクワクしましたね」

 

――正直、ご自分でも女性役をやるんじゃないかと思いませんでした?

三浦 「うーん……魅力的だと思う役は、性別を問わずたくさんありますからね。ただ男が女を演じる美意識っていうのは、やはりすごいものだと思うんですよ。だからもしいつか僕が女性の役をいただいたとしたら、徹底的にやりたいなとは思っていますけど、今回はたまたま男性役でしたっていう(笑)」

 

――そしてこのプローティアスという役は、その行動からすると共感も得にくいでしょうし、なかなか難役に感じます。

三浦 「周りからはわりと『プレッシャーは?』とか聞かれるんですけど、僕自身はそんなこともなく、台本もわりとすんなり読めたというか。プライベートの僕がそういう人間なんだなって思うんですよね」

 

――大丈夫ですか? その発言は誤解が生じません?(笑)

三浦 「誤解なんてもうさんざん受けてるから大丈夫です、なんて(笑)。親友を裏切るとかいう部分ではなくて、シェイクスピアの熱い世界観が僕の私生活にとても似ているというか。ああでもないこうでもないと解決しないようなことを裏で一人でぶつくさ言っているより、僕は感情を表に出して肌でぶつかるということを私生活でやっているんですね。そうすると熱や愛は相手にちゃんと伝わるし。そういう世界観が、すごく自分に合っていると思いました」

 

――プローティアスをどんな人物だと感じていますか?

三浦 「イヤなヤツではないし、けして人を傷つけようとはしていない気がして。彼の生き方の一番にはやっぱり愛があって、でもその愛は自己愛であって相手のことを考えていない愛だったりするんだけど(笑)、そこがすごく人間っぽいんじゃないかって。きれいごとばかり並べず、「俺はこうなんだよ」と素直に真っ直ぐ進んでいる人間。そう考えると、他のキャラクターもやっぱりどこかちょっとヌケてるんですよね。だってそんなプローティアスにああいう結末を与えて、それに納得させられちゃうってどんな世界なんだよと(笑)。だけど、そこがやっぱり“イヤなヤツじゃない”ってことだと思います。どれだけイヤなことをされても離れられない、どうしても嫌いになれないっていう不思議な力を持った人間ってやっぱりいるから。失うものもあるだろうけど、そういう風にいられたらなんかこう人生を全うできるよねって……うん、そこには共感します。ましてや僕らはこういう仕事をしているから、ほんとはやってみたいけどできないってことを舞台上で表現できる立場にいるんですよね。この作品を通じて、今改めてすごく、そういうことを感じています」

 

取材・文/武田吏都

 

 

【公演情報】

彩の国シェイクスピア・シリーズ第31弾
『ヴェローナの二紳士』

日程・会場:
2015/10/12[月]~31[土] 埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2015/11/6[金]~9[月] 大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
2015/11/21[土]~23[月・祝] 福岡・キャナルシティ劇場

演出:蜷川幸雄
作:W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子

出演:
溝端淳平、三浦涼介、高橋光臣、月川悠貴
正名僕蔵、横田栄司、大石継太、岡田 正、河内大和
澤 魁士、野辺富三、谷中栄介、鈴木彰紀*
下原健嗣、田中浩介**、矢崎浩志**  ほか
*…さいたまネクスト・シアター
**…楽師

★詳しいチケット情報は下記「チケット情報はこちら」にて!